PROJECT新たな日常に噛みつく。Thermo Selfie | サーモセルフィーHYTEK Inc.PROJECT新たな日常に噛みつく。Thermo Selfie | サーモセルフィーHYTEK Inc.

検温を思い出に。
コロナ禍において開催されるイベント・展示会やレストランなど様々な場面で導入された自動検温機。検温と共に撮影を行い、写真をフォトカードとしてその場で印刷。正常体温を証明できる顔写真つき入場パスになると同時に、元気にその場を迎えられた思い出に。フェス、遊園地、美術館、スポーツ観戦など様々な場所での導入を目指しています。

左:プロデューサー 吉澤(2009年入社)
中央:アプリケーションエンジニア 猪塚(2019年入社)
右:テクニカルディレクター 星野(2017年入社)

PROLOGUE

新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの生活を大きく変えた。外出時のマスク、こまめな手洗いと消毒。そして、イベントや店舗入口での検温も新たな習慣となった。この検温を、エンタメとして楽しい体験に変える仕組みとして考えられたのが「Thermo Selfie(サーモセルフィー)」だ。形式的で受け身な作業を、ワクワクする体験へ。株式会社HYTEKが挑む常識への挑戦を、アイスタは開発パートナーとして共にチャレンジすることとなった。

左:プロデューサー 吉澤(2009年入社)
中央:アプリケーションエンジニア 猪塚(2019年入社)
右:テクニカルディレクター 星野(2017年入社)

新しいコンセプトを<br>形にする開発パートナーとして。新しいコンセプトを<br>形にする開発パートナーとして。

吉澤 :  コロナ禍において、店舗やイベント会場に入るときに検温をすることは、ごく当たり前のこととなりました。しかし、それは決して楽しいものではなく、この状況下で仕方なく行う形式的な作業。そんな検温を楽しい体験に変える仕組みが、サーモセルフィーです。検温とともに撮影を行い、写真をフォトカードとしてその場で印刷し、思い出としてカタチに残します。テクノロジーを活用して新たなエンタメコンテンツを創る株式会社HYTEKがこのコンセプトアイデアを発案し、一緒に形にするパートナーとしてアイスタに声をかけてくれました。
受注型プロジェクトではなく開発パートナーとして制作だけにとどまらず、作った後にどうやってビジネスとして広げていくかまで考えていくことになるので、新しい挑戦になると思ってワクワクしましたね。

星野 :  僕はこの話を最初に聞いたとき、絶対に面白いものになると思いました。というのも、僕はアイドルが好きで、フェスとかライブに通っていたんですよ。そこで買ったグッズや撮影したチェキなど、イベントに紐付いて残るものはすごく大切だということが実体験としてわかっていたので(笑)。検温したことがイベントに行った思い出として残るなら、絶対に使いたくなる。すぐにやろうと思いました。

吉澤 :  実は、新型コロナウイルスの感染が広まり始めたころから、検温を使ったコンテンツは誰かが作るんじゃないかな、と思っていました。でも、意外に1年経ってもどこもやっていない。
HYTEKさんから最初に話を聞いたあとで、もしかしたら自分が知らないだけでどこかがやっているかもしれないと改めて調べてみました。検温の記録証を出す仕組みはありましたが、そこにエンタメの文脈をプラスした仕組みはなかった。「自分たちで最初に作れるかもしれない!」と、前のめりになりましたね。

猪塚 :  私はわりと冷静に「技術的にできるかどうか」を最初に考えました。すでにアイスタには、スポーツスキルを計測して、そのレベルに応じたカードをその場で印刷する、という仕組みがありました。検温は未知の領域でしたが、基本的な仕組みがあるから応用すればできそうだな、と。今から思うと最初から強気でしたね(笑)。

フォトカードのデザインはイベントによってカスタマイズが可能

画面の案内にしたがって検温と共に撮影するとその場でフォトカードがプリントされる

早く世に出す。<br>誰でもどこでも使える。早く世に出す。<br>誰でもどこでも使える。

吉澤 :  今回のプロジェクトは受注型ではないので、明確な仕様と締め切りがあるわけではありません。しかし、他に同じようなことを考えている人がいるかも知れないので、「プロトタイプを早く世に出すこと」が重要でした。また、店舗やイベント会場で広く使ってもらえるようにするためには、「誰でも簡単に運用できること」「どこでも使えること」も考えて開発する必要がありました。

星野 :  まずは検温器の選定を行ったのですが、コロナ禍で急に需要が伸びたことで急いで作られたものが多いようで、他のシステムと連携できることが想定されていないんですよ。なので、システムとして組み込めるものを見つけるのが大変でした。また、プリンターも改めて検討し直しました。

猪塚 :  誰でも簡単に運用できることと開発スピードの観点から、メインの機材にはカメラやタッチ操作など必要なものがコンパクトにまとまっているiPadを選定。iPadアプリとして開発しました。これまでにも撮影体験のあるアプリ開発はいくつか経験したことがあったので、今までの知見を活かすことができました。

星野 :  僕は猪塚と同じく、アプリなどを開発するチームに今は所属していますが、以前はサーバー構築などを担当するバックエンドチームだったんです。アイスタといえばWebなどのインターネットコンテンツを制作するイメージがあると思いますが、今回は「どこでも使える」ように、インターネットに接続する必要なく、完全オフラインで動作する仕組みにしています。サーバーをローカルで立てて、iPadとプリンタと検温器をつなげて完結できるように、データのやり取りを考える必要があったのですが、ここでバックエンドで培った経験が活きました。

猪塚 :  今回はUIなどデザイン面も、シンプルにわかりやすく伝えるためにはどうしたら良いのか?とかなり考えましたね。何よりも、「早く世に出す」ことが重要だったので、開発しやすいUI/UXデザイン、ということも大事にしながらデザイナーに相談しました。

吉澤 :  そういう意味では、サーモセルフィーの制作の流れは、通常のプロジェクトと違いましたね。普通は、出来上がりのイメージが先にあって、それを実現するために開発をすることが多いです。それが今回は、まず開発視点での機能設計からスタートしたプロジェクトでした。開発側からUIやUXのディレクションをしながら、作り上げていきました。

入口での検温で<br>ワクワク感が高まる未来に向けて。入口での検温で<br>ワクワク感が高まる未来に向けて。

吉澤 :  プロトタイプが完成し、最初にお披露目したのはアイスタが入居しているビルの1Fにある「有楽町 micro FOOD & IDEA MARKET」です。実験的な取り組みをしているエリアで、新しいモノや感性が高い人が集まるショップの入口に、サーモセルフィーを置かせてもらうことになりました。

最初のプロトタイプをお披露目した「有楽町 micro FOOD & IDEA MARKET」の風景

星野 :  実際に体験してもらうと、想像以上のうれしい反応でしたね。カードには自分の名前を書くエリアがあるのですが、こちらが言わなくても名前を書いて思い出として残してくれたり、子どもがはしゃいで何回も繰り返したり、こんなにも喜んでもらえるんだ!と感激しました。
検温して写真を撮って印刷するというシンプルな体験だからこそ、カードの質感にはこだわったのですが、体験した人が受け取った瞬間に「思っていた以上に良いものが手に入った」という驚いた表情、喜んでいる表情を直接見ることができたのも、本当にうれしかったですね。

撮影したフォトカードにペイントしている様子

吉澤 :  いろいろなシーンで使ってもらうことで、具体的な課題も見えました。ショップでトークイベントを開催した際も入口にサーモセルフィ―を置いたのですが、30人程度のイベントでも人が集中すると時間的に捌くことができませんでした。そこで、1回あたりの時間を短縮するためにチュートリアルなどを省いた“イベントモード”と、ショップの入口などに常設で置くことを想定した“通常モード”を選べるようにアップデートしました。

猪塚 :  サーモセルフィーをまず設置場所まで運ばなければならないことが最初のハードルだとわかり、持ち運びしやすく、現地で設営しやすいように細かい梱包や外装を改善していきました。現地のスタッフがどう使って、どこで迷うかもわかったので、マニュアルもアップデートすることができました。

吉澤 :  まずは、最初に目標にしていた「早く世に出す」ことは達成できました。また、体験した人の反応から「検温をエンタメ化する」「思い出をカタチに残す」ことに価値があることも改めて確認できたので、今後は広めていくフェーズに入っていきます。
コロナ禍が落ち着いてくれば、フェスやイベントが増えていきます。その時期に何とか間に合った安堵感はありますが、まだ完成形ではありませんし、使われるごとに新たな課題が出てくるはずなので、アップデートし続けていくことも必要です。
日本全国のあちこちで、サーモセルフィーで検温してカードを受け取り、イベントや店舗へのワクワク感がさらに高まっていく。そんな未来のために今後も頑張っていきたいです。

最初のプロトタイプをお披露目した「有楽町 micro FOOD & IDEA MARKET」の風景

撮影したフォトカードにペイントしている様子

デジタルクリエイティブの会社として<br>チャレンジし続けることが、宿命。デジタルクリエイティブの会社として<br>チャレンジし続けることが、宿命。

星野 :  アイスタのプロジェクトは本当に幅が広く、多彩なバリエーションの課題が来ますよね(笑)。毎回新しい領域、新しい発見があるので、飽きずに仕事ができる。

猪塚 :  今回のプロジェクトで身に付けた検温器の知見は、他に活かすことがあるのだろうか?とは思うけど(笑)。ただ、あちこちで検温されるたびに、「この検温器のメーカーは××だな」とかわかるので、外出の楽しみが増えました。

吉澤 :  アイスタはデジタルクリエイティブの会社です。デジタルテクノロジーは、今後も進化し続けるので、常にアンテナを張る必要があります。また、現代社会はすさまじい勢いで環境が変化していきます。今回のコロナ禍も、あっという間に生活が変わりました。変わりゆく社会に求められているものを作っていく必要もあります。
そんな環境だからこそ、アイスタは常に新しいものにチャレンジしていかなくてはなりません。大変ではありますが、視野が広がり、引き出しが増えていく醍醐味があります。

※2022年3月時点での情報です。