PROJECT広告のカタチに噛み付く。ぽすくま ガチャ年賀日本郵便株式会社PROJECT広告のカタチに噛み付く。ぽすくま ガチャ年賀日本郵便株式会社

「ぽすくま ガチャ年賀」は、ぽすくまをLINEで友達追加してガチャボタンをタップすると、人気スタンプクリエイターとコラボした動画年賀状がランダムで登場するデジタルコンテンツ。手に入れた動画年賀状はLINE上で手軽に友達に送ることもできる。さらに気に入ったものは実際の年賀状として購入することができ、デジタルとリアルの両方で楽しめる仕掛けとなっている。

左: インタラクティブディレクター 池田(2009年入社)
右: ディレクター 館(2016年入社)

PROLOGUE

新年の挨拶状として古くから日本で親しまれている「年賀状」。例年、年賀状シーズンにはTVCMをはじめとしたマス広告から販促を狙ったキャンペーン企画まで、大小さまざまな施策が展開される。そんななか愛らしいキャラクターやクスッと笑えるメッセージが話題となり、SNSを大きく賑わせたのが「ぽすくま ガチャ年賀」だ。
LINEを活用したコミュニケーションによって年賀状の新たな体験をつくり、年賀状文化から遠い存在となりつつある若者層のアクティベートに成功した本施策。生活者が触れて楽しむことができる、そんないまの時代の「広告のカタチ」を見つめる二人にコンテンツに込めた想いを聞いた—。

左: インタラクティブディレクター 池田(2009年入社)
右: ディレクター 館(2016年入社)

前例を超える「体験」をつくれ。前例を超える「体験」をつくれ。

館 :  日本郵便さんの公式LINEアカウントである「ぽすくま」は、LINEトーク上で荷物の追跡・集荷や再配達の受付といったサービスを提供していて、約1,200万人(2020年3月現在)のユーザーを抱えています。このLINEアカウントを活用して若年層向けに年賀状利用を促進できないか、というのが得意先からの課題でした。

池田 :  もともとLINEアカウントを活用した施策として「森の年賀状屋さん」という企画が2015年から継続して実施されていました。これはLINEのトーク画面上でユーザーが画像を送信すると、ぽすくまが画像を加工・デザイン化して年賀状に仕上げて瞬時に送り返してくれるというもの。コンテンツとしての完成度が高く根強いファンから人気を集めていたのですが、サービス開始から5年が経ち新規ユーザーがなかなか獲得できなくなっている状況にありました。

館 :  そこでアイスタから提案型で持ち込んだ企画が「ガチャ年賀」だったんです。これまで同様「森の年賀状」を部分的にリニューアルして継続するのではなく、企画自体を一新するアイデアを提案しました。

池田 :  検討の可能性としては前年までと同じことをやろうという判断もあったと思います。でも、せっかく提案できる機会がもらえるのであれば何か違うカタチを実現したいという想いで企画を練りました。

人気キャラクターの年賀一覧

送り方の説明

企画者は“全員”。企画者は“全員”。

池田 :  「ガチャ年賀」は、日本郵便さんへの初回提案のときから、戦略からアウトプットイメージまで全体像を固めた状態で提案しました。ただ、そこに至るまでには社内で何度もアイデアを話し合い、時間をかけて企画を練り上げました。

年賀状のイラスト

館 :  最初はこのプロジェクトに関わるアイスタメンバー全員でアイデアの持ち寄りをやりました。職種も年次も関係なくフラットにみんなで意見を出し合ったんです。それこそプラナーやデザイナーだけでなくアカウント職、エンジニア職のメンバーも参加していたので、かなり大人数でした(笑)

池田 :  最終的には1つの企画に収束させることにはなるのですが、どれだけ広くアイデアを広げられたかが最後に残す1つを強くすると思っていて。実際、みんなで出し合ったアイデアのなかには今まで見たことがない年賀状のカタチみたいなものも結構ありました。枠をつくらずにアイデアを広げたことで固定概念から出て自由な発想で企画をつくることができたと思います。

池田 :  あと、初回提案のときに大切にしたことは「この施策のゴールをどこに置くか?」ということです。「今回は“年賀状の販売”ではなく“年賀状に触れる体験”を重視しましょう」という話を日本郵便さんにさせていただきました。ゴールイメージが共通認識になっていたから戦略からアウトプットまで線でつなぐように制作を進めることができたと思います。

年賀状のイラスト

アクティベートするのは、生活者の“気持ち”だ。アクティベートするのは、生活者の“気持ち”だ。

館 :  初回提案以降は、日本郵便さんに進捗を共有しながら具体的な制作を進めていきました。そのなかで特に大変だったのはLINEスタンプクリエイターさんとの交渉です。最初は、社内メンバーでどんなキャラクターがターゲットに刺さるかアイデアを出し合いました。そうして、若者に人気のあるキャラクターや、懐かしいと感じてもらえるキャラクターなどをリストアップして、候補となったスタンプクリエイターさんに私からコンタクトを取っていったんです。
SNSのダイレクトメッセージだったり、WEBサイトの問い合わせフォームだったり、さまざまな手段で連絡をとって一人ひとりと交渉していきました。もちろん交渉にあたっては秘密保持契約を締結するなど情報セキュリティにも気を配りながらの進行だったので、かなり工数の多い作業でした。

池田 :  企画に賛同してくれたスタンプクリエイターさんには、直接お会いして、詳しいクリエイティブのオリエンを行いました。ここではアートディレクターにも参加してもらいビジュアルや動きの演出についてイメージを共有していきました。

館 :  動画年賀状の制作にあたっては事前にコピーを決めておいて、コピーにあったイラストを依頼する、という流れで進行しました。例えば「『お年玉ちょーだい』というコピーだったらこのキャラクターが言うと面白いよね」といった感じで、キャラクターとコピーの組み合わせを事前にアイスタメンバーで話し合ってからオリエンに臨みました。

池田 :  スタンプクリエイターさんには自由に描いてもらうほうが面白いものが生まれるだろうと考えて、ビジュアルについてはあえてディレクションしすぎないようにしました。遊べる余地を残すという感じですね。なので、ここでの僕の役割は動画年賀状が似た内容ばかりに偏っていないかなど、全体のバランスを注視することでした。

さわれる、体験できる。デジタルならではの広告を。さわれる、体験できる。デジタルならではの広告を。

館 :  ガチャを回したときの演出にも仕掛けがあります。ガチャを回すと同時に「親友に送るなら」とか「社長に送るなら」といったメッセージがランダム表示されるように演出を複数パターン制作したんです。興味本位で「試しにやってみよう」くらいの人も多いだろうと考えて、そういった方でも動画年賀状を送る相手を想起しやすいようにと考えて工夫しました。

池田 :  演出と動画年賀状の組み合わせの妙で面白さを感じてもらえたら、ということも狙っていました。実際に「社長に送るなら」とともに「今年のやる気ばいばいしちゃった」というスタンプがセットで出たことをTwitterで話題にしてくれた人もいました(笑)。
ツッコミを入れてくれたり、なかには動画年賀状を全種類コンプリートしてくれる人もいたりと、SNS上で多くの人がガチャ年賀を楽しんでくれている様子が垣間見えました。僕たちが仕掛けとして狙っていたことが実現して、反響が聞こえてきた瞬間はやはり嬉しかったですね。僕たちが「面白いはず!」と狙ったものがちゃんと生活者に届いたんだなって。

館 :  企画が盛り上がったことで協力してくれたスタンプクリエイターさんたちも喜んでくれたことが嬉しかったですね。電話で会話したときに「すごいですね!」と言ってくれて、交渉では大変なことも多かったですがその言葉で報われた気持ちでした。

池田 :  生活者がさわって体験できる広告、これはデジタル制作領域を専門とするアイスタだからこそ生み出せるアウトプットだと思います。他の会社でも“考えること”はできるのかもしれませんが、企画戦略からデザイン、実装までをトータルでプロデュースできる実行力は他にはない強みではないでしょうか。
映像やポスターといった従来のアプローチとは違う、「体験」を軸にしたコンテンツで得意先の課題に挑んでいけるのが面白さを感じるポイントですし、僕たちの武器なのだと思います。

※2020年3月時点での情報です。