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ブランド管理の次世代戦略:デザインシステムを「戦略的インフラ」に変える

デジマ担当
2026-03-30
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複数のブランドやデジタルチャネルを運営する企業において、ブランド品質の維持と運用の効率化の両立は重要な経営課題です。制作物が増え続け、情報が各部署に散在する現状では、ブランド表現にばらつきが生じ、余計なコミュニケーションコストも発生しています。こうした一貫性の欠如は顧客体験の質を下げ、ブランド価値を損なう要因となります。

本コラムでは、ブランド管理の次世代戦略として、なぜ今デザインシステムが必要なのか、その理由を解説します。単なる制作ツールに留めるのではなく、ブランド資産を有効活用し、企業の基盤を支える「戦略的インフラ」として運用し、組織の力に変えていくための仕組みやメリットを解説します。

従来のブランド管理が抱える課題

静的なマニュアル管理の限界

これまで多くの企業では、ロゴの使用規定や配色などをまとめた「ブランドガイドライン」をPDFやPowerPointの形式で作成し、共有フォルダなどで配布してきました。しかし、情報更新のサイクルが速いデジタル運用において、こうした形式での管理には限界がきています。

【現場でよく聞く悩み】
「最新のガイドラインがどれか分からず、古いPDFを参照してしまった」「ルール変更が周知されておらず、納品間際にすべて差し替えになった」といった声は絶えません。静的なファイルによる管理では、更新のたびに全関係者へ周知し、古いファイルを使わないよう徹底させる「管理のための管理」に多大な労力が割かれています。

解釈の個人差による品質のばらつき

言葉や図解のマニュアルだけでは、個々の解釈を一致させるのは困難です。特に「余白感」などは経験に左右されやすく、意図しない微差の積み重なりがブランドの統一感を損ない、顧客体験を分断させる要因となります。

例えば、キャンペーンページを制作する際、マニュアルに「ブランドカラーを効果的に使う」と書かれていても、デザイナーによって色の使い方は異なります。ボタンの角丸や影の付け方など、細かな実装がWebサイトごとに異なると、ユーザーはブランドに対してまとまりのなさを感じ取ります。

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デザインシステムによる一元管理と効率化の仕組み

そもそも「デザインシステム」とは何か

単なるルールブックやガイドラインではありません。ロゴや配色といったブランドの要素ボタンや入力フォームなどのパーツ、そしてそれらを正しく再現するための実装コードをひとつに統合した仕組みを指します。これは、質を保ちながら効率よく組み立てるための「共通プラットフォーム」を構築するものです。
あらかじめブランドの意図が組み込まれた「完成済みのパーツ」を組み合わせて制作を行うため、誰が担当してもブランドの個性を損なうことなく、高品質なアウトプットを最小限の工数で形にすることが可能になります。

無駄なやり取りをなくし情報の「正解」をひとつにする

デザインシステムを、プロジェクトに関わる全員が参照する唯一のデータベースとして機能させることで、管理体制は整理されます。

従来の運用では、最新のロゴデータや配色ルールが、広報・マーケティング・制作チームあるいは外部パートナーの間で、バラバラに保持されていることが珍しくありませんでした。その結果、どれが最新版かを確認するだけの非生産的なコミュニケーションが日常的に発生していました。

情報を一元管理する基盤があれば、データの正確さがシステムによって保証されるため、こうした無駄な確認作業は不要になります。また、閲覧や編集など権限設定を適切に行うことで、未承認の素材が誤って世に出るリスクを防ぎ、セキュリティーとブランドガバナンスを同時に高めることが可能になります。それが、デザインシステムです。

パーツの共通化で、専門知識がなくても品質を保つ

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デザインシステムの利点は、再利用可能なパーツ(コンポーネント:ボタンや入力フォームなどの部品)が、見た目のデータから実装用のコードに至るまで一貫して定義されている点にあります。これにより、高度なデザインスキルやプログラミング知識を持たないメンバーであっても、一定水準以上の品質で成果物を形にできるようになります。

通常、Webサイトのパーツひとつを作るにも、デザインのトーン&マナーの理解に加え、コーディングのスキルが求められます。しかし、ブランド規定に則って設計・実装済みのコンポーネント群が用意されていれば、デザイナーやエンジニアではなくても、それらを組み合わせるだけでブランドの一貫性を損なうことなく、高品質な制作や更新が可能になります。

これは単に誰でも作れるという便宜上のメリットだけではありません。制作の専門部署を介さずとも、現場のディレクターやマーケティング担当者が自ら正しいパーツで作られたコンポーネントを用いてスピーディーに施策を実行できるようになります。個人のセンスやスキルの習熟度に依存せず、すべてのルールが制御されているため、組織全体でブランドの品質が均一に保たれるようになります。

制作工程の短縮によるコストの削減

デザインシステムをインフラとして整える大きな利点は、制作工程とコストの削減にあります。

従来の制作フローでは、デザインが完成し最終チェック段階で「規定に合っていない」という不備が見つかり、大幅なやり直しが発生するケースが多々ありました。しかし、あらかじめ承認済みのパーツを登録したデザインシステムがあれば、それを使って画面を構成するだけで、最初からブランドとして正しいアウトプットになります。 

また、スピーディーに組み立てたプロトタイプを共有することで、関係者との合意形成もスムーズになり、後工程での大規模な仕様変更を防ぐこともできます。こうした、手戻りが発生しない仕組みを構築することこそが、制作コストを抑制し、プロジェクトのスピードを加速させるのです。

以上の通り、デザインシステムは制作効率化の枠を超え、ガバナンスと経営の機動力を両立させる「戦略的インフラ」です。情報を一元化し、品質基準を仕組み化することで、不要なコストやリスクを排除したブランド戦略が実現します。

デザインシステムについては以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照いただくことでより全体像をご理解いただけます。
参考記事:デザインシステムとは?基礎から学ぶ重要性と導入のポイント

確実なガバナンスとしてのウェブアクセシビリティ対応

仕組みで解決するアクセシビリティ

2024年4月の法改正により、民間企業にもウェブアクセシビリティへの合理的配慮が求められています。しかし、Webサイト公開後に不備を修正しようとすると、根本的な設計変更が必要になるケースも多く、多大なコストを要します。この問題を、制作段階から仕組みで解決することが重要です。

デザインシステムによる品質の維持

あらかじめ目的の基準を組み込んでおくことで、制作工程を大幅に短縮できます。例えば、新たなコンテンツの制作や修正をする際に、蓄積されたナレッジ共有やウェブアクセシビリティを熟知した専門家のチェックなど必要なく、一貫した品質管理が可能になります。

ウェブアクセシビリティへの具体的な対応方法の一部をご紹介します。

  • 視認性の事前定義(カラーコントラスト)
    ブランドカラーと背景色の組み合わせについて、あらかじめWCAG 2.2(Web Content Accessibility Guidelines)などの国際基準を満たすセットを検証し、デザインシステム上で「推奨される組み合わせ」として定義します。これにより、専門家でなくても、基準をクリアした配色を選択できるようになります。

  • コンポーネント単位の品質設計(実装の標準化)
    ボタンのサイズ、フォームのラベル設定、フォーカス時の視覚効果など、操作性に直結するUI部品を、コンポーネントの段階で、ウェブアクセシビリティに準じた設計にしておきます。

  • 音声読み上げへの対応
    スクリーンリーダー(音声読み上げソフト)が正しく情報を伝えられる記述を、あらかじめコードに反映させておくことで、専門知識がなくとも均一な品質を保つことが可能になります。

このようにデザインシステムを活用すれば、専門知識を持たない担当者でも、用意されたコンポーネントを使用するだけで、質の高い状態を保てるようになります。これは、人為的なミスを抑え、ブランドのガバナンスを守るための、とても効率的な管理方法と言えます。

組織全体でブランド資産を共有するメリット

部門間の壁(サイロ化)を解消し、重複投資を削減する

複数の事業部や子会社を持つ組織では、ブランドデータが組織ごとに個別に管理されている「サイロ化」が課題となっています。誰がどの素材を保有しているか、あるいはどのようなデザインルールで運用しているかが不透明なため、似たようなイラストや写真素材を各部署が別の予算で外部発注してしまったり、同じようなパーツを一から開発したりといった無駄な作業やコストが発生します。

デザインシステムを中心とした管理基盤で情報を集約すれば、組織全体で既存資産の利用が促進され、余計なコストを抑制できるだけでなく、グループ全体のデザイン品質を均一化し、ブランドとしての発信力を強固にすることが可能になります。

変化に強く、機動力のある組織体制の構築

デジタルチャネルの多様化と情報の消費スピードの加速により、企業にはかつてないほどの迅速な対応が求められています。新しいサービスの立ち上げや、社会情勢に合わせた急な広報活動が必要になった際、属人的な管理体制では最新のロゴ探しや、ルールの再確認だけで数日を費やしてしまうことも少なくありません。

一元管理されたブランド資産というインフラが整っていれば、必要な素材やレイアウトを即座に引き出し、一貫性を保ったままスピーディーに展開できます。本来の業務であるメッセージの構築や戦略立案に注力できる体制こそが、変化の激しい現代市場における企業の優位性となります。組織全体の足並みを揃え、スピーディーな対応でブランドを運用できる基盤を整えることが、長期的な成長を目指す上でとても重要なのです。

参考記事:デザインシステムを資産として「グロース」させる。使い捨てにしない仕組みづくり

デザインシステムは「戦略的インフラ投資」である

1. 運用の効率化を、企業成長の基盤へ

デザインシステムや管理ツールの導入は、単に「現場の作業を楽にするもの」と捉えられがちですが、その本質は企業のブランド活動を支える土台作りにあります。一貫したブランド体験を顧客に提供し続けることは、信頼の蓄積であり、ブランド価値の向上に直結します。一方で、非効率な管理によるコストの浪費は、企業の成長を妨げる要因となります。

2. ブランドの価値を維持し続けるために

デザインシステムを軸とした管理体制を構築することは、組織の壁を越えてブランドの価値を正しく伝え続けるための標準的な経営判断といえるでしょう。デザインシステムは単なるブランド管理ツールではなく、ブランドを生きた資産へと変えていく、企業の未来を支える「戦略的インフラ投資」なのです。

3. 戦略的インフラとしてのブランド管理

デザインシステムは制作効率化の枠を超え、ガバナンスと経営の機動力を両立させる基盤です。情報を一元化し品質基準を仕組み化することで、不要なコストやリスクを排除した、次世代のブランド戦略が実現可能となります。

ブランド資産の価値を最大化するソリューション

情報の分散を防ぎ、常に最新の状態でブランドを管理するための具体的な解決策として、私たちはブランド管理プラットフォーム「BRAND DECK」を提供しています。「BRAND DECK」は、本コラムで解説した一元管理や品質維持、ウェブアクセシビリティへの配慮を、専門的な知識がなくても運用できるよう設計されています。ブランドを企業の確かな資産として育てていくために、私たちは最適な環境作りをサポートいたします。

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よくある質問

Q1. ウェブアクセシビリティへの対応を最初から組み込むのは、手間ではありませんか?
A1. 最初の設定には慎重な配慮が必要ですが、公開後に不備が見つかり、一から修正する手間に比べれば、トータルの負担は少なくなります。最初に使い勝手の良い部品=コンポーネントを定義してしまえば、それ以降の制作では自動的に品質が保たれるため、結果的に運用の安定とコスト削減につながります。

Q2. 導入することで、管理部門の仕事は増えますか?
A2. 導入時の整理には一定の時間がかかりますが、運用開始後は現場からの「最新データはどこにあるか」「使い方は正しいか」といった問い合わせが大幅に減ります。管理者が個別の承認や確認作業に追われることがなくなるため、ブランド戦略の立案など、より付加価値の高い業務に注力できるようになります。

Q3. 色やフォントなどのブランド要素が変更になった場合、修正の手間はどうなりますか?
A3.
デザインシステムでは、色や余白などの定義値を「デザイントークン」という形式で管理できるので、これを組み入れておけば、1カ所修正するだけで連携しているデザインやコードがすべてアップデートされます。手作業による修正漏れや、ブランド表記のばらつきを物理的に防ぐことができます。この保守性と効率性の高さこそが、デジタルインフラとしての大きな強みです。

執筆者
デジマ担当
主に自社のWebサイト運用が業務。SEO対策、コンテンツマーケティング、SNSやWeb広告配信、メール配信、アクセス解析ツールを用いた効果測定と改善提案、リード獲得から育成までの施策設計など、デジタルチャネルを活用したインハウスマーケティング業務全般を行う担当者。
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