カスタマージャーニーにおいてタッチポイント強化が必要な理由
購買プロセスのデジタル化にともない、多くの企業がマーケティング戦略のひとつに「タッチポイントの強化」をあげています。ここでは、なぜカスタマージャーニーにおいてタッチポイントを強化すべきなのか、その理由を2つ紹介します。
1.購買行動の多様化・複雑化への対応
現代のマーケティング環境は、情報量が爆発的に増え、購買に至るプロセスが非常に複雑化しています。
BtoCにおいては、CMを見てお店で買う、というような単純な道のりはもはや少数派ですし、BtoBにおいても、購買プロセスは変わってきています。
「顧客の信頼を育むナーチャリング戦略」でも言及しましたが、顧客は購入プロセスの大半を営業担当者に会う前に完了しています。
現在はインターネットを通じて誰もが詳細な情報にアクセスできるようになったため、以前は購買に必要な情報が欲しい場合、営業担当者とコンタクトをとる必要がありましたが、今では自ら情報収集を進め、比較検討を終えたうえで初めて営業と接触するケースが一般的になっています。
つまり、営業が顧客と接触する頃には、すでに顧客は複数の情報源を通じて候補を絞り込んでいるケースが多く、従来のように営業が最初から購買プロセスを主導することは難しくなっています。そのため、カスタマージャーニー上の各タッチポイントを適切に設計し、常に最適化しながら顧客に有益な情報を届け、信頼を積み重ねていくことが欠かせないのです。
2.顧客満足度の向上
企業の安定した売上アップのためには、購入前・購入後における顧客体験を改善し、顧客満足度を向上させ続けなければなりません。そのためにはカスタマージャーニー全体を見るのではなく、各タッチポイントでフィードバックを収集・分析し、顧客体験に与える影響を理解することが重要です。タッチポイントに焦点をあてて改善領域を特定し、解決策を講じれば、カスタマージャーニーやマーケティング活動全体の強化につながります。
カスタマージャーニーのタッチポイントを強化する方法
タッチポイント強化にはいくつかコツや注意点があります。ここでは、具体的にタッチポイントを強化する方法を4つ解説します。まだ自社のタッチポイントを定義できていない方は、この章のステップに沿ってペルソナ設定からはじめてみてください。
タッチポイント検討前に、必ずペルソナを設定する
ペルソナとは自社サービス・商品を利用する典型的な生活者像のことで、カスタマージャーニーにとっては主人公となる存在です。タッチポイントやカスタマージャーニーは「顧客視点」で考えるため、精度を高めるためにも、まずはペルソナの考え方や行動を詳細に検討してから、作成に取り組むことが重要です。このとき、ペルソナ設定では生活者の行動パターンや思考をより鮮明にイメージできるよう、実在するかのようなリアルな人物像を作り出すことが理想的です。ペルソナをもとに、カスタマージャーニーマップを作成
設定したペルソナを活用して、顧客の意思決定プロセスを時系列順に可視化し、カスタマージャーニーマップを作成します。ペルソナの目線で情報を整理し、タッチポイントの洗い出しや顧客理解を深めます。このとき、タッチポイントは自社サービスに関わるものに限定せず、さまざまな可能性を考えることが大切です。より効果的なカスタマージャーニーマップを作成するには、マーケティング担当者だけでなく、顧客との接点が多い営業部やカスタマーサポートなどと連携しながら作成してください。カスタマージャーニーに基づいたアクションプランを実行
カスタマージャーニーが作成できたら、次は明らかになったインサイト(顧客の本音)に基づいて、企業側の行動プランを作成・実行します。タッチポイントごとに提供すべき顧客体験を設計し、戦略的にマーケティング施策を展開していきます。業務効率化ツールを導入する
有効なタッチポイントの探り出しや改善には時間も人的コストもかかるため、継続的なマーケティング活動のためにも業務効率化が欠かせません。もしタッチポイントの最適化に困ったら、CRM(顧客管理システム)やチャットボットなどの効率化ツールの導入もおすすめです。自社の課題やボトルネックによって解決策は異なるため、求めるポイントや機能の見極めが必要です。
タッチポイントを活かしたカスタマージャーニーの戦略的活用法
カスタマージャーニーマップが完成したら、それで終わりではありません。ここがマーケティングを進化させるスタートラインです。
1. 課題の発見と施策の最適化
完成したマップを俯瞰して見てみましょう。すると、これまで見えていなかった様々な課題が浮かび上がってきます。
「認知フェーズのタッチポイントが広告頼みで、コンテンツでのアプローチが弱いな…」
「比較検討フェーズのお客様は価格を気にしているのに、価格の透明性を示すコンテンツがない」
「導入後のフォローアップの接点が少なく、お客様を不安にさせているかもしれない」
これらの課題に対して、「では、このタッチポイントで、こんな情報を提供しよう」「このフェーズのお客様には、こんなアプローチが響くはずだ」と、具体的な改善策を立てることができます。一つひとつの顧客接点が、顧客の感情や思考に寄り添ったものへと磨かれていくのです。
2. 部門間の共通言語として活用する
カスタマージャーニーマップは、マーケティング部門だけのツールではありません。営業、カスタマーサクセス、開発など、顧客に関わる全部門にとっての「共通言語」となり得ます。
マーケティング部門: どのタッチポイントでリード(見込み客)を獲得し、どんな情報を提供すれば営業にスムーズに引き渡せるか?
営業部門: お客様がどんな情報に触れて商談に来ているのかを理解し、より的確な提案ができる。
カスタマーサクセス部門: 導入後のお客様がどんな点でつまずきやすいかを予測し、先回りしたサポートを提供できる。
このように、マップを共有することで部門間の連携がスムーズになり、会社全体として一貫性のある顧客体験を提供できるようになります。
3. 継続的なアップデートで精度を高める
市場環境や顧客のニーズは常に変化します。一度作ったマップが永遠に通用するわけではありません。Webサイトのアクセス解析データ、顧客アンケート、営業担当者が現場で聞いた生の声などを元に、定期的にマップを見直し、アップデートしていくことが成功の鍵です。
このPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を回し続けることで、カスタマージャーニーマップは、机上の空論ではない、生きた「宝の地図」へと進化していきます。
カスタマージャーニーにおける「タッチポイント」とは
タッチポイント(顧客接点)とは、マーケティング用語で顧客が企業と接するさまざまな機会のことです。カスタマージャーニーの途中、顧客は広告や店頭、WebサイトのコラムやSNSの口コミなど幅広いシチュエーションでブランドと接触します。企業にとって、このタッチポイントは認知拡大やブランディングだけでなく、顧客ニーズの把握やデータ収集のチャンスです。最終的な顧客体験向上に欠かせないため、この「タッチポイント強化」を課題とし、重要施策として取り組む企業が増加しています。
デジタル技術の進化と社会環境の変化により、消費者の購買行動はかつてないほど多様化・複雑化しています。特にスマートフォンやSNSの普及、ECサイトの進化により、タッチポイントはオンラインとオフラインが融合したオムニチャネル型へと進化しました。このような市場変化に対応するために、まずはオンラインとオフラインの両方の視点から、考えられる限りのタッチポイントをリストアップしましょう。
BtoBのタッチポイントの具体例
オフライン | オンライン |
---|---|
展示会や実店舗への訪問 | SNSやWebサイトのブログ記事の閲覧 |
スタッフの接客 | 購入のお礼などのメール |
営業訪問や商談 | キャンペーン広告 |
インタビュー参加 | オウンドメディア、ブランドサイト、ECサイトへのアクセス |
商品カタログや屋外広告、CM、チラシを目にする | 自社製品への評価やレビュー、口コミを見る |
新聞や雑誌などへのメディア掲載 | インフルエンサーによる販促 |
カスタマーサポートやコールセンターへの問い合わせ | メルマガやプレスリリース |
上記はあくまでも一例です。タッチポイントは無数にあることを覚えておきましょう。
また、チームでブレインストーミングを行うと、自分一人では思いつかなかった視点やアイデアが生まれるのでおすすめです。
カスタマージャーニー作成時は、自社の顧客の行動をもとに、どのようなタッチポイントが存在しするのかを洗い出すことが重要になります。
タッチポイントとチャネルの違い
タッチポイントとよく混同される言葉にチャネルがあります。チャネルは、展示会、Webサイト、コラム、営業訪問、SNSなど、顧客と接点を持つための手段そのものを指し、顧客へのコミュニケーション戦略まで含めて考えるタッチポイントとは意味が異なります。例えば、自社製品の認知拡大のために「SNS広告に出稿を決める」ことはチャネルの選定です。その一方、SNS広告で「ターゲットが昼休みにみるよう12時に配信する」「顧客に合わせてDXやAIなど訴求力のある単語を入れる」など、アプローチ方法まで設計するのがタッチポイントの目的です。
まとめ:顧客に寄り添うマーケティングで顧客体験向上へ
今回は、BtoBマーケティングにおけるタッチポイントの重要性を解説しました。
複雑に見える顧客の購買プロセスも、ジャーニーという「旅」の物語として捉え、一つひとつのタッチポイントを丁寧に見直すことで、必ず攻略の糸口が見えてきます。
大切なのは、企業目線で「売りたい」という気持ちを一旦横に置き、顧客の視点に立って「どんな情報を、どのタイミングで届けられたら嬉しいか?」を徹底的に考えることです。
この機会に、オンライン、オフラインでタッチポイントを使い分けながら、顧客体験向上につながる施策を実施してみてください。
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