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新卒に贈る言葉と長い言い訳

笹垣 洋介(インタラクティブディレクター)
2025-05-13
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オフィスの隅に新卒数人が集まって、こっちをチラチラ見ながら
オイお前行ってこいよ。いやいやお前が先にいけよ。はぁ?なんでだよ。(ヒソヒソ)
みたいなことをやっている。

やっているのが全部こっちに見えている。
きつい。

弊社、新卒たちが社内を練り歩き、
名刺交換をしながら先輩社員にインタビューしていくという研修をやっていて。
そりゃ面識のほとんどない社員に声をかけるのに勇気がいるのはわかる。
ただもう全然仕事が手につかないから早く来てくれ。
こっちはもう肩あったまってんの。
さっきトイレで想定問答投げ込んできたから。

あとこの構図、遠巻きにすごい悪口言われてるみたいに感じるからやめて欲しい。
おじさんの肥大化した自意識なめるなよ。
すぐ疑心暗鬼になっちゃうんだから。
遠くから見られてるだけで嫌われた!って思っちゃうんだから。
俺だから耐えられてるけど、並のおじさんだったらしゃがみ込んでるぞ。

で、ようやくやってきた新卒たちから次々と質問されるんだけど
概ね共通して「新卒に求めることはなにか?」というものだった。
なるほどなるほど。OKOK。

ここはまあ、先輩としてかっこいいところを見せなくてはな。
あったまりきった肩をブンブン振り回して
ここ一番の先輩風を吹かすんだ。
おい!なにしてる掴まれ!!
飛ばされるぞ!俺の先輩風に!!

そんな勢いもあって、もう全員に違うことを言ってやろうと思い、
即興で答えていったものを覚えている限りメモしておきます。
ご査収ください。

失敗しよう

これはまあよく言われるやつなんだけど、ずっと大事なのでやはり言うことになる。最近は失敗慣れしていない人が多くて、ひとつの失敗を過度に恐れたり、過剰に忌避する傾向があるんだけど。新卒なんでやることなすこと全部初めてなんだから失敗するに決まってる。失敗が許されるボーナスタイムだと思ってチャレンジしまくって欲しい。
失敗しないのは簡単で、チャレンジしなければいいんだけど、それだと成長できず、3年後に大きな差がついてしまったりする。
いい失敗をたくさんしよう。

空気を変えよう

実は新卒入社社員が会議にいるだけで、場の空気が変わったりする。先輩たちにとってはいつもの慣れた仕事でも、新卒が入ることで改めてその意味を説明する必要が生じて意義を見つめ直すことになる。ダラダラした空気は解消され、自然とシャキッとする。自覚はないかもしれないけど君たちにはその力があるので、自信を持って会議に参加して、どんどん質問して欲しい。
オフィスの空気を変えるのは、輝ける君たちだ。

風向きを変えよう

チームにあなたがいると仕事の風向きが変わるよね。と言われる存在になって欲しい。これは仕事を始めてしばらくたってからの目標になると思うけど。そういう存在を目指すべき。
いま、会社が持っていない新しい何かをもたらす存在が君たち新卒だから。
停滞した空気をぶち破り、新しい風をふかそう。

最初に発言しよう

とりあえず、最初に発言してみよう。会議で誰かが喋り始めるのを待つのではなく、席についたら速攻喋る。先手必勝。それにより高い確率でその場を掌握することができる。
職場でのポジションは自分で作っていくもの。いつも自分が口火を切るつもりでいるべきだ。自分にとって有利な条件は自分の発言でしか生まれない。誰かが勝手に君の思いを尊重してくれるなんてことはまずない。
手綱を握れ。

挨拶しよう

いやべつに礼儀とか上下関係だとかを言うつもりはないけど、社会人にとって挨拶はひとつの戦略資源になる。特に専門職にはシャイな人が多く、挨拶は控えめだからチャンスだ。
挨拶することで相手のコンディションがわかったり、反応次第で仕事の空気を先んじて察知できるようになる。そして現場での自分の存在感が勝手に上がってくれるので、やって損はない。最小の資源投入でそれなりにレバレッジが効く割のいい投資だ。相手より先にでかい声で挨拶しよう。一種の威嚇だと思ってもいい。そのほうが何かと優位に事が進む。

若者専門家になろう

学生気分などと揶揄されることもあるけど、学生としての感覚は君たちの武器のひとつだ。大人たちはそれを失ってしまっている。しかし我々のお客さんには若い人も含まれる。
君達が素直に感じたこと、違和感などにはちゃんと価値がある。社内でその感覚を誰よりも持っている若者専門家として、自信を持って提案しよう。
そうして先輩たちを越えていけ。

 

 

 

そんなようなことで。新卒たちは何らかメモを取り、次の名刺交換へと散っていった。
結構瞬発力だけで喋ってしまったけど、その分だいたい普段思っていることが出せた思う。

これ、一部業界特有の話もあるけども、おおむね新社会人全般に対して当てはまるんじゃないかと思うので、
新卒諸氏は先輩が思っているかもしれない感覚としてご参考になさってください。
まあこんなうるせえおじさんの自己満足記事なんて、そんな、見たくもないかもしれませんが。
もし、万が一、たまたま目に入ったときに、何かの足しになればと。

あ!ちょっと!だから遠巻きに見るのやめて!怖い!
新卒に嫌われるの怖い!助けて!
ただ先輩というだけで無条件に尊敬されたいだけなのに!!



あのね、おじさんっていうのは、若者から嫌われると灰になって消えてしまう、儚い存在なんだよ。
みんなの願いが、おじさんをかろうじて現世にとどめているんだよ。
わすれないで、おじさんのこと・・・。(まばゆい光の塵となりながら)

執筆者
笹垣 洋介(インタラクティブディレクター)
インタラクティブディレクター/ アートディレクターとしてEC サイト、ファーストフード、自動車メーカーなど多くのクライアントのキャンペーンやブランディングなどに携わり、Web、イベント、映像などデジタル施策全般を幅広く担当、企画制作を行う。宣伝会議「販促コンペ」一次・二次審査員、執行役員。

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