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【実践】ブランドエクイティピラミッドの作り方|4階層の埋め方を解説

デジマ担当
2026-03-04
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私たちの会社は主にWebサイト制作を請け負うことが多いのですが、実際のプロジェクトでは、Webサイトのリニューアルに着手するもっと手前の段階からプロジェクトに参加し、クライアントの皆さまと一緒にブランドエクイティピラミッドを作成するケースがあります。ワークショップから参加し、ホワイトボードを付箋で埋め尽くしながら議論を重ねることで、初めて「ブレないWeb戦略」が見えてくることもあります。

本記事では実務で使いこなすための具体的な作り方を、4つの階層を埋めるための「問い」で解説します。
ぜひ社内での議論にお役立てください。

ブランドエクイティピラミッドを作成する目的と準備

具体的な作成に入る前に、なぜ作るのか(目的)と、必要な準備を確認しましょう。
ここが曖昧だと、ただ空欄を埋めるだけの作業になってしまい、現場で使える戦略になりません。

そもそもブランドエクイティピラミッドとは、顧客の心の中でブランドへの愛着や信頼がどう育っていくのかを、4つの階層(認知・意味づけ・反応・共鳴)で可視化したフレームワークです。単なる認知から出発し、最終的に「なくてはならない存在(ファン)」へと顧客との関係性を深めていく道筋を示してくれます。

ブランドエクイティピラミッドの基本的な概念や、なぜ定着ユーザー(ファン)の育成に重要なのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。まず理論を整理したい方は、こちらをご覧ください。

参考記事:定着ユーザー育成に役立つ「ブランドエクイティピラミッド」とは?

作成する目的:チームの「共通言語」を作る

ブランドエクイティの構築は、マーケティング部門だけでなく、営業、カスタマーサクセス、製品開発など、全社で取り組むべき課題です。
ピラミッドを作成することで、以下のメリットが得られます。

  • 認識の統一: 「ウチのブランドの強みって何?」という問いに対し、全員が同じ答えを持てるようになる。

  • 施策の一貫性: 広告メッセージから営業トーク、サポート対応まで、一貫したブランド体験を提供できる。

  • 資産の可視化: 現在のブランドの状態(As-Is)と、目指すべき姿(To-Be)のギャップが明確になる。

参考記事:顧客に選ばれる理由を言語化する 「バリュープロポジション」の作り方

必要な準備:3つのCを整理する

ピラミッドを作成する際は、事前に以下の情報を整理しておきましょう。顧客の課題、競合の弱点、自社の強みの3点です。これらを事前に言語化しておくことで、客観的な事実に基づいた、納得感のあるロジックを組み立てることが可能になります。

  • Customer(顧客): ターゲットとなるペルソナは誰か?彼らはどんな課題(インサイト)を持っているか?

  • Competitor(競合): 競合他社はどのような価値を訴求しているか?

  • Company(自社): 自社が提供できる機能的価値、情緒的価値は何か?

参考記事:3C分析とは?「KSF(重要成功要因)」の特定から、失敗しない分析プロセスを解説

【実践】4ステップで完成!ブランドエクイティピラミッドの作り方

準備が整ったところで、いよいよ具体的な構築プロセスに入ります。
ブランドエクイティピラミッドの構築は、顧客との信頼関係を深めていくプロセスそのものです。

初対面の人と関係を築くのと同じように、まずは名前を覚えてもらう認知から始まり、その人柄や能力を正しく理解してもらい、最終的に心が通じ合うパートナーとしての共鳴へと、段階を追ってステップアップしていく必要があります。途中の階層が抜けていると、いくら素晴らしいブランドメッセージを発信しても、顧客の心には定着しません。

ここからは、4つの階層それぞれについて、チームで議論すべき具体的な問いを用意しました。

いきなり完璧な答えを出そうとする必要はありません。まずは付箋やホワイトボードを用意し、問いに対する答えをブレインストーミング形式で自由に書き出すことから始めてみてください。
※イメージしやすいよう、架空のBtoBサービス(クラウド労務管理ツール)で解説します。

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Step 1. 認知(Salience / Identity)

「あなたは誰ですか?(存在確認)」

ピラミッドの土台となるこの階層は、単に名前を知られているという知名度の話ではありません。
重要なのは、顧客が特定のニーズや課題を感じた瞬間に、あなたのブランドが真っ先に思い浮かぶかどうか(第一想起)です。
例えば、喉が渇いた、と思った瞬間に特定の飲料ブランドが浮かぶように、顧客の購買シーンとブランドが強力にリンクしている状態(ブランド・セイリエンス=突出性)を目指します。

書き出す要素(具体例):

・カテゴリーの特定:顧客はあなたのブランドをどのジャンルに分類しているか?
 (例:単なる会計ソフトか、それとも経営のパートナーか?)
利用シーン:どんなときに思い出してほしいか?
 (例:トラブルが起きた時、新しい挑戦をする時)
競合セット:顧客の頭の中で、比較対象として並べられるブランドはどこか?
深掘りするための問い:
 顧客が「〇〇に困った」と思った瞬間、一番最初に私たちの名前が出てくるか?
 もし出てこないとしたら、顧客の頭の中のどの引き出し(カテゴリー)に入ってしまっているか?
 競合他社ではなく、あえて私たちを思い出すきっかけ(トリガー)は何か?

サンプル事例:クラウド労務管理ツール会社

コンセプト:
「人事業務を、クリエイティブに」煩雑な労務管理を自動化し、人事担当者が本来の人に向き合う仕事に集中できるよう支援する
問いに対する答え:
月末の勤怠締めに追われて絶望した時、真っ先に思い出す、青いロゴの救世主
カテゴリー認識:
単なる勤怠管理ツールではなく、人事の働き方改革ツールとして認知される

Step 2. 意味づけ(Performance & Imagery / Meaning)

「あなたは何ですか?(機能とイメージ)」

認知の次は、中身の理解です。ここでは機能的価値(左脳)と情緒的価値(右脳)の両面から、ブランドの輪郭をはっきりさせます。単にスペックを並べるのではなく、競合他社との違い(差別化ポイント)と、競合と同水準である点(同質化ポイント)を整理することが重要です。

■左脳:パフォーマンス(機能)
製品やサービスの品質、機能、価格など、実利的な要素です。

書き出す要素(具体例):

・基本性能: スペック、耐久性、スピード、精度
・付帯サービス: アフターサポート、配送、設置、アップグレードの容易さ
・価格の妥当性: コストパフォーマンス、価格に見合う価値があるか
・深掘りするための問い:
 競合にはない、私たちだけの独自の強み(キラー機能)は何か?
 顧客が私たちのサービスを使って便利だ、助かったと実感する具体的な瞬間はいつか?
 安さ以外の理由で選ばれるとしたら、それは機能のどの部分か?

◆右脳:イメージ(情緒)
ブランドの個性や、使用する人のイメージなど、無形の要素です。

書き出す要素(具体例):

・ユーザー像: どんな人が使っているブランドか?(例:革新的なリーダー、堅実な実務家)
・ブランドパーソナリティ: ブランドを擬人化した場合の性格。(例:誠実、情熱的、親しみやすい)
・歴史と伝統: 創業のストーリー、過去の実績が生む信頼感。
・深掘りするための問い:
 もしこのブランドが人間だとしたら、どんな性格で、どんな服を着ているか?
 顧客はこのブランドを使っている自分を、周りにどう見せたいと思っているか?
 (例:センスが良いと思われたい、プロフェッショナルだと思われたい)

サンプル事例:クラウド労務管理ツール会社

左脳(機能):

ワンクリックで給与計算まで連動する自動化機能。法改正への即日対応。他社ツールとのAPI連携の豊富さ。
右脳(情緒):
孤独な人事担当者に寄り添うパートナー。先進的なテック企業でありながら、温かみのあるUIとサポート。

Step 3. 反応(Judgments & Feelings / Response)

「顧客は、あなたについてどう思いますか?(評価と感情)」

Step 2で提示した価値に対して、顧客がどのような判定を下し、どのような感情を抱くかを定義するフェーズです。これは企業側からの一方的な発信ではなく、顧客の内面で起きる心理的な変化を予測するプロセスと言えます。顧客が頭で考える理性的判断(Judgments)と、心で感じる感情的反応(Feelings)の両方を満たすことで、ブランドへの信頼は確固たるものになります。

■理性的判断(Judgments)
品質、信頼性、優位性に対する顧客の評価です。

書き出す要素(具体例):

・品質への評価: 最高品質だ、プロ仕様だ、という認識。
・信頼性: 絶対に失敗しない、約束を守る、という安心感。
・配慮: 顧客のことを第一に考えてくれている、という実感。
・優位性: 他よりも明らかに優れている、という比較評価。
・深掘りするための問い:
 顧客が私たちをプロフェッショナルだと認めてくれる具体的な根拠は何か?
 他社と比較検討されたとき、最終的に私たちを選んだ決め手(判断基準)は何だったか?
 顧客が抱いている不安や懸念を、私たちはどう解消できているか?

◆感情的反応(Feelings)
ブランドに触れたときに湧き上がる感情です。

書き出す要素(具体例):

・即時的な感情: ワクワク感、楽しさ、ほっとする安らぎ
・持続的な感情: 社会的承認(使っている自分はカッコいい)、自尊心(自分に自信が持てる)
・深掘りするための問い:
 顧客は私たちのサービスを使っているとき、どんな気分になってほしいか?
 (例:面倒な作業から解放されてスッキリする、新しい挑戦への勇気が湧く)
 顧客との接点で、心が温まるような体験を提供できているか?

サンプル事例:クラウド労務管理ツール会社

理性的判断:
導入後、残業時間が30%減った(実利)。ISO認証を取得しておりセキュリティーも安心(信頼)
感情的反応:
ミスへの恐怖から解放された安らぎ。経営層に対して正確なデータを提示できるようになった自信と誇り

Step 4. 共鳴(Resonance / Relationships)

「あなたと顧客は、どんな関係ですか?(理想的な絆)」

ピラミッドの頂点であり、ブランド構築の最終ゴールです。
ここでは、顧客が単なる利用者(リピーター)を超えて、ブランドと互いに共鳴し合うファンやパートナーになることを目指します。
この段階に達した顧客は、価格競争に左右されず使い続けてくれるだけでなく、自発的に友人に勧めたり、SNSで好意的な発信をしてくれたりと、ブランドの応援団(アンバサダー)になってくれます。

書き出す要素(具体例):

・行動的ロイヤルティ: リピート購入頻度、購入金額、継続期間。
・態度的ロイヤルティ: ブランドへの愛着、大好きだという気持ち。
・コミュニティ意識: ユーザー同士のつながり、ファンミーティングへの参加。
・積極的な関与: SNSでのシェア、友人への推奨、フィードバックの提供。
・深掘りするための問い:
 多少高くてもあなたから買いたい、と言ってくれる理由は何か?
 思わず友人に勧めたくなる、語りたくなるポイントはどこか?
 私たちは顧客に対して、商品を提供する以外にどのような特別な体験や居場所を提供できているか?

サンプル事例:クラウド労務管理ツール会社

これなしでは困る理由:

単なる効率化ツールではなく、自社の組織風土を良くしてくれる不可欠なインフラになっているから
一体となれる活動:
ユーザーコミュニティに参加し、他社の人事担当者とノウハウを共有し合うこと自体がステータスになっている
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失敗しないためのポイントとBtoBでの活用

よくある失敗:企業の「言いたいこと」だけで埋めてしまう

ピラミッド作成時に多い失敗は、顧客視点が抜け落ち、企業側の視点に偏りすぎてしまうことです。顧客がその価値をどう受け取るか、客観的な視点から問い直すプロセスが重要になります。

博報堂DYグループでは「生活者発想」という考え方を掲げています。企業側の視点だけでなく、顧客自身もまだ気づいていない潜在的なニーズや本音に深く向き合うことです。提供者側の論理が先行しすぎた設計は、顧客の納得感を得られず、結果として期待した成果に結びつきにくくなります。

BtoBにおける活用:複数のステークホルダーを意識する

BtoB(企業間取引)の場合、関わる人物ごとに評価軸が異なるため、多角的な視点での要件定義が求められます。具体的には、操作性や効率化を求める利用者、安全性や連携を重視する管理担当者、そしてROI(投資対効果)を判断する決裁者といったステークスホルダーが存在します。

外部パートナーへ提示する計画書やRFPには、これらの異なる視点を統合した導入の目的を明文化しましょう。関係者全員の合意を形成する共通言語を持つことが、プロジェクトを成功へ導く鍵となります。

参考記事:【RFP完全ガイド】 RFPの具体的な記載項目と質の高い提案を引き出すコツ

社内ワークショップでの進め方

ブランドエクイティピラミッドは、マーケティング担当者が一人で作るものではありません。関係者を巻き込んだワークショップ形式で作成することをお勧めします。

【ワークショップの手順】

  1. メンバー選定: マーケティング、営業、開発、CSなど、異なる視点を持つメンバーを集める。

  2. 付箋でアイデア出し: 模造紙やオンラインホワイトボードにピラミッドの枠を描き、各階層の「問い」に対する答えを付箋に書き出す。

  3. グルーピングと選定: 似た意見をまとめ、本当に重要な要素に絞り込む(要素が多すぎるとメッセージがボヤけます)。

  4. 現状と理想の比較: 「今できていること(As-Is)」と「これから目指すこと(To-Be)」を色分けして整理する。

まとめ:定期的なアップデートでブランドを進化させる

完成したブランドエクイティピラミッドは、一度作れば終わりという静的なものではありません。現時点での「ブランドの設計図」であると同時に、日々の施策がブレていないか、チーム全員が同じ方向を向けているかを確認するための判断軸でもあります。

市場環境の変化や競合の動き、そして自社の成長に合わせて、このピラミッドも進化させていく必要があります。半年に一度など定期的にチームで見直しを行い、常に顧客の心に響くブランドであり続けるための指針として活用してください。

まずは、今回ご紹介した手順に沿って、自社のピラミッドのドラフトを作成してみることから始めましょう。埋まらない箇所があれば、そこが現在のブランドの「伸びしろ」であり、次のマーケティング施策のヒントになるはずです。

よくある質問

Q1. ブランドエクイティとは何ですか?

A1. ブランドが持つ資産価値のことです。製品やサービスそのものの価値に、ブランド名が持つ知名度や信頼性、顧客の愛着などが加わることで生まれる付加的な価値を指します。ブランドエクイティが高まると、競合より高い価格設定でも選ばれやすくなる、広告費を抑えても指名買いされるといった、強力な競争優位性を生み出します。

Q2. 作成にはどのくらいの時間がかかりますか?

A2. メンバーの人数や議論の深さにもよりますが、事前の準備(3C分析など)ができていれば、ワークショップ自体は2〜3時間程度でドラフトを作成できます。ただし、そこから言葉を磨き上げ、最終的な合意形成に至るまでには数回のミーティングが必要になる場合が多いです。

Q3. ワークショップは何人くらいで行うのが適切ですか?

A3. 議論を活性化させつつ発散しすぎないためには、4〜6人程度が最適です。マーケティング、営業、製品開発、カスタマーサクセスなど、顧客接点の異なる部門からメンバーを集めることで、多角的な視点を取り入れられます。

Q4. BtoB商材でも「感情的価値」は重要ですか?

A4. 非常に重要です。BtoBでも最終的に選ぶのは「人」だからです。「機能や価格は同じだが、担当者の対応が良く安心できる」「この会社と付き合えば業界の最新情報が得られる」といった感情的な信頼感(フィーリング)が、長期的な契約継続の決め手になります。

編集者
デジマ担当
主に自社のWebサイト運用が業務。SEO対策、コンテンツマーケティング、SNSやWeb広告配信、メール配信、アクセス解析ツールを用いた効果測定と改善提案、リード獲得から育成までの施策設計など、デジタルチャネルを活用したインハウスマーケティング業務全般を行う担当者。