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「Webサイトを作って終わり」じゃない。アイスタが目指した伴走型のDX推進

生田 大介(執行役員)
2025-07-27
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博報堂アイ・スタジオ(以下、アイスタ)で執行役員を務める生田です。

当社とNAGASEグループ様とのパートナーシップは5年以上にもわたり、長期間さまざまなプロジェクトで連携させていただいております。

長瀬産業様のデジタルマーケティングを推進しているマーケティング推進室のキーパーソンである、室統括 成瀬雅則さんと姫井佐恵さん(現 ナガセヴィータ株式会社 デジタル戦略・業務変革推進リーダー)を交えて、プロジェクトを振り返る最初のテーマは「DX推進」。

最近よく耳にするDX(デジタルトランスフォーメンション)というキーワード。

DXとは単にITツールを導入するのではなく、「業務の効率化」「新しいサービスやビジネスモデルの創出」「組織や働き方の改革」など、企業全体における根本的な変化を伴うことがポイントとしてあげられます。

Web制作のイメージが強い博報堂アイ・スタジオですが、実は今最もパフォーマンスを発揮しているのが「伴走型のDX推進」です。

今回は、長瀬産業様の事例を通して、アイスタのDX推進についてご紹介します。

DX推進のためにセキュリティやルールを整備

(写真:成瀬雅則さん)

生田:まずはじめに成瀬さんと姫井さんが所属する「マーケティング推進室」は、どのようなミッションを持つ部署でしょうか?

成瀬雅則さん(以下、成瀬):2020年にできた組織で、マーケティングやWebを利用したソリューションブランディングをミッションとしています。その中でも大きな役割のひとつがDXの一部であるデジタルマーケティングを推進することです。長瀬産業という企業が50年後、100年後も存続するためには、DXは避けて通れない道だと感覚ではわかっていました。

しかし、多くの企業がDXという課題に直面した時、どこを目指して何をしたら良いのか、具体的にはいったい何から手を付けたら良いのか戸惑っていると思いますが、NAGASEにとってのDXも手探りでした。まずはデジタルマーケティングからやってみようということで、「マーケティング推進室」という組織を作って取り組むことになりました。

姫井佐恵さん(以下、姫井):やってみたら、デジタルマーケティングを進めるためには足りないものが多いことがわかりました。NAGASEグループには70以上のWebサイトがありますが、統一したブランディングがまったくできていませんでした。

そもそもグループ内でブランディングという概念が浸透していない。グループ全体でWebサイトに関するルールも統一されておらず、正しい方向に動かせる人材もいない。マーケティングするためのデータもない。やればやるほど、足りないものが出てきました(笑)。

成瀬:デジタルマーケティングでDXを進めようとする中、整えなければならないことが進むにつれて分かってきました。その中には既存サイトのセキュリティの話があり、そこでアイスタさんの助けを借りることになったわけです。まずは早急な対応が必要だったセキュリティの課題を、アイスタさんに整えてもらった安全な環境に移すことで解決しました。

姫井:さらに日本主導で、デジタルマーケティングをするためにデジタルマーケティングの運用設計を日本へ移しました。

生田:移管の際にその時点での環境を確認しましたが、どのようなデジタルマーケティングにも対応できそうな環境が整っていて驚いた記憶があります。

成瀬:そうなんです、デジタルマーケティングの思想はあるし、それに合わせたシステムも準備され、いよいよ活用に向けて動き出すタイミングにきておりました。

姫井:デジタルマーケティングを進めるために、社内への啓蒙活動も頑張りましたね。「Webサイトでは製品を紹介していれば十分」「Webサイトは一度作ったら数年はお金をかけずに使える」と、ポスターや看板と同じように考えている人も多く、Webサイトは作って終わりではないことをわかってもらうことが必要でした。

玄関を見たらその家がわかるように、Webサイトは見る人が見たら、その企業のガバナンスやリテラシーを見透かすことができます。だからこそセキュリティを高めることが必要だし、ルール作りも必要。そこに対してコストを掛けることも必要。それを説得して回りましたね。

土台を固めてDX推進に着手

(写真:姫井佐恵さん)

成瀬:セキュリティやルールを整備して守りを固めたら、ようやく攻めることができるようになります。

姫井:Webサイトにブランディングという概念を取り入れることも、ようやくできるようになりました。長瀬産業はグループ会社が多く、買収した会社も少なくありません。NAGASEグループ全体としての統一感をもたせることで信頼感につながり、企業価値も高まるので、Webサイト制作のガイドラインも作りました。

デジタルマーケティングにはコンテンツとデータの両輪が必要だと思っているのですが、アイスタさんの力を借りてやっとコンテンツが整った段階ですね。今はデータを蓄積しようとしていて、マスタ整備にも着手しています。

成瀬:当社は暗黙知が多くて、課題が持ち上がると社員のアタマの中を吐き出せば、ソコソコのものができてしまう。だからこれまで知見をデータ化することが重要視されてきませんでした。

しかし、転職が当たり前になる時代になると、一人ひとりの記憶を持ち寄って課題を解決することが難しくなります。データが整備されればその心配はなくなりました。

姫井:やっとスタートラインに立ちましたね。でも、数年前の何もない状態から、このスピードでここまで来られたことは我ながらすごい(笑)。

成瀬:他社の同じような立場の人たちと話すと、「もしかして当社のDXは順調に進んでいるのでは?」と感じることが多々あります(笑)。もちろん、アイスタさんが引っ張ってくれたおかげで今があります。

DX推進に必要な専門性が揃っているアイスタ

(写真:生田大介)

生田:ここまで一気にいろいろなことを整えて、成果を出しているプロジェクトはなかなかありません。しかも、マーケティング推進室は少人数ですよね。

成瀬:そこは本当にアイスタさんのおかげだと思っています。アイスタさんのすごいところは幅広い専門性を持つスタッフがいることで、ミーティングにはいろいろな職種の人が出てきます(笑)。こんな職種のスタッフもいるんだ!と驚いたことが何度もありますね。

姫井:例えば、問い合わせフォームからMAツールにつなぎたいと考えた時、流し込むための設計が必要です。その時にWebサイトのUI/UXをわかっている人が設計すると、スムーズな仕組みができます。アイスタさんにはそういう人材もいますよね。

生田:システム側で取得したい情報を理解すると、WebサイトのUI/UXの設計もしやすいメリットがあります。

成瀬:NAGASEグループに関わる幅広いユーザー像を整理し、ペルソナを設定する作業も一緒にやっていただきました。そこからデジタル上でどのような行動をするのか、カスタマージャーニーを考えてからコンテンツに落とし込んでいきました。このあたりのUI/UXデザインはさすがでしたね。

姫井:バックエンド側の技術者も多くいますよね。ミーティングしていると、デザイナーなどクリエイティブスタッフとは違うことを言い出します(笑)。よく聞くと向かっている方向性は同じなのですが、サーバーサイドから見た懸念事項などを言ってくれるので、こちらも視野が広がり、安心して進めることができます。

成瀬:スケジュール含めてコントロールしてくれるPMがいることも心強いですね。

姫井:幅広い人材がいるから、守備範囲が広いことも助かります。戦略策定という上流から、クリエイティブ力が発揮された高品質なアウトプット、システム設計、運用まで任せておけば安心。DX推進に必要な専門性が揃っています。ミーティングで出てくる資料もわかりやすいですし、判断に困りそうな局面では具体的に作って見せてくれることも多く、スピードアップにつながっています。

成瀬:アイスタさんのスタッフは自分たちがやりやすい方向ではなく、NAGASEグループにとってやりやすい方向を第一に考えてくれます。グループ会社や事業部へのヒアリングを通して、一緒に将来像を描きながら戦略を考えたり設計を進めたりできる心強いパートナーです。

企業によってDXの定義や課題はさまざまだと思いますし、結果成果があがらない、運用されないプロジェクトになることも多いと聞いています。

その中で当社とアイスタさんが短期間で推進できたのは、アイスタさんがさまざまな役割を果たしていただける方がいたり、チームとして連携していただいたからだと実感しています。

当社が本当にやりたかったことはこれからスタートします。今後もDXの一環としてデジマを加速していくためにアイスタさんには常に伴走いただけるパートナーとして寄り添い続けてほしいですね。

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執筆者
生田 大介(執行役員)
大手印刷会社に入社後、エンジニアとしてWebシステムやアプリサービス、空間インタラクティブなどの企画から実装を経験。テクニカルディレクター兼UXUIデザイナーとして、大手クライアントを中心に多くの実績を積む。2019年より博報堂アイ・スタジオに参画。オウンドメディアやデジタルサービスのUXデザインやデジタルマーケティング、コミュニケーションプラニングの領域でクライアントのプロジェクトに伴走し、サービスやUXの全体構想からUIデザイン、実装のコンサルティングを行う。執行役員。

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