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DXに伴うグローバル規模のルール策定と運用体制の構築

生田 大介(執行役員)
2025-07-25
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博報堂アイ・スタジオ(以下、アイスタ)で執行役員を務める生田です。

当社とNAGASEグループ様とのパートナーシップは5年以上にもわたり、長期間様々なプロジェクトで連携させていただいております。

グローバル展開している企業にとって「各拠点でルールが違う」「誰が何を決めるべきか不明確」といった課題はつきものです。

今回のテーマは、そんな悩みに向き合った長瀬産業様との「グローバルルール策定とその後の運用改善に向けたプロジェクト」の裏側を長瀬産業様のデジタルマーケティングを推進しているマーケティング推進室のキーパーソンである、室統括 成瀬雅則さんと姫井佐恵さん(現 ナガセヴィータ株式会社 デジタル戦略・業務変革推進リーダー)に語っていただきます。

企業価値を上げるルール作りと効率的な運用体制

(写真:左から姫井佐恵さん、成瀬雅則さん)

生田:米国から日本へインフラ環境運用の主導権を移行したことによって、さまざまな付随する業務も日本で実施することになり、その中での環境運用のルール作りが重要な課題になりました。

成瀬雅則さん(以下、成瀬):長瀬産業は日本の会社ですが、NAGASEグループのネットワークは世界中に広がっています。グローバル企業ならではの課題だと思いますが、現地法人は現地の文化と言語でビジネスをしているので、マーケティングの考え方は日本とは異なります。そのため、現地法人がそれぞれにWebサイトを作ると、同じグループには見えないサイトが乱立してしまいます。

姫井佐恵さん(以下、姫井):この時代、WebサイトがNAGASEグループとのファーストタッチになることが多いです。つまり、WebサイトはNAGASEグループの顔。統一感を出し、各グループ会社がNAGASEネットワークの一員であることを示すことで、企業の価値や信頼度を上げます。統一感を出すためには、ルール作りが必要です。

成瀬:ルール作りはリスクヘッジにもなります。制作や管理方法、運用についてのフローやガイドラインを作っておけば、担当者が変わっても事故が起きにくくなります。最低限の安全性を担保しておくことは重要ですよね。環境運用をしっかり管理していくことは、これからのガバナンス強化に欠かせないことです。

ガバナンス強化を可能にしたアイスタのグローバル対応力

生田:日本はきっちり管理したがる国民性ですが、それが世界中どこでも通用するわけではありませんから、どの程度のルールにするのか、難しいところですよね。

姫井:確かにあまりにガチガチのルールにしてしまうと、自由度がなくなり、現地の商習慣やニーズを吸い上げることができず、ビジネスに貢献するWebサイトになりません。

それに、事業部やグループ会社が発注しているベンダーの技術スキルにも差がありますから、ルールが多すぎると守ることが難しくなります。そのあたりの落としどころは気を使いました。

成瀬:ここはアイスタさんのグローバル対応力にかなり助けてもらいました。現地の言葉と文化を理解しているスタッフが多くて助かります。また、我々がやりたいこと、目指す方向もしっかり理解してくれている。

アイスタさんが日本の長瀬産業の一員として現地法人とコミュニケーションを取って粘り強くヒアリングやディスカッションを重ね、ガイドラインを作り上げました。環境運用の管理を通じて、日本の長瀬産業が考えるガバナンスも伝えることができたと感じています。

姫井:もうひとつ、アイスタさんの強いところは、セキュリティなどシステム構築からアウトプットまでデジタル領域を網羅する専門性があること。ガイドラインを作るときも、こっちは細かいけど、こっちはガバガバ、ということがなく、必要なことを漏れなく入れ込むことができました。

プライマリーベンダーが実践するガイドライン策定・浸透術

生田:ガイドラインは作ったら終わりではなく、有名無実にならないように浸透させていく必要があります。

姫井:そこもアイスタさんの力をお借りしました。グローバルプライマリーベンダーとして、各事業部やグループ会社が抱えるベンダーに対して説明会を実施したり、セキュリティチェックなどのサポートをしたりしてくれました。

最初は本社から「これはOKだけど、これはダメ」と押し付けられたように感じ、抵抗感を持っていた事業部もいたのですが、アイスタさんが手厚くフォローしてくれたおかげで、最近は「次はここを改良したい」などと提案も出てくるようになりました。

成瀬:運用をスタートすると、やはり足りないところが出てきたり、アップデートの必要があったり、ガイドラインも手を入れ続けなければなりません。その度にサマリーを作って制作側に指示を出してもらっています。今のマーケティング推進室の人員ではとてもそこまで手が回らないので、とても助かっています。

姫井:ベンダーの技術スキルは本当にばらばらで、当初は期待通りではないWebサイトもありました。そういった場合はアイスタさん主導で閉じたり移管したりしてきましたが、新たに作り直してもらうとコンバージョンが上がるなどの成果がしっかり出ます。

結果を出すことを繰り返していくうちに、各事業部やグループ会社からの信頼度も上がって「アイスタさんの提案することを聞いておこう」という雰囲気になってきたかもしれません(笑)。その中でベンダーの入れ替えがあり、全体的にはベンダーの質も上がってきたと思います。

生田:今でも警備員のように、ベンダーがルールを逸脱していないかチェックしています(笑)。ガイドラインの運用当初よりは警備も楽になってきて、浸透してきていることを感じます。

漠然とした課題を具体的な成果へ。アイスタの提案力と実行力で切り拓くDX推進

姫井:「DXをしろ!」と言われても何から手を付けたら良いかわからないように、デジタル領域でガバナンス強化をするというテーマは、当初は漠然としていました。そのような状態から、アイスタさんが我々へのヒアリングを元にたたき台になるような提案をしてくれて、徐々に具体的に考えられるようになり、形にすることができました。

アイスタさんの提案は、言われたままのものではなくて、常に新たな視点や発見があり、「そうそう!そういうこと!」といつも喜んでいます(笑)。

成瀬:アイスタさんのプロジェクト推進力は素晴らしいと感じています。ディスカッションできるような素材を必ず提供してくれますよね。そして、さまざまな専門性を持つスタッフがすぐに疑問を解決してくれる。

姫井:アイスタさんにプライマリーベンダーをお願いすることで、NAGASEグループ全体のデジタルコンテンツのクオリティは上がりました。

でもまだこれは、ピラミッドの一段目。コンテンツは増えたけど、まだ売上に直結するようなお客様を呼び込めていません。これからコンテンツをもっと磨いて、ピラミッドの二段目、三段目を積み上げていかないと。

成瀬:NAGASEグループのお客様は世界中に広がっているので、各現地法人の環境運用の足並みを揃えるところまでたどり着けたのは大きいです。プラットフォームはしっかり作ることができたので、あとはデータと組み合わせてビジネスに結びつけたい。やっとこれから勝負することができるとワクワクしています。

生田:アイスタがNAGASEグループ様に対して今までお手伝いさせていただいたことは、我々の事業範囲のまだ一部分です。

さらにアイスタの強みが活かせるステージは今からだと感じています。これからもNAGASEグループの皆様と一緒にチャレンジさせていただけることを本当に楽しみにしています。

DX支援をしてほしい

執筆者
生田 大介(執行役員)
大手印刷会社に入社後、エンジニアとしてWebシステムやアプリサービス、空間インタラクティブなどの企画から実装を経験。テクニカルディレクター兼UXUIデザイナーとして、大手クライアントを中心に多くの実績を積む。2019年より博報堂アイ・スタジオに参画。オウンドメディアやデジタルサービスのUXデザインやデジタルマーケティング、コミュニケーションプラニングの領域でクライアントのプロジェクトに伴走し、サービスやUXの全体構想からUIデザイン、実装のコンサルティングを行う。執行役員。

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