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KPIとは?KGIとの違いやマーケティングでの設定・活用手順を解説

デジマ担当
2025-12-24
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ビジネスの成長において、リード獲得から商談、そして売上へとつながるマーケティング活動は不可欠な要素です。しかし、現代はデジタル化が加速し、顧客は営業担当者と接触する前に多くの情報を自ら収集するようになりました。

このような環境下において、少人数体制のマーケティング部門や、営業とマーケティングの連携に課題を抱える組織では、「限られたリソースをどこに配分すべきか」「施策の売上貢献度が可視化できない」といった悩みが尽きません。

効率的かつ効果的に見込み顧客(リード)へアプローチし、成果を最大化するために不可欠なのが、データに基づいた精度の高い「KPI」の設定と活用です。

本記事では、マーケティング活動におけるKPIの基礎知識から、KGIとの違い、具体的な設定フレームワーク、そして施策別の実践例までを体系的に解説します。ビジネスを成功へ導くための指針として、ぜひお役立てください。

KPIとは?意味と目的を解説

KPIの定義と役割

KPIとは「Key Performance Indicator」の略称で、日本語では「重要業績評価指標」と呼ばれます。最終的なビジネス目標(KGI)を達成するために必要な、プロセス上の具体的な指標です。

例えば、「年間売上を上げる」という目標があっても、日々の業務で何をすべきかが曖昧であれば行動に移せません。そこで、「月間のリード獲得数」や「Webサイトのコンバージョン率」といったKPIを設定することで、ゴールまでの進捗を定量的に把握できるようになります。

KPIを設定する最大の目的は、施策が最終目標に対してどのように貢献しているかを明確にすることです。これにより、マーケティング活動の優先順位がはっきりとし、限られたリソースを最も効果的な部分に集中させることが可能になります。

KGIとKPIの違いと関係性

KPIとセットで語られる言葉に「KGI」があります。両者の違いを理解することは、正しい目標管理の第一歩です。

  • KGI (Key Goal Indicator / 重要目標達成指標) 企業の売上や利益、市場シェアといった「最終的なビジネス目標」を指します。 例:「年間売上1億円達成」「新規顧客獲得数200社」など。

  • KPI (Key Performance Indicator / 重要業績評価指標) KGIを達成するための中間プロセスを測る指標です。例:「Webサイト訪問者数」「資料ダウンロード数」「商談化数」など。

この2つは、KGIを頂点とし、それを達成するための要素としてKPIがぶら下がる「ロジックツリー(KPIツリー)」の関係にあります。KPIはKGIから逆算して設定される必要があり、KPIの達成が論理的にKGIの達成につながる構造でなければなりません。

参考記事:ROIとは?基本の計算式とROASとの違い、実務での活用例をわかりやすく解説

効果的なKPIを設定するためのフレームワーク

ただ闇雲に数値を設定するだけでは、KPIは機能しません。効果的な運用を行うために、以下のフレームワークを活用して「生きた指標」を設計しましょう。

1. SMARTの法則:測定可能な目標にする

設定したKPIが適切かどうかを判断するために、「SMARTの法則」というフレームワークが役立ちます。

  • Specific(具体的) 目標は曖昧さを排除し、誰が見てもわかるように明確にします。
    ×「リードを増やす」 → ○「月間新規リード獲得数を20件にする」

  • Measurable(測定可能) 進捗を定量的に追跡できるよう、数字で測定可能な指標にします。

  • Achievable(達成可能) 非現実的な目標はモチベーション低下を招きます。過去の実績や市場状況を考慮し、現実的かつ達成可能な範囲で設定します。

  • Relevant(関連のある) そのKPIはKGIに直結していますか? KGI達成に貢献しない指標を追っても意味がありません。

  • Time-bound(期限付き) 「いつまでに」という期限を設けることで、計画的な実行を促します。

2. MECEの原則:抜け漏れ・重複を防ぐ

KPIを洗い出す際は、「MECE(ミーシー:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)」、つまり「互いに重複せず、全体として漏れがない」状態を意識します。

  • 重複がない:同じ成果を複数のKPIで二重計上していないか確認します(例:Webサイト経由とフォーム経由の重複など)。

  • 漏れがない:マーケティングファネル全体(認知〜購入〜ファン化)を見渡した際、重要なプロセスが測定対象から抜け落ちていないかを確認します。

例えば、リード獲得においてWebサイトだけでなく、オフラインイベントや営業からの紹介といった全ての流入経路を考慮することで、全体像を正確に把握できるようになります。

【施策別】マーケティングKPIの具体例と設定ポイント

マーケティング活動は、顧客の検討フェーズ(マーケティングファネル)に合わせて適切なKPIを設定する必要があります。ここでは主要な3つの施策について、具体的な指標と設定のポイントを紹介します。

1. コンテンツマーケティング・SEOにおけるKPI

コンテンツマーケティングやSEOは、主に「認知」から「興味関心」のフェーズで、潜在層にアプローチする施策です。

【主なKPI指標】

  • 自然検索流入数: 検索エンジンからの訪問者数。

  • ターゲットキーワードでの検索順位: 狙ったクエリでの表示順位。

  • 記事の滞在時間: コンテンツの読了率やエンゲージメントを示す指標。

  • リード獲得数: 記事経由での資料請求や問い合わせ数。

【設定・運用のポイント】 ターゲットキーワードを選定する際は、検索ボリュームだけでなく競合性も考慮します 。また、昨今のSEOでは「E-E-A-T(経験、専門性、権威性、信頼性)」が重要視されています 。単にアクセスを集めるだけでなく、読者の課題解決に深く貢献する高品質なコンテンツを作成し、直帰率や再訪問率といった質の指標も併せて確認しましょう 。

2. Webサイト最適化・UI/UXにおけるKPI

Webサイトはリード獲得の「入り口」であり、受け皿となるUI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)の品質は、成果に直結します 。

【主なKPI指標】

  • Webサイト全体のCVR(コンバージョン率):訪問者のうち、成果(問い合わせ等)に至った割合。

  • 主要ページのCVR:サービス紹介ページやLPなど、重要なページの転換率。

  • 表示速度(LCP、FID、CLS):ページの読み込み速度や快適さ。SEOにも影響します。

【設定・運用のポイント】 ヒートマップツールなどを活用してユーザーの行動を可視化し、どこで離脱しているかボトルネックを特定します。また、フォームの項目数やボタンのデザインなどを改善する「A/Bテスト」を継続的に実施し、データに基づいてCVR改善率を追うことが重要です。モバイルフレンドリーな設計や表示速度の改善も必須要件です。

参考記事:WebサイトのCVRを最大化するUI/UX設計とは?リード獲得を成功に導くポイント

3. メールマーケティングにおけるKPI

獲得したリードを育成(ナーチャリング)し、商談へとつなげるためにメールマーケティングは強力な手段です。

【主なKPI指標】

  • 開封率:件名や送信元の適切さを測る指標。

  • クリック率 (CTR):本文中のリンク誘導率。コンテンツの魅力度を示します。

  • ホットリード数:スコアリングなどで定義した、購買意欲が高く商談に近い見込み顧客の数。

  • 休眠リードの再活性化率:一定期間動きがなかった顧客の掘り起こし率。

【設定・運用のポイント】 開封率を高めるためには、「4Uの原則(有益性、緊急性、具体性、独自性)」を意識した件名作りが効果的です。また、MA(マーケティングオートメーション)ツールを活用し、顧客の行動履歴に基づいたパーソナライズされたメールを自動配信することで、リードスコアを高めていきましょう。

マーケティングファネルにおける施策・アクション、KPI・評価指標の考え方

KPIを達成するための運用と改善サイクル(PDCA)

KPIは「設定して終わり」ではありません。日々の運用の中で数値をモニタリングし、改善のアクションにつなげる「PDCAサイクル」を回すことが最も重要です。

データに基づいた継続的な改善

KPIの達成度合いやボトルネックを可視化するために、Google AnalyticsやSearch Console、MAツールなどの各種ツールを活用してデータを一元管理しましょう。「KGI実績レポート」や「施策結果レポート」を定期的に確認し、目標と実績にギャップ(乖離)がある場合は、その原因を深掘りするアドホック分析を行います。データに基づいた客観的な事実から次の一手を打つことが、成果への近道です。

参考記事:【連載 第1回】はじめの一歩:Googleアナリティクスで、あなたのサイトの『今』を見てみませんか?

営業部門との連携強化(ラストワンマイル)

マーケティング部門がどれだけ良質なリードを獲得しても、それが商談・受注につながらなければ企業の売上(KGI)には貢献できません。ここで重要になるのが営業部門との連携です

  • リード定義の共有:をもって「有望なリード(MQL/SQL)」とするのか、定義をすり合わせます。

  • 共通KPIの設定:「MQLから商談への転換率」などを共通の指標として追うことで、部門間の分断を防ぎます。

  • フィードバックのループ:営業現場から「どのようなリードが成約しやすいか」というフィードバックをもらい、それをマーケティング施策(コンテンツやターゲティング)に反映させることで、商談化率や受注率を向上させます。

参考記事:マーケティングと営業の連携を成功させる3つのポイント!うまくいかない原因と解決策とは

よくあるKPI設定の失敗例と注意点

最後に、KPI運用で陥りがちな落とし穴を確認しておきましょう。

  • KPIが多すぎる あれもこれもと指標を増やしすぎると、管理が煩雑になり、本当に重要な指標が見えなくなります。優先順位をつけ、必要なものに絞り込む勇気が必要です。

  • 目標値が非現実的 現場の実態を無視した高すぎる目標は、メンバーの疲弊やモチベーション低下を招きます。

  • KPIがKGIと連動していない 「PV数は増えたが、売上は増えていない」といったケースです。KPIの達成がビジネス成果に貢献していない場合、KPI設定そのものを見直す必要があります。

まとめ:KPIはビジネス成長の「道標」

KPIは、不確実なビジネス環境の中で、企業が目指すゴール(KGI)へと迷わず進むための指標です。適切なKPIを設計し、PDCAを高速で回し、営業部門と連携して改善を続けること。これこそが、効率的なマーケティングを実現し、持続的な成長を成し遂げるための鍵となります。

博報堂アイ・スタジオは、インターネット黎明期から培ってきたデジタル開発領域における深い知見と実績を有しています。大規模プロジェクトのマネジメントから、データドリブンな顧客体験(CX)の最適化まで、貴社のDX化やマーケティング課題の解決に伴走してご支援いたします。KPIの設計や運用、デジタルマーケティングの戦略についてお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

KPI設定に関するよくあるご質問(FAQ)

Q1. KPIはいくつくらい設定するのが適切ですか?

A. 多すぎると管理が難しくなるため、最初は主要な指標を3〜5つ程度に絞ることをおすすめします。部門全体で追う「メインのKPI」と、各施策担当者が追う「サブKPI」を階層分けして管理するとスムーズです。

Q2. 設定したKPIが達成できない場合はどうすれば良いですか?

A. まずは「なぜ未達成なのか」の原因を分析します。施策の量や質が不足しているのか、あるいは市場環境の変化により目標設定自体が非現実的になっている可能性もあります。状況に応じて、行動計画の修正や、場合によってはKPIの目標値自体の見直しも検討しましょう。

Q3. 初心者におすすめの分析ツールはありますか?

A. Webサイト分析であれば「Google Analytics 4 (GA4)」と「Google Search Console」が必須の基本ツールです。これらに加えて、ユーザーの行動を可視化する「Clarity(ヒートマップツール)」なども導入しやすく、Webサイト改善に役立ちます。

Q4. B2BとB2CでKPIの設定方法は変わりますか?

A. KGIから逆算する基本的な考え方は同じですが、検討期間や購買プロセスが異なります。B2Bは検討期間が長く、複数の関係者が関与するため「リード獲得」「商談化率」などが重要視されます。一方、B2Cは「購入数」「LTV(顧客生涯価値)」「SNSエンゲージメント」などが重視される傾向にあります。ターゲット顧客の動きに合わせて指標を選定しましょう。

執筆者
デジマ担当
主に自社のWebサイト運用が業務。SEO対策、コンテンツマーケティング、SNSやWeb広告配信、メール配信、アクセス解析ツールを用いた効果測定と改善提案、リード獲得から育成までの施策設計など、デジタルチャネルを活用したインハウスマーケティング業務全般を行う担当者。