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枠をきめないから面白い。テック領域まで凌駕するアートディレクターの思考と表現力

佐川 貴保(アートディレクター)
2025-03-12
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《 ピープル 》は 幅広い業務で活躍するメンバーに、仕事の向き合い方からプライベートまでじっくり話を聞くコーナーです。

いかに楽しむか。いかに面白くするか。

これまでの経歴・入社経緯を教えてください。

「前職ではデザイナーとしてもエンジニアとしても働いていて、制作領域は一通り経験していました。ただ、規模感はそこまで大きくなかったので、案件領域や規模を広げたく、アイスタに入社しました。

早いもので入社してから6年経ちましたね。アイスタでは、前職での実装知識や経験を活かして、テック系の案件含めさまざまな案件に携わらせていただいています。デザインだけでなく、テクニカルなことや実装演出まで担当することも多いですね。」

仕事におけるマイルールはありますか?

「自分が楽しくいられるようにすること…ですかね。楽しく取り組む仕事のほうが断然よいアウトプットになるので、自分がやりたいことや興味のあることを盛り込んだり、頑張れないときは無理しなかったり、面白そうだったら無茶させてもらったり。

できるか分からないことでも『面白そうだったらやっちゃえ』という楽観的なところがあって。実際やってみると、プロセスにも意味があったり、得られるものがあるので、良い経験になります。無茶なことをやって自分の領域を広げられることも楽しいです。

そんな感じで、グラフィック、ウェブ、アプリ、インスタレーション、映像、3D、イラスト、音楽、などなど…結果としていろいろなものをつくってきましたね。」

枠を決めない。越境していく役割と経験。

印象に残っている案件はありますか?

「『脳よだれ展2023』は面白かったです。『見るだけでカラダを反応させる。言葉にしなくてもココロに直接作用する。』という“本能を直撃するビジュアル”を世に問う展示会だったんですが、そのテーマをWebサイトの中でも体現すべく、脳がよだれを垂らすようなワクワクする演出を目指しました。」

「この案件では、初回提案時に触れるモックを持っていったんです。提案とかミーティングの場って言葉で説明することが多いと思うのですが、企画のコンセプト的にも、右脳的な説明と体感が必要だと思い、100%でなくてもアウトプットイメージを持っていくべきだなと…なんとか間に合わせましたね。」

初回提案時に持っていったモックのうちの一つ

「実際、実装モックを何案かみてもらって、感覚的に『この表現が良さそうだ』と言っていただけました。演出表現について早々に意見を交わし、視覚的にも認識を合わせることで、より精度をあげていくことができたと思います。ビジュアルや表現のこだわりをエンジニアチームに相談しながら、TOPの演出領域まで自分で手を動かしました。結果、上手く連携し、再現性高く実装することができました。」

こういった発想や表現の種になっているものはありますか?

「意識して探すこともあるんですが、基本日常の中でいいなと思ったものや気になったものを覚えておいて、どう表現できるのか軽く調べたり、フィジビリをみておきます。それで、実際にその表現が使えそうかもとなった時に、改めて実装方法をしっかり調べて使ってみてますね。

基本、平面的なものではなく『動いているもの』を参考にしていることが多いかと思います。動作にしても、視覚体験にしても、一瞬で終わるものってなくて、続いていくものじゃないですか。なので、映像とかゲームの表現とかは結構見ていますが、意外と個人制作の小さなゲームの中での表現とかが参考になったりしますね。斬新で、自分の頭の中にない表現だったり、驚きがあります。」

その他に、仕事の中で意識していることはありますか?

「そうですね。UXとかUIって言葉もあると思うのですが、実はあまり気にしたことはないです。というのも、アートディレクターやデザイナーとして、そういったユーザー動線を考えるとか情報設計をすることは、もはや当たり前の素養というか、できて然るべきことかなと思っているので。

ただ、やはりクライアントにはきちんと説明をしたり、議論にあげたり、実際の体験をもとに検討し直したりすることは重要だと思っているので、そこは意識をしています。アプリのUI設計を行う案件では、かなり細かい仕様部分であっても、丁寧にチームメンバーやクライアントへ情報設計やUIの提案を行いました。ここは感覚的かつ、ロジックも必要な左脳的な内容ですね。」

広がるデジタル表現と体験づくりへの興味。

最近興味を持っていることは何ですか?

「一番は子どもの成長ですね。少し前に、息子が亀の絵を書いたんです。本当に感動させられました。子どもの動きって、全く規則性がないように見えて、意外なところに法則があったり、インタラクションの塊なんですよ。遊ぶ動作にしても、しゃべる内容にしても、一つひとつが面白い。たくさん発見があって刺激をもらっています。自分にとっては新しいインプットなので、気づかないうちに仕事のアウトプットにも活きているんじゃないかと思います。」

子どもの遊ぶ様子 / 実際に書いた亀の絵

今後、挑戦していきたいことはありますか?

「ひとつは、空間コンピューティング。領域もどんどん広がっていってるのでずっとワクワクしています。もともとパソコンとかゲームとか、道具やガジェットといった機械的なものをいじるのが好きなのですが、最近は子どもの遊びを間近に見ていて、新しいおもちゃや体験設備、空間を作ってみたいと思いました。

昔、息子が生まれる前に、子ども向けのインスタレーション的な遊び場を作ったんです。その時もすごく楽しかったのですが、今ならもっと楽しく、最高の体験を生み出せそうです。子どもって忖度もないので、評価がリアルに分かりますよね。思いっきり楽しそうにしている顔を見られたら嬉しいですね。デジタルに限らず、ものを考えたり、作ったりすることが好きなので、基本的に何でもいろんなものを作ってみたいなとは思います。」

「アイスタ内でも、ビジュアルとエンジニアリングの実験を行うバーチャルチームを作ったんです。表現の試行錯誤だったり、アイデアのシェアをしたり、表現をアウトプットしてみたり、このチームもあらゆる方向に発展させていきたいなと思ってます。」

取材・執筆:小宮 恵里花
撮影:小坂 夏未

出演者
佐川 貴保(アートディレクター)
学生時代は人間工学を専攻し、バンド活動をしながら過ごす。その後、小さな会社でデザイナー兼エンジニアとして幅広いジャンルの仕事を経験し、アイスタに入社。アートディレクターをやりつつ、場合によっては実装領域も手がける。基本的に興味の赴くまま楽しいと思うことをやるようにしている。これからも遊ぶように、ものをつくったり、スキルを磨くという感覚を大事にしたい。息子がいたくかわいい。

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