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顧客に選ばれる理由を言語化する 「バリュープロポジション」の作り方

デジマ担当
2025-09-03
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「自社の製品は高機能なのに、その良さが伝わらない…」 「新サービスの強みを、どうアピールすればいいのだろう?」

自社の製品やサービスに自信があるにもかかわらず、その価値が顧客にうまく伝わらず、もどかしい思いをしていませんか?情報やモノが溢れる現代において、ただ「良い製品」であるだけでは顧客に選ばれることは困難です。「なぜ、あなたの商品でなければならないのか?」という問いに明確に答える必要があり、その答えこそが「バリュープロポジション(提供価値)」です。

この記事では、バリュープロポジションの基礎知識から、その価値を誰でも明確に、かつ効果的に導き出せるフレームワーク「バリュープロポジションキャンバス」の使い方まで、具体的なステップに沿って分かりやすく解説します。この記事を読み終えるころには、自社の本当の強みと顧客が求める価値がつながり、自信を持って「自社が選ばれる理由」を語れるようになっているはずです。

1. バリュープロポジションとは

バリュープロポジションとは、単なる製品の特長ではなく、「自社の製品やサービスが、顧客の特定の課題をいかに解決するのか」を一言で表した『提案』のことです。

これは、以下の3つの要素を含んでいます。

  • ターゲット顧客は誰か? (Who?)

  • その顧客のどんな課題を解決するのか? (What?)

  • なぜ競合ではなく、自社がそれを提供できるのか? (Why?)

バリュープロポジションを明確にすることは、顧客との「価値のズレ」を防ぎ、本当に届けたい価値を、それを最も必要としている顧客にまっすぐ届けるための第一歩となります。

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ちなみに、この概念は1988年にマッキンゼー・アンド・カンパニーのマイケル・ラニングらによって提唱され、後にアレックス・オスターワルダーらが発表した「バリュープロポジションキャンバス」によって、より実践的なツールとして世界中に普及しました。

2. なぜ今、バリュープロポジションが重要なのか?

重要性が高まっている理由は、「モノと情報が溢れ、違いが分かりにくくなったから」です。

インターネットの普及で顧客はあらゆる情報を簡単に入手できるようになり、同時に技術の進化は製品やサービスの同質化(コモディティ化)を加速させました。このような状況で、単に「高品質です」とアピールするだけでは、無数の競合の中に埋もれてしまいます。

明確なバリュープロポジションは、社内外に対して自社が提供する独自の価値を宣言し、マーケティングメッセージに一貫性をもたらします。それだけでなく、製品開発や営業、サポートといった全部門の共通言語としても機能します。情報過多の時代だからこそ、顧客に選ばれるための明確な指標として、その重要性はますます高まっているのです。

3. 「バリュープロポジションキャンバス」活用の3大メリット

「では、どうやって作ればいいのか?」という疑問に答えるのが、「バリュープロポジションキャンバス」です。これは、顧客のニーズと自社の提供価値を可視化し、両者を結びつけるツールです。代表的なメリットを3つご紹介します。

3-1. 顧客を“解像度高く”理解できる

ターゲット顧客が「何を課題に感じ(ペイン)」、「最終的に何を得たいのか(ゲイン)」を徹底的に掘り下げることができます。これにより、これまで漠然と捉えていた顧客像が、具体的なニーズを持つ一人の人間として鮮明になります。

3-2. 提供すべき価値が“一目で”わかる

顧客のニーズと、自社が提供できる価値(製品・サービス)を一枚の絵として並べて見ることで、「顧客のどの悩みを、自社のどの強みで解決できるのか」という対応関係が直感的にわかります。これにより、チーム内での認識合わせもスムーズに進みます。

3-3. 顧客と市場のズレを防ぐ

「自分たちが良いと思うもの」と「顧客が本当に求めているもの」のズレは、ビジネスが失敗する大きな原因です。キャンバス上で両者を客観的に比較検討することで、このズレを未然に防ぎ、製品・サービスが市場に受け入れられる状態、いわゆる「プロダクトマーケットフィット(PMF)」の達成へと近づけます。

4.【実践】バリュープロポジションキャンバスの使い方

キャンバスは右側の「顧客プロフィール」と左側の「バリューマップ」で構成されています。ポイントは、必ず右側の「顧客プロフィール」から先に埋めること。 まずは顧客理解を徹底します。

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4-1. 右側:顧客プロフィール

顧客の頭の中を覗き込むように、3つの要素を洗い出していきます。

  • ① 顧客のジョブ(Customer Jobs)
    顧客が片付けたい課題や達成したい目的。
    例:毎月の経費精算を効率化したい、チームのタスク進捗を可視化したい

  • ② 顧客のペイン(Pains)
    ジョブを遂行する上での障害や悩み。
    例:レシート入力が面倒で時間がかかる、誰がどのタスクを抱えているか分からず業務が滞る

  • ③ 顧客のゲイン(Gains)
    ジョブがうまく片付いた結果、顧客が得たいと望んでいるポジティブな結果や喜び。
    例:経費精算の時間が半分になったら嬉しい、チーム全員の状況が一目で分かれば安心

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    4-2. 左側:バリューマップ

顧客への理解が深まったら、次に自社が提供できる価値を整理します。

  • ④ 製品・サービス(Products & Services)
    自社が提供している製品やサービスそのもの。
    例:AI-OCR機能付き経費精算システム、カンバン方式のタスク管理ツール

  • ⑤ ペインの解消策(Pain Relievers)
    自社の製品・サービスが、顧客の「ペイン」をどのように取り除き、和らげるのかを具体的に記述します。
    例:レシートをスマホで撮るだけで、日付や金額を自動入力、タスクの担当者と期限をカードで管理し、進捗を一覧表示

  • ⑥ ゲインの創造策(Gain Creators)
    自社の製品・サービスが、顧客が望む「ゲイン」をどのように実現し、生み出すのかを記述します。
    例:空いた時間で、より創造的な業務に集中できる、チームの生産性が向上し、残業時間が削減される

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4-3. 左右を合致させる:提供価値の言語化

最後に、キャンバスの左右を見比べて、顧客の「ペイン」「ゲイン」と、自社の「解消策」「創造策」がしっかりと対応しているかを確認します。この両者がぴったりと重なり合った部分こそが、あなたの会社が提供すべき「バリュープロポジション」の核となります。この核を元に、「誰に、何を、なぜ自社が提供できるのか」を簡潔な文章にまとめていきましょう。

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5. 差がつく!優れたバリュープロポジションの5つの特徴

作成した提供価値が強力なものか、以下の5つの視点でチェックしましょう。世界の成功企業が持つ優れたバリュープロポジションには、共通する特徴があります。

  1. 顧客にとって本当に重要なことに集中しているか?
    顧客の悩みや願望は無数にありますが、全てを解決しようとする必要はありません。最も切実な課題は何かを見極め、そこにリソースを集中させることが成功の鍵です。

  2. 感情的・社会的な欲求にも応えられているか?
    人は機能的な価値だけでモノを買いません。「これを使うと気分が上がる(感情的欲求)」といった心の動きにも目を向けましょう。感情的なつながりは、真のロイヤリティを築きます。

  3. 顧客が気にする点で、競合と差別化できているか?
    他社との違いを打ち出すことは重要ですが、それが自己満足では響きません。「競合は解決してくれないが、自社なら解決できる」という、顧客が本当に価値を感じるポイントで差別化を図りましょう。

  4. 少なくともひとつの側面で、競合を圧倒しているか?
    価格、品質、利便性など、いずれかひとつの側面で「あそこには敵わない」と競合に思わせるほどの強みが理想です。一点突破の強みが、顧客に選ばれる明確な理由となります。

  5. 簡単に真似されないか?
    独自の技術、強力なブランド、特許など、競合が簡単に模倣できない「参入障壁」はありますか?持続的な競争優位性を保つためには、模倣困難性も重要な要素です。

まとめ

本記事では、顧客に選ばれるための「バリュープロポジション」の重要性から、それを導き出すための強力なツール「バリュープロポジションキャンバス」の使い方、そして優れた提供価値が持つ特徴までを解説してきました。

情報が溢れ、あらゆる製品・サービスが簡単に比較される現代において、自社が「何屋」であり、「誰の」「どんな課題」を解決するプロフェッショナルなのかを明確に定義することは、企業の生死を分けると言っても過言ではありません。

バリュープロポジションの作成は、一度きりで終わるものではありません。市場の変化や顧客のニーズに合わせて、常に見直し、磨き続けていく必要があります。

まずはこの記事を参考に、あなたのチームでバリュープロポジションキャンバスを囲んでみてください。顧客について語り、自社の価値を再発見するそのプロセス自体が、チームの結束力を高め、次なる一手を生み出す貴重な財産となるはずです。あなたの会社が顧客から選ばれ続けるための、確かな一歩がここから始まります。


参考URL、資料
https://www.strategyzer.com/library/the-value-proposition-canvas




執筆者
デジマ担当
主に自社のWebサイト運用が業務。SEO対策、コンテンツ制作、SNSやWeb広告の制作、メール配信、アクセス解析ツールを用いた効果測定と改善提案、リード獲得から育成までの施策設計など、デジタルチャネルを活用したインハウスマーケティング業務全般を行う担当者。