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【RFP完全ガイド】 RFPの具体的な記載項目と質の高い提案を引き出すコツ

鈴木 緑(プロデューサー)
2026-02-26
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Webサイト制作のプロジェクトを成功させるには、RFP(提案依頼書)の作成は、最初の、かつ、最も重要なステップです。「何を書けばいいか分からない」「どう書けば質の高い提案がもらえるか…」の不安もご心配なく!
本コラムでは【RFP完全ガイド】として、長年多くのRFPを拝見した上でWebサイトを立ち上げてきた私が、抑えるべきポイントをお伝えします。

Webサイト制作プロジェクトにおけるRFPの重要性

Webサイトのリニューアルや新規構築を成功させるために、最適なパートナーを見つける必要があります。その選定プロセスにおいて、RFP(提案依頼書)は、単なる依頼書ではなく、プロジェクトの成否を左右する戦略書となります。RFPの質が低ければ、企業の真の課題やゴールが伝わらず、的外れな提案やプロジェクト開始後の手戻りが発生してしまいます。逆に、明確なRFPを作成できれば、ベンダー※1はビジネスゴール達成にコミットした戦略的でクオリティーの高い提案をしてくれます。

※1 :このコラムの「ベンダー」は、開発会社や制作会社など、プロジェクトを一緒に進める外注先を指します。

RFP作成前の重要な3つの準備

質の高い提案を引き出すRFPを作成するためには、書式や形式を整える前に、発注者が社内でやらなければならない重要な準備があります。このプロセスを怠ると、RFPの具体的な記載項目をいくら充実させても、ベンダーは真のニーズに応えることはできません。

RFP作成前に、以下の3つの準備を徹底することがオススメです。


① 関係部署へのヒアリングと課題の深掘り

Webサイト制作を成功させるための第一歩は、社内における目的・課題の共通認識を醸成することです。

あなたがWeb担当者としてプロジェクトを主導していても、Webサイトは営業部門、マーケティング部門、広報部門、そして経営層など、さまざまな部署の活動に関わっています。これらの関係者から意見を聞き、なぜWebサイトの立ち上げやリニューアルが必要なのか、現状の課題を深掘りすることが不可欠です。

例えば、「Webサイトからの成果が足りない」という課題が営業部門から挙がっている場合、RFPには単に「問い合わせを増やしたい」と書くのではなく、「現在、Webサイト経由のリード獲得目標月間100件に対し、セッション数が3,000回で実績30件に留まっている。ターゲットユーザーへの導線改善によりCVR(顧客転換率)を3.0%(3倍)まで引き上げ、月間90〜100件の獲得を目指したい。」のように記載します。これにより、デザインの刷新だけでなく、CVRを3倍にするための抜本的な施策が必要であることを理解できます。

また別の例として、カスタマーサポート部門が電話対応に追われているという課題を抱えているとします。単に「FAQ(よくある質問)を充実させたい」と要望するだけでは不十分です。この場合、「月間1,000件ある電話問い合わせのうち、約40%がWebサイトで解決可能な初歩的な質問で占められている。FAQの検索性向上やチャットボット導入により、初歩的な質問はオンライン上で解決させ、入電数を300件(30%)削減し、サポートコストを圧縮したい。」のように、現状の数値と削減目標を明記します。そうすることで、単なるページ作成ではなく、コスト削減という経営課題に直結した提案が可能となります。



② プロジェクトのゴールとKPIの明確化

RFPに記載するプロジェクトの目的は、スローガンであってはなりません。何をもってプロジェクトを成功とするのか、定量的なゴールを明確に設定してください。

具体的には、KGI※1とKPI※2を設定します。
※1 KGI=Key Goal Indicator:重要目標達成指標  
※2 KPI=Key Performance Indicator:重要業績評価指標

KGIの例
・リニューアル後1年で、Webサイト経由の売上を15%向上させる。
・資料請求数を、現在の月平均100件から150件に増加させる。
KPIの例
・セッション数、直帰率、特定ページの離脱率を〇〇%改善する。

これらの具体的な数値目標をRFPに明記することで、ビジネスゴール達成を支援するための、より具体的で戦略的な施策をプランニングし、提案できるようになります。

なお、KGIとKPIは、計算できる指標でないと意味がありません。
詳細は無料eBook「効率的なマーケティングを実現するKPI実践ガイド」をご確認ください。


③ 予算と納期(スケジュール)の設定とQCDバランス

RFPに予算と納期を明記することは、質の高い提案を引き出すための最も重要な要素のひとつです。

「予算を伏せておいた方が、安い提案がくるのではないか?」という考えも分かりますが、予算が不明確な場合、費用をかけられる範囲がわからず、最適な技術や機能を提案できません。その結果、要件を満たさない提案や、想定を大幅に上回る見積もりが出てしまうなど、ミスマッチが生じる懸念があります。

RFPには、プロジェクト全体の上限予算と、実現したい機能やクオリティーを達成するために想定している現実的な予算の目安を記載することをおすすめします。

QCDの視点を取り入れ

予算と納期を提示する際、あわせて意識していただきたいのがQCDのバランスです。
プロジェクト管理において、これら3つの要素は密接に関連しており、互いにトレードオフの関係にあります。

Quality(品質) : Webサイトのデザイン、機能性、パフォーマンスなど
Cost(コスト) : 制作にかかる予算、費用
Delivery(納期): 公開日、スケジュール

短納期(Delivery短縮)で高品質(Quality向上)なものを求めれば、必然的に費用(Cost)は高くなります。
逆に費用を抑えれば、品質か納期のどちらか、あるいは両方を調整する必要があります。


優先順位を明確にしてブレないプロジェクトへ

ベンダーに対して、単に予算と納期を伝えるだけでなく、QCDの中で何を最優先するか、譲れないものは何かをRFPで示してください。

納期優先の場合 :〇月〇日の公開は絶対条件のため、予算内で実装可能な機能に絞り込んだ提案をしてほしい
品質優先の場合 :この機能とデザイン性は必須のため、予算超過の場合は複数のプランを提示してほしい
コスト優先の場合:予算上限は厳守。その範囲内で実現できる最大のパフォーマンスを提案してほしい

このように、貴社の中でQCDの優先順位を決め、それを共有することで、現実的で無理のない制作プロセスが設計され、プロジェクトの成功率が飛躍的に高まります。

質の高い提案を引き出すRFPの具体的な記載項目

社内的な目的と課題が明確になったら、具体的な記載項目を整えていきます。RFPは、以下の4つのカテゴリで構成することで、網羅性が高まり、ベンダーが過不足なく提案できるようになります。


◆ プロジェクトの基本情報 ◆

プロジェクトの土台となる情報です。
ベンダーがあなたの企業やプロジェクトの全体像を理解するために不可欠な項目です。

■ 会社概要・事業概要
株式会社名、所在地、主な事業内容を記載
■ プロジェクトの背景と目的
なぜリニューアルや新規構築が必要なのか、課題とゴールを具体的に記載
■ ターゲットユーザー
誰に向けてWebサイトを運営するのかを具体的に記載
例:「30代後半でITリテラシーの高いビジネスパーソン」「子育て中の夫婦」など、ペルソナを設定できれば、より質の高いデザインやコンテンツの方向性の提案を引き出すことができます。



◆ 提案依頼要件(期待するWebサイトの姿)◆

Webサイトの具体的な構造や機能、技術的な側面を理解するための項目です。

■ プロジェクトのスコープ
どこまでを今回の依頼範囲とするのかを明確化
例:「企画・設計・デザイン・開発を依頼」「公開後の運用・保守まで含めた提案も希望」など。
■ サイトマップ
既存Webサイトの構造、または新Webサイトで想定するページ構成案を提示
■ 機能要件
Webサイトに最低限必要なシステム機能を具体的にリストアップ
(CMS、お問い合わせフォーム、会員機能、多言語対応など)
■ 非機能要件
ユーザーには見えないが、システムの安定稼働に不可欠な要件


◆ 提案依頼事項(ベンダーへの質問)◆

何を提案してほしいのかを明確にする項目です。

■ 提案内容(企画意図、コンセプト、戦略など)
提示した課題に対し、どのように解決に導くのか、具体的な提案を依頼
■ 制作・運用体制、スケジュール
担当者、体制、目標納期を踏まえた具体的なスケジュールの提示を依頼
■ 費用内訳(見積もりのブレイクダウン)
提示総額が、どの工程にどれくらいかかるのか、内訳を細かく明記するよう依頼
これにより、提案内容の比較が容易になり、項目ごとの費用対効果を検討できます。



◆ 選定プロセスと前提条件◆

ベンダーが安心して提案に取り組み、企業間の取引をスムーズに進めるための項目です。

■ 提案書の提出期限、プレゼンテーションの有無
いつまでに、どこへ提出するのかを明確化
■ 選定基準
技術力、実績、費用、クオリティー、担当者の対応など、重視する点を具体的に記載
透明性を示すことで、期待に応える最適なプランの構築に注力できます。
■ 法務要件
NDA(秘密保持契約)の締結が必要な場合や、契約に関する特別な要件を記載

質の高い提案を引き出す3つのコツ

RFPに記載すべき項目を網羅しただけでは、まだ不十分です。競合するベンダーに本気で取り組みたいと思わせ、一歩踏み込んだ質の高い提案を引き出すためには、RFPにちょっとした工夫を盛り込む必要があります。



① 課題と要望をセットで伝える

RFPに「Aという機能が欲しい」「デザインを刷新したい」といった要望のみを記載しがちです。しかし、これだけではベンダーはあなたの企業がその要望の背景にどのような課題を抱えているのかを理解できません。


質の高い提案を引き出すコツは、関係部署にヒアリングして深掘りした課題と要望をセットで記載することです。

課題の例: 既存Webサイトのフォーム入力完了率が10%と低い。
要望の例: EFO(入力フォーム最適化)機能を持つフォームを導入いただきたい。
RFPへの記載例: フォーム完了率が10%という課題があるため、ユーザー行動を分析し、それを改善できるEFO機能を備えたシステムと、改善目標達成に向けた改善施策の立案まで含めた提案を希望いたします。

このように記載することで、ベンダーは単なるシステム導入屋ではなく、課題解決のパートナーとして戦略的な視点から提案を組み立てできるようになります。



② 「こだわりたい部分」と「お任せしたい部分」を明記する

RFPの記載内容がすべて必須要件であると受け取られると、創造性や強みが発揮されにくくなります。「これは絶対に譲れない」というこだわりの強い部分と、ベンダーの知見と創造性にお任せしたい部分を明確に区分してRFPに記載ください。(下記一例)

こだわりたい部分

お任せしたい部分

コーポレートカラーの厳守

特定の基幹システム連携

UI(ユーザーインターフェース)

コンテンツの表現方法

裁量を与えることで、ベンダーの得意とする技術やデザイン力を提案に反映させることができ、期待を上回る提案がされる可能性が高まります。

③ 評価シートを事前に公開し公平性と透明性を示す

提案書を作成する際、何を重視して評価されるのかが分かっていれば、彼らはそのポイントに注力できます。RFPに選定時の評価基準(評価シート項目)を事前に公開することが、質の高い提案を引き出す最後のコツです。

評価項目

配点(例)

記載の意図

課題解決の妥当性

30点

我々のビジネスゴールを理解した戦略的な提案か?

実現体制と進行方法

20点

無理のないスケジュールと専門性の高いチーム体制か?

費用対効果(コスト)

20点

予算内で最大限のクオリティーが期待できるか?

技術・セキュリティー

15点

非機能要件を満たす技術力があるか?

実績

15点

我々の業界や類似課題の解決実績があるか?

評価基準を公開することで、費用だけでなく、課題解決の妥当性や技術力といった、本当に求めている点に力を注ぐことができ、提案の質が飛躍的に向上します。

RFP作成はプロジェクト成功への最高の投資

Webサイト制作のRFPは、単に見積もりを依頼するための書類ではありません。それは、あなたの企業のビジョン、現状の課題、そして目指す未来を言語化し、最適なパートナーとの関係を築くための、プロジェクト成功に向けた投資です。
本コラムでお伝えした3つ重要なポイントを改めて確認し、投資に見合うリターンを手に入れてください。

ポイント1 : RFP作成前の準備

関係者へのヒアリングを通じて、社内の目的・課題の共通認識を醸成し、定量的なゴールを明確にする。

ポイント2 : 具体的な記載項目

プロジェクトの基本情報、機能/非機能要件、そして選定プロセスを網羅的に記載し、提案の土台を提供する。

ポイント3 : 質の高い提案を引き出すコツ

「課題と要望をセットで伝える」「こだわりたい部分とお任せしたい部分を明記する」「評価シートを公開する」ことで、ベンダーの創造性や強みを最大限に引き出す。

参考記事:RFP読解が提案を制する!プロジェクト初動はココが肝心!


よくあるご質問

Q1. RFPとRFIの違いは何ですか?

A1. RFP(Request for Proposal / 提案依頼書)はベンダーに具体的な提案と見積もりを求めるための文書です。プロジェクトの要件や制約(予算、納期など)を詳細に記載し、「課題解決の方法」と「実現にかかる費用」の提示を求めます。

RFI(Request for Information / 情報提供依頼書)はベンダーの一般的な情報や実績、得意分野、技術力などを広く集めるための予備的な文書です。RFPを作成する前に、市場調査やベンダー候補の絞り込みのために使われることが多いです。

参考記事:制作会社への依頼に不可欠なRFP(提案依頼書)の作成と活用法

Q2. RFP作成において、ターゲットユーザー(ペルソナ)はどの程度詳細に書く必要がありますか?

A2. ターゲットユーザーは、可能な限り具体的に記載することが望ましいです。

単に「一般消費者」や「ビジネスマン」ではなく、「30代後半でITリテラシーの高いビジネスパーソン」や「子育て中の夫婦」といったように、ペルソナ(年齢、性別、職業、抱える課題、Webサイトを利用する目的など)を設定して記載できると理想的です。

ターゲットが明確であるほど、デザインの方向性、コンテンツの表現方法、ユーザーインターフェース(UI)について、より質の高い戦略的な提案が可能になります。

おすすめテンプレート:カスタマージャーニー

Q3. RFPを作成する際、最も注意すべき点は何ですか?

A3. 最も注意すべき点は、「社内での目的と課題の共通認識」と「定量的なゴール設定」です。RFPは社内の目的をベンダーに伝える「翻訳書」のようなものです。社内で「何のために作るのか」「何を成功とするのか」が曖昧なままだと、相手にも課題の深さが伝わらず、発注者の真の課題解決に繋がらない、的外れな提案しか集まらなくなってしまいます。


あなたが本コラムを参考に、具体的かつ戦略的なRFPを作成できれば、プロジェクト開始後の手戻りや無駄な費用を大幅に削減できます。そして、何よりも、ビジネスゴール達成にコミットした、最高のパートナーと出会うことができるようになります。

Webサイト制作を成功させるために、納得のいくRFPの作成に取り組んでみてください。

とはいえ、Webサイトの立ち上げやリニューアルは、企業にとっては数年に1度の大掛かりなプロジェクトです。その責任者になるというのは、在職中にそうそうあるわけではありません。博報堂アイ・スタジオは設立25年の間に、数多くのWebサイトを立ち上げています。RFPによるコンペ参加はもちろんですが、RFPの作成支援も可能です。お気軽にお問い合わせください。

ご提供ソリューション:提案依頼書(RFP)作成支援

執筆者
鈴木 緑(プロデューサー)
Web黎明期の2004年に博報堂アイ・スタジオ入社。Flashバリバリなサイト制作を経て、UI/UXは大切だなとしみじみ感じる。
新入社員やインターン生はとても優秀で、娘もこんなふうに育ってほしいな、と思っている。