【ヤングカンヌとは】
フランス・カンヌで開催される世界最大規模の広告祭「カンヌライオンズ」内の30歳以下の若手クリエイターを対象とした公式コンペティション。
各国の代表となった2人1組のペアが現地で提示された課題に対し、24時間などの短時間でアイデアを作成し、世界一の座を競い合う。
非デザイナーでも、プリント部門にチャレンジできた理由
本題に入る前に、まず少しだけ自分の話をさせてください。
ヤングカンヌは2人1組のペアで挑戦するため、
自分がデザインができないなら、ペアはデザインができる人
自分が英語ができないなら、ペアは英語ができる人
といった形で自分にないスキルを補うことができるペアを見つけて組むのが定石だと思います。
今回受賞したプリント部門でいうと、【プランナー/コピーライター】 × 【アートディレクター】で組み、
プランナーがアイデアや言葉周りを、アートディレクターが表現面を担当する、という役割分担をすることが多いです。
一方の僕らはどうかというと、
まず僕はプロデューサー兼プランナーという肩書きで、普段はデータ分析やUXリサーチを通じて、デジタル上でのコミュニケーション戦略をプランニングしたり、その戦略をプロデューサーとして制作スタッフを統括して、クオリティー管理やコスト管理をしながら形にするところまで責任を持って推進しています。
相方の田畑はキャンペーン・マスコミュニケーション・企業タグラインなど、コピーを軸に企画を考えることを得意とするプランナーです。
つまり、僕たちは『デザイナー不在のプランナーコンビ』なんです。
実は僕と田畑は高校のダンス部の同級生で、卒業後もよく会うほど仲が良く、ある日の何気ない会話の中で「せっかく同じ広告業界で働いているんだし、やってみようよ!」と意気投合したことが、挑戦のきっかけになりました。
そんなノリと勢いでペアを組んだ僕らが、ヤングカンヌに挑戦する上で当然課題として浮き彫りになったのが、『専門スキルの不足』です。
ヤングカンヌに挑戦するときに求められるスキルのうち、「英語」に関しては幸いにも僕が幼少期をアメリカで過ごしていたこともありなんとかなったのですが、デザイナー不在の僕らにとって一番の課題となったのが『クラフト力(表現力)』でした。
プランニングについてはお互いに普段の業務でもやっているけど、デザインは未経験。
ただヤングカンヌでは、クラフト力も重要な評価指標のひとつです。当然これまでチャレンジする中でも、ビジュアル1枚勝負のプリント部門は、全部門の中で最も『クラフト力勝負』となるイメージだったため避けてきました。
そんな僕たちが今回なぜプリント部門にエントリーすることになったのか、
そしてなぜゴールドを獲得できたのか、そんな話を最初にしたいなと思います。
なぜプリント部門に?初めてエントリーしてみた理由
まず、なぜクラフト力が求められるプリント部門にエントリーしたか。
一番最初は、これまでもエントリー経験のある【PR部門】と【メディア部門】の2部門にエントリーする想定で考えてました。
ですが全部門共通の課題が出るヤングカンヌだからこそ、課題の深掘りやアイデア出しを行う過程で、
「これ、もしかしてビジュアル1枚で表現した方がいいんじゃない?」
という会話が二人の間で生まれました。
実はこういった会話は過去挑戦する中でもあったのですが、どうしても【0→1】で伝えたいことを表現するビジュアルを作っていくのは非デザイナーの自分にとってはハードルが高い。
ただ、今回出たアイデアは既にあるストックフォトの素材をベースに加工するビジュアル表現でした。
つまりは【0→1】ではなく、【1の見せ方を変えて、新しい視点を生み出す】というもの。
「それならなんとか作れるかも」
という気持ちと、
「ありものの素材を加工するだけでプリント部門で勝てるのか?」
という気持ちが入り混じった状態で課題の提出締切当日にプリント部門にエントリーすることを決心し、締切1時間前にデザインに着手しはじめ、ギリギリで1次予選のアイデアを提出しました。
プリント部門で求められる『クラフト力』とは?
提出から、しばらくして1次予選通過の連絡がメールで来ました。
正直、アイデア自体の自信はありましたが、「まさかこれまで避けていたプリント部門が通るとは」という驚きが大きかったのを覚えています。
そこから、2次審査に取り組む前に、1次審査で何が評価されたのかを自分たちなりに考える中で、ひとつ共通見解として思ったこと。
それは
『クラフト力=切り口力』
だということ。
つまりヤングカンヌで求められているクラフト力の定義は、0→1でなにか独創的なデザインを生み出したり、複雑な作り込みができるデザイン力ではなく、
『課題を意外な切り口から捉え直して、人がアクションを起こしたくなる表現にする力』
だということ。
もちろん、デザイン力が重要じゃないということではないです。
フォントの大きさやモチーフ選び、コピーの配置、色味など...
全てにきちんと意図を持たせた上で、パッと見てすぐに伝えたいメッセージが理解できるようなデザイン力も、カンヌで勝つためにはとても重要な要素のひとつです。
しかし、これらは提案資料作りにおいても同じように心掛けること。
普段から提案資料においても、一番伝えたいメッセージのフォントサイズを大きくしたり、色やフォントを変えたり、視線誘導に合わせたレイアウトを意識して作成するようにしているからこそ、『そのようなデザイン力』に対しては、むしろ自信がありました。
だからこそ非デザイナーでも、プリント部門において勝負できたんだと思います。
実際にどんなアイデアを作ったの?
「じゃあ、実際どんな課題でどんな作品を出したの?」と気になると思うので、続いては、ゴールドを受賞した作品を解説していきたいなと思います。
・・・とその前に、まずは今年からプリント部門の審査フローに変更があったので説明します。
例年プリント部門では、プレゼンなし、説明資料なしのビジュアル1枚のみ提出し、それをもとに日本代表を決める審査フローでしたが、2026年からプリント部門に2次審査が加わりました。
要は1次審査と2次審査で異なる課題が出され、計2作品を提出するわけです。
今年の場合は1次は社会課題、2次は産業課題と2つの異なる種類の課題が出題されました。
(プレゼンや説明資料がないのは、例年のままです)

審査員コメントにも記載がありますが、2次審査を追加した意図は『思考の幅』と『ポテンシャル』を見ることにあるので、今後プリント部門にチャレンジする方は、1次審査と2次審査において以下の2点を意識しながら取り組むといいと思います。
(参照:https://www.canneslionsjapan.com/youngcompetitions/results/)
【安定感】1次と2次で一貫してブラさないポイントはなにか
【幅】あえて、1次と2次で変える(幅を見せる)ポイントはどこか
僕らが提出したアイデアも、何をブラさないようにして、何を意図的に変えたのか、この後話したいと思います。
【1次審査提出作品:Fit everyone into a mold.】
1次審査の課題は、
「障がいのある人とない人が共に働く職場での雇用を促進する見開き広告の作成」でした。
自分たちにとっても身近な「職場」がテーマであることを受け、実際に働いてる中でヒントを探している際に
「最近はリモート会議が多くて、しかも上半身しか映らないから話していた相手が実は車椅子だったとしても気が付かないよね」という話が上がりました。
事実、身体的なハンディキャップがあっても、業務上のスキルは障がいのない人と変わらないケースは多く、リモート会議を通じて、その人が障がいのある人かない人か判断するのは難しいと思います。
その一方で現実にはスキルに差がなかったとしても、「障がい者」というレッテル(バイアス)により、本来の能力以下の業務しか与えられなかったり、雇用形態や給与などに格差が生まれているというファクトに着目しました。
「それなら、オンライン会議の画面の枠の中こそが障がいの有無に関係なく、誰もが最もフラットにパフォーマンスを発揮できる環境なのでは?」と会話が自然と広がっていきました。
そしてこれが僕らの1次審査のアイデアの『切り口』になりました。
提出した作品のタイトルは、【Fit everyone into a mold.】
日本語でいうと、「全員を型にはめろ」というものです。

「Fit into a mold.(型にはめる)」というと、一般的には没個性を強いるようなネガティブな慣用句だと思います。
しかし、この「型」をリモート会議の「フレーム(型)」とビジュアルで組み合わせ、「Fit everyone into a mold.(全員を型にはめろ)」というコピーで訴求することでターゲットである雇用者に対して、身体的な差異というノイズを消し、「障がいのあるなしに関係なく、純粋な“個”の可能性だけをみよう」と対等な雇用を訴求しました。
サブコピーの「Unmute your potential equally.(あなたの可能性を等しく解放せよ)」では、会議のミュート解除と、社会的に封じられてきた可能性の解放を掛け合わせています。
また細かいポイントですが、車椅子の女性のフレームだけ、「発言中(Unmute状態)」を表す緑になっていることで、このメッセージが身体的なハンディキャップを抱えている方々向けのものになっていることも表現しました。
結果はご存知のとおり、無事通過になったのですが、その際に審査員の方々からはFBとして、リモート会議という現代の象徴的なツールを使った点が評価された一方で、「ブリーフを読んでいないユーザーからすると、なにを目的にした広告なのかがわかりづらい」という指摘を受けました。
確かにできるだけシンプルにしようとするあまり、要素を削りすぎていた部分があったので、シンプルであることはブラさずに、きちんとなにを目的にした広告なのかが伝わることを2次審査では心がけて取り組むようにしました。
【2次審査提出作品:Don’t be a Silent Killer.】
続いて、2次審査で提出した作品の解説をします。
2次審査の課題では「EV導入の認知を高め、持続可能な未来におけるEVの役割を伝える見開き広告の作成」という産業的問題に対するアイデアが求められました。
課題に対して、まず車に関連するものをとにかく出し合って、そこからアイデアのヒントがないかブレスト的に議論を繰り返すところからスタートしました。
このブレストのときに意識したのは、「今までにない表現で、人が本当に動きそうな訴求かどうか」です。
なぜなら、EVの訴求において、「環境性」や「静寂性」などのメリットは定番の謳い文句としてあらゆるメディアで既に発信されているにも関わらず、ガソリン車を使い続ける人が多い現状を打破するためには、今までと同じような表面的なメリット訴求よりも、多少恐怖訴求になったとしても、今までとは違う表現で、人の感情を揺らすような訴求にしないといけないとは思ったからです。
そんな中で生まれた「ガソリン車の給油ノズルって銃っぽいよね」という会話が、2次審査における僕らの『切り口』の火種となりました。
最初に注目したのが「ガソリン車の給油ノズル」と「銃」は形状が似てることに加えて、人差し指で引き金を引くというアクションも似ているという点。
ただこれをそのまま「形状やアクションが似てるよね」と表現するだけだと、見た人の読後感として「確かに似ているね」だけで終わってしまうので、次にそこに何かしらプラスαの意味を与えることができるようなファクトを探していきました。
そのときに、ガソリン車の利用を通じて起きる大気汚染によって年間700万人が命を落としている(交通事故による死亡者数よりも多い)こと、さらにはWHOが大気汚染のことを、目に見えない間に健康を蝕み命に影響を与えることから、別名で「Silent killer」と呼んでいるファクトを見つけたんです。
(参照:https://www.who.int/news-room/spotlight/the-silentkillers)
それも踏まえて、以下のようなことを端的に伝えられるアイデアを作ろうとしました。
ガソリン車の給油ノズルと銃は、形状や引き金のアクションに加えて、結果として人の命を奪うという機能までもが類似している
あなたもガソリン車の利用(給油ノズルの引き金を引くというアクション)を通じて、知らぬ間に人の命を奪うことに加担しているかもしれない
提出した作品のタイトルは、「Don’t be a Silent Killer. 」です。

伝えたいことを最もシンプルに且つわかりやすく伝えるために、給油ノズルを握る手の影を、拳銃を握るシルエットに変化させて、【形状・アクション・機能】の3つの類似性を直感的に表現しました。
コピーの「Don’t be a Silent Killer.(サイレントキラーにならないで)」は、大気汚染の医学的通称(Silent Killer)と、暗殺者(Silent Killer)を掛け合わせたダブルミーニングになっており、ガソリン車を使い続けることが、知らぬ間に誰かの命を奪う行為に加担していることを示唆しています。
こちらも細かなポイントですが、給油ノズルを持っている人の手の角度や袖口をスーツにしたこと、背景を暗闇の中でスポットライトが当てられているようにしたことで、「暗殺者感」をうまく表現できたなと我ながら思ってます。笑
ただこのアイデアの最大のポイントは、「アクションへの刷り込み」にあります。
実際にガソリン車を使い続ける限り、当然ガソリンスタンドで定期的に給油を行うわけですが、給油のために引き金を引くというアクションが、この広告を思い出すきっかけになり、継続的にドキッとするような感情がフラッシュバックするように体験設計できたなと思います。
1次と2次を通じての「安定感」と「幅」
前述の通り、2次審査では1次審査からブラさずに徹底した要素(=安定感のアピール)と、あえて変えた要素(=ポテンシャルの幅のアピール)があります。
まず、1次と2次でブラさなかった要素は、「シンプルでわかりやすいビジュアル」と「アクションを促すコピー」です。
<シンプルでわかりやすいビジュアル>
例年の傾向としても、予選を通過するアイデアはシンプルなビジュアルと短いコピーで、伝えたいことがスッと入ってくるわかりやすさがあります。
これは一見簡単そうですが、実はかなり難しいです。
なぜならプリント部門はプレゼンも説明資料の提出もできないから。
先ほど1次も2次も「こんなファクトを見つけて〜」「こんなところに注目して〜」なんて話をしていましたが、他部門では、これを10枚の提案資料且つプレゼンテーションで説明した上で、「だからこのアイデアなんです。」とストーリーラインを構築できる一方、プリント部門ではそれができません。
だからこそ、ついついいろいろと盛り込んだ説明的なビジュアルになりがちなんです。
僕らもアイデアを出す上で、「テキストで説明して初めて意図を理解できるアイデアであれば、それはプリント部門には向いていないアイデア」として、シンプルにわかりやすく表現できるアイデアを選択するようにしていました。
とはいえ、削りすぎても1次審査のFBであったように、「何を目的にした広告かわからない」と本末転倒になってしまうので、最初は要素が多くなってしまってもいいので、そこから『引き算』していくといいと思います。
正直プリント部門において、この『引き算』はすごく勇気がいります。
「もしかしたらこれを抜いたら意図が伝わらないかも」とついつい考えてしまいますが、逆に要素が多すぎると伝えたいことがぼやけてしまいがちです。
だからこそ「自分たちが一番伝えたいコアメッセージはなにか」をペアと共通見解で持っておくと、引き算する上でも引いていい要素かダメな要素かの判断がつきやすいと思います。
<アクションを促すコピー>
もうひとつブラさない要素として考えていたのが、「見た人にどんな行動を取ってほしいか」まで伝えきること。
PR部門などであれば、「そのプロモーションで人がどう動くのか」は当然みんな考えますが、プリント部門はビジュアル1枚ゆえに案外ここが忘れられがちな気がしています。
ですがプリント部門もアウトプットが違うだけで、他部門同様それを見た人が本当に行動を起こすのかという視点はとても重要です。
だからこそ、僕らはメインのコピーを動詞にするようにしていました。
「Fit everyone into a mold.(全員を型にはめろ。)」
「Don’t be a Silent Killer. (サイレントキラーにならないで。)」
のように、見た人に対して、どうして欲しいのか / どうなって欲しいのかを明確にするようなコピーにすることで、ビジュアル1枚だとしても起こしたい行動変容を説明的になりすぎることなく、表現しました。
結果的に審査員の方々からも、変な余白を残さずにきちんと伝えたいことを言い切る『断定力』をゴールドに選ばれた要因のひとつとして評価していただいたので、改めてここは重要だなと思ってます。
今後プリント部門にチャレンジする際に「コピーを必ず動詞にすべき」ってわけではないですが、見た人にどうして欲しいのか / どうなって欲しいのかまで考えたビジュアルになるようにはしたほうがいいかと思います!
<あえて1次と2次で『幅』を出した要素>
審査フローの箇所でも触れさせていただきましたが、2次審査ではポテンシャルや思考の幅をアピールするために意図的にブラした要素が、主に3つあります。
1.訴求手法
1次審査では、オンライン会議を用いた風刺的な手法で訴求しましたが、2次審査では恐怖訴求的な手法にしました。
2.読後感
読後感として、1次審査では「確かに、身体的なハンディキャップとスキルは関係ないよな」という気づきや共感を与えるものなのに対して、2次審査では「自分も問題に加担してしまっている」という罪悪感や危機感を与えるものにしました。
3.表現
上の2つとは少し系統が違いますが、非デザイナーとはいえ、審査員からはアートディレクターとしてのスキルの幅も求められると思ったので、1次審査では既存のストックフォトを加工してビジュアルを作ったのに対して、2次審査では既存のストックフォトの素材を加工したり組み合わせながら、0からビジュアルの制作を行いました。
これについては非デザイナーの自分にとってチャレンジングなことではありましたが、表現するものがシンプル故になんとかなったという感じです...笑

ヤングカンヌで勝てるアイデアってどんなアイデア?
ヤングカンヌにチャレンジして、ゴールドを獲得するに至るまでに個人的に感じた、
「部門関係なく、ヤングカンヌで勝てるアイデアってどんなアイデアか」という話をしたいなと思います。
細かいところも含めるとたくさんありますが、その中でも特に感じた3つのポイントに絞って話します。
❶:人が動きそうな『本音感』へアプローチしているアイデア
ヤングカンヌに限らず、ほとんどの企画アイデアにおいて、「本当に人が動きそうか」というのは重要です。
逆にいくら奇抜なアイデアだとしても、結局人が動かなさそうと判断されれば、課題解決につながらないアイデアとして評価されてしまいます。
「じゃあ、本当に人が動きそうなアイデアってなんなんだ」って話だと思うのですが、個人的には人の『生っぽい感情』にアプローチするアイデアだと思います。

わかりやすいように、2次審査のアイデアを例にあげると、EV車を訴求する際に、
「ガソリン車は環境汚染につながるので、EV車を使いましょう!」というような正論を伝えるよりも、「あなたの何気ない行動が、人の命を奪ってます」と伝えて、人の『罪悪感』という少し生々しい感情にアプローチする方が実際動きそうだよねってことです。
このように、表面上ではなく、深層にありそうな思わず言われてドキッとする感情(=本音感)にアプローチしているアイデアは強いと思います。
❷:周りと被らない絶妙な『距離感』のアイデア
これまでも『アイデアのシンプルさ』については、度々触れてきたのですが、シンプルすぎるアイデアというのは周りと被りがちです。
ヤングカンヌにおいては、近年150組近くが各部門にエントリーしてくるので、「アイデア被り」というのは、それだけで予選落ちするくらい、かなり致命的。一方で、他と差別化を図ろうと複雑にしすぎると伝わらないというジレンマがあります。
ヤングカンヌで受賞しているアイデアをみると、共通して、この『シンプル』と『複雑』の間の絶妙な距離感にアイデアがあります。
では、そのような『絶妙な距離感のアイデア』にするためにはどうしたらいいのか。
結論、僕の場合は課題からアイデアに至るまでの過程で1カ所だけジャンプさせることを意識していました。
どういうことかというと、課題からアイデアに至るまでに、そこに紐づく『ファクト』や、そのファクトをどのような視点で捉えるかという『着眼点』を探すと思うのですが、この【課題→ファクト→着眼点→アイデア】を一連で結んだ際のどこかしら1カ所をジャンプさせるということです。

ジャンプのさせ方として、例えばですが
他の人が見つけないような課題に関連した意外な【ファクト】
思いがけない視点からその課題/ファクトを捉えた【着眼点】
高いクリエイティブ力 / 攻めた【表現】
など、どこかしらで他の人とは違うなにかを見つけて、そこをコアにしつつ、他はシンプルにしてあげると
『他と違うけど、シンプルでわかりやすい絶妙な距離感のアイデア』になるかなと思ってます。
1次審査のアイデアを例にあげるなら、
「身体に障がいのある方はスキルが障害のない人と変わらないのに、不遇な待遇を受けている」というファクトは、正直課題からかなり近い距離感のファクト(=他もすぐに見つけられるファクト)だと思います。
ただし、そのファクトを「オンライン会議の枠の中が最もフラットな環境である」という着眼点でジャンプさせたからこそ、他と差別化を図ったアイデアになったんじゃないかなと思います。
ちなみに先ほど「1カ所だけ」と言いましたが、必ずしも1カ所に限る必要はないです。
最終的には、この【課題→ファクト→着眼点→アイデア】を一連で結んだ際の総合距離が短ければ短いほど、周りと被るし、長ければ長いほど伝わらないので、各要素がどのくらいジャンプしてるかの具合によっては、むしろファクトと表現など、2カ所でジャンプさせるのもありだと思います。
プリント部門に関していえば、再三述べているようにプレゼンなしのビジュアル1枚評価なので、他部門よりもシンプル寄りにする必要があるので、そこだけ気を付けたほうがいいかなと思います。

とはいえ、実際にこの距離感は具体的にどのくらいかが正解という目安があるわけではないので、周りにひとことで説明できて、且つ面白いと思ってもらえるような企画(プリント部門の場合は、説明なしでも面白いと思ってもらえるような企画)が、いわゆる絶妙な距離感にあるアイデアと言えるんじゃないかなと思います。
❸:全ての要素に「明確な意図」があるアイデア
「なぜ、ここにコピーがあるのか」
「なぜ、この大きさなのか」
「なぜ、この色なのか」
過去プリント部門で受賞したアイデアを見てみると、単にモチーフ選びや言葉選びだけでなく、
配置やサイズ、カラー全てに対して、なぜそのようにしたかまで制作者の意図が理解できるものが多いなと思います。
僕らも今回ビジュアルを作るときに、ちゃんと全部の要素に対して理由を説明できるクリエイティブにしようと心がけていました。
例えば、2次審査のメインコピー”Don’t be a Silent Killer. ”は、影の銃口の先に配置し、少し文字間を詰めることで弾丸のように見えるように意図的にデザインしました。
さらに、「Silent Killer」という単語は聞き馴染みのない方も多いと思うので、そこで見た人に「?」を作って、リードコピーに視線を誘導するようにしています。
リードコピーでは日本語訳すると「ガソリン車の使用はサイレントキラーと呼ばれる大気汚染を引き起こし、年間700万人の命を奪っています。ガソリンの引き金を引く代わりに、電気自動車を選ぶことで環境と人々を救う引き金となりましょう。」と書いているのですが、その横に今回クライアントとなっているE-Mobility Europeのロゴを配置することで、それがきちんとE-Mobility Europeからのメッセージであることも表現しました。

これはプリント部門に限った話ではなく、他部門においても
「なぜ、その場所なのか」
「なぜ、その時期なのか」
「なぜ、その企業なのか」
全ての提案要素に対して、「なぜ?」と聞かれたときに回答できるように、意図を持っておくのが大事だなと思います。
最後に
かなりの長尺となってしまいましたが、まずはここまで読んでくださりありがとうございます...!
いろいろと書きましたが、あくまで僕個人が感じたことであって、ここに記載した内容が絶対というわけではないです。手法やアイデアに正解はないので、僕自身も6月の本戦に向けてもっと勉強していきたいと思います...!








