ポイント1:WebサイトのUXデザインは「全体体験の一部」として捉える
デザインの依頼が来たとき、つい「このWebサイトをどう作るか」だけに集中してしまうこと、ありませんか?
ワイヤーフレームを引いて、デザインを作って、コーディングをして……と、Webサイト制作そのものに意識が向いてしまう。
でも、ユーザーの体験は、Webサイトを見る前から始まっていて、見た後も続いているんです。
UXデザインを考える上でもっとも重要なのは、Webサイトはあくまで全体の体験の中の一部という捉え方です。

世のUX(広義のUX)とは、ユーザーの生活全体における体験を指します。ユーザーがWebサイトにアクセスする「前」から体験は始まっており、どのような人がどのような課題を抱え、Webサイトに訪れるのか、ユーザー(ペルソナ)のゴールは何かという前提がWebサイトとの「接点」の前段階にあります。Webサイトに触れてから、再度Webサイトに戻ってくるまでの「間」(オフラインの体験)やその「後」も含まれます。
一方、WebサイトのUX(狭義のUX)とは、ユーザーがWebサイトにアクセスしてからの体験を指します。目的を持ってWebサイトに訪れ、画面遷移をたどり、その目的を達成するための一連のフローで、Webサイト内で完結するフローです。
WebサイトのUXだけでは体験全体はよくならない
いくらWebサイトのUX(狭義のUX)だけをよくしても、前後の体験によってユーザーの体験全体としては悪くなってしまうことがあります。
ECサイトを例に考えてみましょう。
ユーザーの行動全体(広義のUX):商品を知るきっかけ、購入前の期待、購入後の満足度、商品が届いてからの体験、その後の生活への影響など
WebサイトにおけるUX(狭義のUX):Webサイトが見やすいか、商品を探しやすいか、購入手続きがスムーズかなど
世のUXは、人々の生活全体における体験を捉えるものですが、WebサイトにおけるUXはユーザーの行動全体から見ると、ほんの一部に過ぎません。ユーザーはWebサイトを見る前も、見た後にも、さまざま思考や行動をしています。
だからこそ、WebサイトのUXだけを良くしても、商品が届くのが遅かったり、商品自体に不満があれば、ユーザーの体験全体としては悪くなってしまうのです。
広義のUXを理解することで新しいビジネスアイデアが生まれる
ユーザーが何に困り、何を達成したいのかを理解(広義のUXを考える)することで、ビジネスにつながる新たなアイデアが生まれる可能性があります。
たとえば洋服購入の動機は、単に洋服そのものを手に入れることだけでなく、ECサイト訪問後の課題解決にある場合もあります。
大学生Aさんの場合を考えてみましょう。「インフルエンサーの〇〇ちゃんみたいになりたい」と思ったとき、欲しい服が1万円もする。それを買うためには、バイトに〇回入らないと買えない。でも、バイトのシフトはどうしよう?という悩みが生まれます。

この一連の思考プロセスを理解すると、単に「商品を安く売る」だけでなく、「支払い方法の工夫」という解決策が見えてきます。このような背景から、分割払いや後払いサービスといった新しいビジネスアイデアが生まれる可能性もあるのです。
ユーザーを想像し、ECサイトとは直接関係のない事柄からもヒントを得る視点、つまり生活者が何に困り、何を達成したいのかを理解することで、競合との差別化や新しい価値提案につながります。
ポイント2:「それで?」となるリサーチをしない
Webサイト制作でリサーチをする機会って、実は少ないですよね。利用者が多いサービスや身近にペルソナがいるような案件など、限られた場面でしか実施しないことが多いと思います。
でも、もしリサーチの機会があったとき、「インタビューはしたけど、結局何がわかったんだっけ?」「次にどうすればいいかわからない」となってしまったら、せっかくの時間とコストが無駄になってしまいます。
リサーチの後には何をすべきか、といったことを定量的に説明でき、ネクストアクションにつなげ、関係者全員が納得できる状態を作り出すことが非常に重要です。
「リサーチ」には、大きく「探索型」と「検証型」の2つの手法があります。

探索型:潜在的な課題やニーズを発見し、仮説立てのヒントを得ることを目的とします。
検証型:すでに立てた仮説の正しさを確かめることを目的とします。
目的やフェーズに合わせて適切なリサーチ手法を選択することで、効果的に情報を活用することができます。
リサーチを成功させるための「リサーチ設計書」の作り方
では、実際にリサーチを行う際にはなにを準備したらよいのでしょうか。インタビューやヒアリングを行うためには、事前に質問項目や流れを整理した「リサーチ設計書」が必要になります。
リサーチ設計書には、以下の4つの項目が含まれていないといけません。
リサーチ目的(具体的な目指すべき姿)
前提と背景(リサーチの前後の文脈を理解するため)
知りたいこと
質問
リサーチの目的は抽象的になりがちなので、具体的に「状態目標(目指すべき姿)」として設定しましょう。
✖️ 「ユーザーのことをもっと知りたいため」「ターゲットの行動を理解するため」
⭕️ 「ユーザーが抱える課題・不満点を、根本原因と合わせて5つ以上特定できている」
今回は、採用サイトを制作する際の「課題の探索」を目的としたリサーチを例に考えてみましょう。実際に入社した社員にインタビューする機会があったとします。このとき、ただ漠然と「採用サイトで知りたかった情報はありますか?」と聞くだけでは、具体的なWebサイトサイト改善につながりにくくなる可能性があります。
リサーチ目的 | 入社後の実態とサイト上の情報の差分を明確化し、求職者の誤解ポイントとその原因を特定した上で、エンゲージメントを高めるための改善案を優先度付きで提示できている状態。 |
前提と背景 | 採用サイトのリニューアルを検討しており、入社後のミスマッチが課題となっている。ギャップを特定し、ミスマッチの原因を明らかにすることで、効果的な情報提供と期待値調整に役立てる。 |
知りたいこと | ・採用サイトの情報が、入社後の実態とどのように異なっているのか知りたい。 ・ギャップが求職者のどのような期待から生じているのかを知りたい。 |
質問 | 質問:当社の採用サイトを見た際、企業文化、仕事内容、人間関係、ワークライフバランスなどについて、具体的にどのような期待を抱きましたか? 質問の意図:求職者が採用サイトから形成する具体的な期待値を把握し、入社後のギャップが生じる可能性のある領域を特定する。 質問:入社後、採用サイトで抱いた期待と実際に経験したこととの間に、どのようなギャップを感じましたか?特に、どのような点で「想像と違った」と感じましたか? 質問:当社の採用サイトで、特に「リアル」だと感じた情報やコンテンツはありましたか?それはどのようなものでしたか? |
インタビューやヒアリングを通じて、「こうだと思っていたが実際は違った」という新たな発見や、「このような発言の背景には、このような行動があるのではないか」といった論理構造の構築が可能になります。そうして、得られた情報から、Webサイトの課題とその改善方法が特定できれば、明確な根拠に基づいた説得力のある説明が行えるようになります。
実際の業務では、時間の制約もあり、ここまで丁寧にリサーチできないことも多いと思います。でも、この「リサーチ設計書」の考え方を知っているだけで、たとえ簡易的なヒアリングでも、より意味のある情報を引き出せるようになります。
リサーチは「社会課題の解決」のためにおこなうもの
リサーチを行うのはプロジェクトの目的を達成するためであり、プロジェクトの目的は事業の数値目標や目標達成に貢献することです。そして、事業が存在するのは会社の利益を追求するためであり、会社は社会貢献のために存在します。

このように、リサーチは、会社のミッション、社会貢献や社会でのあり方、さらにはそのミッション達成によってもたらされる社会の変容まで、直線的(リニア)につながっています。
このつながりを理解していないと、経営層から「なぜそのプロジェクトでリサーチをしているのか?」という問いがあった際に、明確に答えることができません。だからこそ、デザイナーにもこうした全体像を見通す視点が必要不可欠なのです。
ポイント3:ペルソナは作るなら徹底的に。作ることを目的にしない
せっかく作ったペルソナ、その後の制作段階で判断に迷ったときに見返していますか?
「たしかペルソナ作ったよな……でもどこだっけ」となっていませんか?
ペルソナは作ること自体を目的にしてはいけません。ペルソナを作る目的は、大きく分けて2つあります。
機能開発のため:属性・ペイン・ゴールを定義し、どんな機能が必要かを検討する
チーム内で共通認識を持つため:メンバー全員が同じユーザー像を想像できるようにする
ペルソナは、あくまで思考の整理や情報伝達をするための手段です。作るなら徹底的に、作らないなら作らない。
ペルソナの作り方①:大まかな「セグメント」を決める
まず、ターゲットとなる層を大まかに絞り込みます。
すべての人をターゲットにすることはできないので、年齢、性別、職業、ライフスタイルなどで一定の層に絞り込みます。この絞り込んだ層を「セグメント」と呼びます。
▼ 絞り込むときの視点:

デモグラフィック:性別、年齢、居住地域、所得、職業、家族構成など
サイコグラフィック:ライフスタイル、趣味、価値観、パーソナリティなど
ジオグラフィック:住居、勤務地、位置情報など
ビヘイビアル:アクセス履歴、購買履歴、Webサイトでの行動など
例: 「20代〜30代、都市部在住、ECサイトで月に1回以上買い物をする女性」
ペルソナの作り方②:セグメント内を「ペイン(課題)」で区切る
ここがもっとも重要です。同じセグメント内でも、抱えている課題(ペイン)が違えば、必要なデザインもまったく違います。
たとえば、同じ「30代女性」でも、課題で区切るとまったく異なるアプローチが必要になります。
例:ECサイトの場合
「節約のために安い商品を探している人」 → 比較機能、セール情報、口コミの充実が重要
「自分へのご褒美として質の良いものを買いたい人」 → 商品のストーリー、高級感のあるビジュアル、ギフトラッピングが重要
このように、抱えている課題や価値観でセグメントを分けることで、より実用性の高いペルソナが作れます。
ペルソナの作り方③:ペルソナを具体的に作り込む
ステップ2で分けたセグメントごとに、具体的なペルソナを作ります。
▼ ペルソナに必要な3要素:

属性:どんな人?(年齢、職業、ライフスタイルなど)
ペイン(課題):何に困っている?何を解決したい?
ゴール:その課題が解決されたら、どうなりたい?
属性については、いつも必要というわけではありませんが、リサーチの結果、想定外のデータ(外れ値)が出た時に、その理由を探す手がかりになることがあります。たとえば、その方の両親の出身国が異なり、育った文化や価値観が異なるために意見が違う、といった場合です。このように、後で困らないように記録しておくのがおすすめです。
重要なのは、具体的な数字、頻度、行動パターンを入れること。
以下にペルソナづくりでやりがちなよくない例を紹介します。
人によって解釈が異なる表現:「ずぼらな〇〇さん」「出費が嵩む」では、人によって解釈が異なってしまう
なんとなくのイメージで推測:「ずぼらだから動画コンテンツが好きだろう」とファクトなしに決めつける
作ることが目的化:ペルソナ作りに時間をかけすぎて、肝心の情報設計やデザインに進めない
ペルソナを作るなら、インタビューやリサーチから得られた具体的な数字、頻度、行動パターンを記述します。そして、すべての記述に「なぜそう言えるのか?」という根拠を持ちましょう。
✖️ 抽象的な例: 「出費が嵩むため貯金ができない」
⭕ 具体的な例: 「月に6回、リフレッシュのために一人でカフェに行っていて、出費が1.5万円かかるため、なかなか貯金ができない」
こうやって具体的に書くことで、チーム全員が同じユーザー像を想像でき、「じゃあ、この人にはどんな情報が必要か?」が明確になります。
ゴール設定のポイントは、Webサイト制作者の視点ではなく、ペルソナ(ユーザー)がWebサイトを通じて達成したい「その先の生活における目的」に焦点を当てることが大切です。
ペルソナは何度も見直すべき!!
一度作ったペルソナを、ずっと使い続ける必要はありません。
サービスの成長に合わせてターゲットが変わったり、ユーザーの行動パターンが変化することもあります。運用しながら見えてきた課題やデータをもとに、必要に応じてペルソナを見直していくことが大切です。
自分たちで設定したペルソナがあれば、「このペルソナならこうするだろう」という仮説が生まれやすくなります。仮説を立て、実際のユーザーでテストを行い、そこから結論を導き出し、その結果に基づいてペルソナをさらにブラッシュアップしていくのです。
ペルソナは、新しいアイデアの創出、関係者間の合意形成、そして次の段階への移行を促進する基盤となります。
ポイント4:CJMは「現状と理想のギャップ」を可視化するツール
カスタマージャーニーマップ(CJM)もペルソナと同様に、本質は「作ること」ではなく、「現状(ASIS)」と「理想(TOBE)」のギャップを明確にし、チーム全体で課題を共有することにあります。
CJMの使い方:「ASIS」と「TOBE」のギャップを見る
ユーザーの一連の行動を「現状(ASIS)」と「理想(TOBE)」の二軸で考えます。課題解決やソリューション(解決策)を作るということは、この「現状」と「未来」の間の差分(ギャップ)を見ていることになります。
具体例を見てみましょう。たとえば、節約志向のユーザーをターゲットにしたECサイトの場合、以下のようなカスタマージャーニーマップを作成できます。

このマップを見ると、各フェーズで以下のようなギャップが見えてきます。
認知段階:
現状 | 理想 | 介入施策 |
|---|---|---|
節約情報が多すぎて、本当に信頼できる情報を見つけるのが難しい | ECサイトを信頼できる情報源として認知し、節約志向のユーザーにとって「賢い選択肢」になる | 【SEO対策】「節約術」「高コスパ家電」「買ってよかったもの(日用品)」などのキーワードで上位表示 |
検討・比較段階:
現状 | 理想 | 介入施策 |
|---|---|---|
他のWebサイトにも同じような価格の商品があり、どれがいいのか選べない | 価格だけでなく、保証やサポートも含めて、このECサイトが一番賢い選択だと確信できる | 【安心の保証・返品ポリシー】長期保証、30日間返品無料など、購入後の不安を解消する情報提供 |
課題には具体的なものと内面的なもの(心理的なもの)があります。CJMでは、心理的変容だけでなく、意識変容、態度変容、行動変容といったユーザーの変化の度合いを言語化することが重要です。これにより、ユーザーの思考や行動がつながっている状態をマップ上で明確に表現でき、情報設計やデザインをするためのヒントを得ることができます。
人の行動を変えるためには、まず根本的な考え方や感情に変化がなければならず(意識変容)、それによって態度や意識が変わり(態度変容)、最終的に行動が変わる(行動変容)必要があります。
現状の課題は調査やインタビューで把握し、理想の未来は自ら描きます。ユーザーにとって、現状の課題が解決されることがよい状態であり、ジャーニーマップを見ながら、その理想と現状とのギャップをどう埋めるかを議論することが重要です。
ユーザー視点で考える
CJMを作るとき、「自分はこう思う」ではなく、「ユーザーにとってはどうなのか?」と考えることが非常に大切です。
自分にとって使いやすいものが、他のユーザーにもそうだとは限りません。だからこそ、ユーザーの立場になって考え、それに合わせて検討していく必要があります。
ポイント5:シナリオで「解像度」を上げる
ペルソナやCJMを作ったとき、「なんとなく全体像は見えたけど、実際にデザインするとき、これをどう使えばいいんだろう?」と思ったこと、ありませんか?
マップを見ても、「で、このページにどんなコンテンツを置けばいいの?」が具体的に見えてこないんです。
そんなときに役立つのがシナリオです。ペルソナやCJMよりも、もっと具体的に「ユーザーが何をして、何を感じて、どう行動するか」を描くことで、ユーザーに最適化した情報設計やデザインができるようになります。
シナリオ法とは
映画のあらすじだけ読んでも感動は伝わりませんが、実際に映画を観れば、その感動がリアルに伝わってきますよね。これが「解像度が上がる」ということです。
ペルソナやCJMは映画のあらすじ。シナリオは、登場人物の感情や行動が具体的な「物語」として描かれるため、ユーザーのニーズや課題がより深く、鮮明に見えてきます。
ユーザー理解を深めるための3つのシナリオ
ユーザー理解を深めるためのシナリオには、大きく分けて3つの段階があります。

バリューシナリオ(WHY):「なぜ」行動するのか
・ユーザーがWebサイトに訪れる理由や叶えたいことアクティビティシナリオ(WHAT):「何」をやるのか
・叶えたいことを実現するためのユーザーの状況と行動インタラクションシナリオ(HOW):それを「どのように」行うのか
・特定の行動を実現するためにユーザーが行う具体的な操作
映画を観終えると、登場人物が誰で何をしたのかを1分程度で説明できますよね。
これと同じように、N=1(一人)のユーザーの行動を、まるで映画を観るかのように全て把握できれば、最適なデザインを生み出すことが可能になります。ユーザーがサービスやWebサイトと接するあらゆる瞬間を、非常に高い解像度で具体的に想像できるようになるからです。
特に、ユーザーがWebサイトとどう触れ合うか(インタラクションレイヤー)がはっきりすれば、まるで映画のワンシーンを思い通りに作れるように、具体的な操作の流れをデザインできるようになります。
情報がバラバラに複数存在していると覚えにくいものですが、点と点をつなげて一本の線になったストーリーは、ユーザーの行動を物語として理解でき、記憶に定着しやすくなります。
シナリオ作成のポイント

シナリオは、これまでに作成したペルソナやCJMの間を埋める形で作成します。シナリオには、バリュー(WHY)、アクティビティ(WHAT)、インタラクション(HOW)の3つの要素に加え、ユーザーがデザインを介して「こういうインプットをしたら、こういうアウトプットが返ってくる」というアクションに対する効果、つまり「タスク」も盛り込むとよいでしょう。
デザインにおいては、入力フォームや画面変化など、ユーザーとのインタラクションに関わる部分を考慮しながら、ユーザーがどのようなタスクをこなしていくのかを具体的にイメージしながら記述していくことが重要です。
シナリオ作成においては、よい点に着目するだけでなく、潜在的な問題点や「落とし穴」となる部分に意識を向けていくと、より効果的なストーリーを描くことができます。
ポイント6:情報設計は「ユーザーとゴールをつなぐ設計図」
これまでに作成したペルソナ、CJM、シナリオ。それらはすべて、ユーザーの課題とゴールを明確にするためのものでした。
情報設計は、その上流工程で明らかになったユーザーの課題を、実際のWebサイト上でどのように解決するかを具体的に設計する工程です。つまり、ユーザーが抱える課題と、到達したいゴールをつなぐ「設計図」を描くことが、情報設計の本質なのです。
上流工程を情報設計につなげる3つのステップ
ステップ1:ペルソナの行動特性から、必要な機能・コンテンツリストを作成
「節約志向で、トレンドよりもコスパ重視の30代派遣社員 田中さん」の場合
安くていいものを買いたい → 比較リスト機能とセール・クーポン情報表示
買って後悔したくない → 商品詳細ページや、正直なレビューを掲載する機能
余裕があるときに支払いをしたい → 後払い決済やクレジットカードの分割払い機能
このように、ペルソナの具体的な行動やニーズを掘り下げ、それに応じた機能やコンテンツをリスト化することで、設計に役立てることができます。
ステップ2:CJMとシナリオから、具体的なコンテンツを定めていく
ステップ1でリストアップしたコンテンツの詳細内容を決めていきます。
Webサイトにはだいたいの「型」がありますが、「他のWebサイトがこうしているから」という理由だけでは、その根拠を説明できません。
設定したペルソナが「現状(AS IS)」から「理想(TO BE)」へと本当に移行できるのかを考え、常に「ユーザーはこの画面で何をするのか?」を問うことで、ユーザーにとって最適なサイト設計ができます。
具体例で見てみましょう。
先ほどの「節約志向の田中さん」のシナリオから、設計をする場合……

トップページのライティング:
✖️ 一般的な型:「新商品入荷!」「セール開催中!」
⭕ 田中さん向け:「いつもの買い物が、最大〇〇%お得に」「目先の安さより、トータルの満足度」
商品ページのコンテンツ:
✖️ 一般的な型:商品写真、価格、カートボタンだけ
⭕ 田中さん向け:
・この商品で「月〇円節約」の表示
・詳細情報(素材、製造工程、耐久性、機能、お手入れ方法、保証期間)
・類似商品との比較機能
・正直なレビュー(良い点・悪い点両方)
カート画面のリコメンド:
✖️ 一般的な型:「送料無料まであと〇円!」で追加購入を促す
⭕ 田中さん向け:
・限定クーポン・キャンペーン(初回購入割引、期間限定セールなど、購入を後押しする)施策
・後払い・分割払いオプションの表示
このとき、ユーザーのゴールを後押しするメッセージやライティングも、この情報設計の一部として考慮に入れるとよいでしょう。
ステップ3:シナリオの流れにあったWFを作成をする
CJMで描かれた全体の流れに加え、先ほど作成したシナリオから、コンテンツの順番や細かな配置を決めていきます。ユーザーが各フェーズでどのような情報を求め、どのような行動を取るのかを具体的に想像することが重要です。
ポイント7:アウトプットは「なぜ」に100%答えられる設計をする
ワイヤーフレームやデザインの制作後、社内のメンバーやクライアントから「なぜこのデザインなんですか?」「なぜこの情報配置なんですか?」と聞かれて、明確に答えられなかったこと、ありませんか?
「なんとなく、こっちの方が見やすい気がして……」「参考サイトもこんな感じだったので……」では、説得力に欠けてしまいます。
ペルソナを作成する意味は、単に架空の人物像を作るだけでなく、「N=1のユーザーを深く理解し、共感する」ことにあります。そして、ワイヤーフレームを作成する際には、このN=1のユーザーが本当に辿り着きたいゴールや、必要とする情報を得られるコンテンツ・デザインになっているかを、自分自身と対話を繰り返しながら検証する工程が欠かせません。
この地道な試行錯誤こそが、デザインの精度を飛躍的に向上させる鍵となります。
以下3つのポイントについて考えてみましょう。
自分自身で深く考えて作っているか
表面的な情報にとどまらず、その背景にある「なぜ」を深く掘り下げて考えることで、ペルソナの「本当のニーズ」を見つけ出す。そのための根拠(ファクト)を取っているか
「N=1のヒアリング」を通じて個別のユーザーから直接話を聞く、自分でインターネットで徹底的に調べる、あるいは自分自身の経験(ユースケース)に照らし合わせてみるなど、多角的に根拠を集める。非デザイナーと話すための言語化ができているか
専門用語を避け、誰にでも理解できるように情報を整理し、論理的に説明できる言語化スキルが必要。
デザインはよく批判とセットであると言われますが、もしデザインを見たときに「これはダメだ」と感じたら、その「なぜダメなのか」を深く掘り下げて考えます。反対に、明確な反論理由がなければ、そのデザインは「大丈夫」だと言える考え方もあります。
自分でデザインを作成したら、「このコンテンツでペルソナが本当に欲しかった情報が得られるか?」「もし得られないとしたら、どうすればいいか?」という視点で、繰り返しペルソナに立ち返って検討します。
このプロセスを経ることで、ワイヤーフレームや最終的なデザインを見せた際に、「なぜこの配置なのか?」「なぜこのコンテンツなのか?」と問われても、
「N=1のペルソナである〇〇さんが、このような状況のときにこの情報が欲しかったため、この形であれば確実に情報が取得できると判断しました」
と、自らの議論に基づいた明確な根拠をもって説明できるようになります。
ポイント8:デザインレビューは「引き出す場」である
デザインレビューは、「一方的に説明する場」ではなく、「相手から意見を引き出す対話の場」でもあります。
社内でのレビューでは、メンバー同士で意見を交わすことで、見落としていた課題や新しい視点に気づけます。 それぞれの専門性や考え方を組み合わせることで、デザインがブラッシュアップされていきます。
クライアントとのレビューでは、相手の知識や経験を引き出すことが大切です。 お客さまの頭の中には、長年の業務で培われた情報やノウハウがありますが、レビューの場では言葉にまとめきれないこともあります。 また、日々ユーザーに向き合う中で得られる気づきも大きな価値です。
だからこそ、私たちは話の流れを整理し、具体的なデザインの議論につなげる役割を担います。 相手の言葉遣いや思考のパターンを理解することで、次の提案やコミュニケーションに活かせます。 意思決定者のスタイルに合わせ、「Yes / No」で答えるのか、理由を添えるのかも見極めることが大切です。
デザインレビューは、共に考え、意見を磨き合う時間。 対話を重ねることで、デザインはより精度の高いものになっていきます。
まとめ
このように、WebサイトのUX向上は、単なるデザインスキルに留まらず、ビジネスの目標達成と社会貢献を見据え、徹底したユーザー理解と、それを具体的な成果物へとつなげる論理的な思考プロセスを通じて実現されます。
デザイナーがこれらの視点を持ち、制作に取り組むことで、よりよい未来を描く手助けができるのではないでしょうか。より上流の工程からデザイナーが入って行き、ユーザーの真のニーズを掘り起こすことで、表面的な美しさ以上の価値を作り出せるはずです。
これからも、ユーザーの心に深く寄り添ったデザインを追求していきたいですね。







