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3C分析とは?「KSF(重要成功要因)」の特定から、失敗しない分析プロセスを解説

デジマ担当
2025-12-17
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「自社の本当の強みは何か?」「顧客は今、何を求めているのか?」「競合他社は、どのように動いているのか?」

本記事では、こうした戦略の根幹をなす問いに答えるための、最も基本的なフレームワーク「3C分析」について、その本質と正しい実施手順、そして分析を成功に導くキーとなるポイントを解説します。

3C分析は、単なる情報整理ではなく、自社のKSF(Key Success Factors:重要成功要因)、言わば「勝ち筋」を見つけ出すための戦略的な指針となります。

3C分析とは?

3C分析の「3つのC」とは?

3C分析とは、企業がマーケティング戦略や経営戦略を立案する際に、自社を取り巻く環境を分析するためのフレームワークとして非常に実績のある分析手法であり、戦略を考える上で不可欠な3つの要素の頭文字を取っています。

  • Customer(市場・顧客) 市場の規模や成長性、顧客が何を求めているか(ニーズ)、どのような価値観を持っているかといった「外部環境」を分析します。

  • Competitor(競合) 競合他社はどのような戦略を取り、どのような強みや弱みを持っているのか、市場の変化にどう対応しているのかといった「外部環境」を分析します。

  • Company(自社) 自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)、技術力、ブランド力、そしてそれによって生まれる強みや弱みといった「内部環境」を客観的に分析します。

3C分析の「究極の目的」KSFの特定

3C分析は、情報を集めて分類し、「分析したつもり」になって終わらせてしまうケースが非常に多いのですが、それは大きな誤りです。分析はあくまでスタート地点に過ぎません。

3C分析の究極の目的は、分析結果を統合し、その市場で成功するための鍵となる要素、すなわちKSFを特定することです。

KSFとは、平たく言えば「その市場での勝ちパターン」のことです。3C分析は、このKSFを導き出すための体系的なプロセスであり、3つの「C」の分析結果が重なる「スイートスポット」にこそ、KSFは存在します。

思考のプロセスとしては、以下のようになります。

  • Customerが強く求めているニーズは何か?

  • そのニーズに対して、Competitorが十分に応えられていない(=弱みとしている)領域はどこか?

  • その領域に対して、Companyが持つ「強み」を活かして応えることはできるか?

つまりKSFとは、「(C1)が求めているが、(C2)は提供できておらず、(C3)が強みを活かして提供できる(あるいは、すべき)領域」として定義されます。この領域を発見し、そこに経営資源を集中投下する方針を決めることこそが、3C分析のゴールです。

3C分析の概念図

3C分析の「基本」となる実施ステップ

3C分析の精度は、その「実施手順」によって大きく左右されます。特に「分析の順番」は、戦略の質を決定づけるほど重要です。

なぜ「分析の順番」が重要なのか?

3C分析の失敗例として最も多いのが、分析の順番を間違えることです。Companyから分析を始めてしまうと、「自社にはこんな技術があるから、これを売ろう」「我々の強みはこれだから、これを評価してくれる顧客を探そう」という発想、すなわち「プロダクトアウト(作り手中心)」の罠に陥りがちです。

戦略の基本は、あくまでCustomerから発想する「マーケットイン(顧客中心)」、あるいは「アウトサイド・イン(外部環境起点)」です。この思考を強制的に担保するため、3C分析は以下の順番で進めるのが鉄則とされています。

  1. Customer

  2. Competitor

  3. Company

まず外部環境であるCustomerを定義し、次に同じ戦場にいるCompetitorを分析する。そして最後に、その環境下で自社がどう戦うべきかをCompany分析で決定する。この流れを守ることが、戦略の精度を高めるための絶対的な原則です。

3C分析は実施の順番が重要

Step 1 Customer分析

最初のステップは、戦略の前提となる「戦場」を定義することです。ここでは、市場全体という「マクロな視点」と、具体的な顧客という「ミクロな視点」の両方から分析します。

分析項目:

  • 市場の分析(マクロ):
    市場の規模、成長性(伸びているか、縮小しているか)、市場の変化(法律改正、技術革新、社会トレンドなど)を把握します。このマクロ分析には、PEST分析(政治・経済・社会・技術)といったフレームワークが役立ちます。

  • 業界の分析(ミクロ):
    その業界の収益性や構造(新規参入の脅威、代替品の脅威など)を分析します。ここでは5フォース分析が有効です。

  • 顧客の分析(ミクロ):
    顧客の具体的なニーズや価値観(何を求めているか)、消費行動、購買プロセス(いつ、どこで情報を得て購入するか)を分析します。

ポイント:

KBF(Key Buying Factor:主要購買決定要因)の特定 このC1分析における最も重要なゴールは、KBFを特定することです。

KBFとは、顧客が数ある選択肢の中から「あなたの商品・サービスを(あるいは、そのカテゴリの商品を)購入する決め手」となる要素(例:価格、機能、デザイン、ブランド、利便性、サポートの手厚さ)を指します。

ここで、先述のKSFとの違いを明確にしておく必要があります。

  • KBF:
    顧客視点
    の概念。「顧客は何を理由に買うか」を示します。(例、「一番価格が安いこと」がKBF)

  • KSF:
    企業視点
    の概念。「市場で勝つために何をすべきか」を示します。(例、KBFが「価格」ならば、KSFは「競合より優れたコスト削減を実現するサプライチェーンの効率化」となります)

C1分析では、まず顧客が重視するKBFを複数リストアップすることに全力を注ぎます。続くC2とC3の分析は、すべてこのKBFを評価軸として進めていくことになります。

Step 2 Competitor分析

C1で市場と顧客のKBF(評価軸)を定義したら、次に同じ市場にいる競合他社の分析に移ります。

分析項目:

  • 競合の全体像:
    競合企業の市場シェアとその推移、業界内でのポジション(リーダーか、フォロワーか)などを把握します。

  • 競合の戦略・リソース:
    製品やサービスの特徴、強みと弱み、採用している戦略(価格、チャネルなど)、開発力、資金力、宣伝力といった経営資源、収益性などを詳細に調査します。

ポイント:

KBFの軸で「相対的」に評価する 競合分析で陥りがちな失敗は、単に競合の特徴を羅列して終わることです。C2分析は、必ずC1で特定したKBFの視点を通して行わなければなりません。

例えば、C1分析で顧客のKBFが「導入後のカスタマーサポートの手厚さ」だと特定されたとします。その場合、C2分析では、競合A社、B社、C社が、そのサポートに対してどの程度のパフォーマンスを発揮しているか(サポート時間、応答速度、顧客満足度など)を徹底的に調査します。

ここでの狙いは、「顧客にとっては非常に重要だが、競合は十分に対応できていない」領域、すなわち「戦略的ギャップ」を発見することです。

Step 3 Company分析

外部環境の分析を終えた後、最後に内部環境、すなわちC1の分析を行います。

分析項目:

  • 自社の売上、市場シェアとその推移

  • 経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報、技術力、開発力、ブランド力、販路など)

  • 企業理念やビジョン

ポイント:

客観性を担保し、「真の強み」を識別する 自社分析で最も困難なのは、内部のバイアスや希望的観測を排除し、「客観性」を維持することです。

分析項目は、C2で用いたものと意図的に揃えることが推奨されます。C1で設定したKBFに対し、C2と比較して、C3は優れているのか(=強み)、劣っているのか(=弱み)を冷静に評価します。

この客観性を担保するために、他のフレームワークを組み合わせて用いることが非常に有効です。

  • VRIO分析:
    自社が「強み」だと思っているものが、本当に持続的な競争優位の源泉となるのかを判定する手法です。Value(経済価値)、Rarity(希少性)、Imitability(模倣困難性)、Organization(組織)の4つの視点で評価します。

  • SWOT分析(内部環境):
    C3分析の結果は、そのままSWOT分析の内部環境要因である「Strengths(強み)」と「Weaknesses(弱み)」に直接的に反映されます。

分析を「成功」に導くための3つのポイント

3C分析はフレームワーク自体がシンプルですが、実行者によってその質が大きく変わります。分析を「成功(=KSFの導出)」に導くためには、以下の3つのポイントを徹底する必要があります。

ポイント1:主観を排除し「ファクト」を集める

3C分析で最も陥りやすい失敗は、分析に「主観」や「希望的観測」が入り込むことです。Company分析では「我々の技術力は高いはずだ」という願望が、Customer分析では「きっとこういうニーズがあるに違いない」という憶測が入りがちです。

分析の段階では、徹底して客観的な「ファクト」のみを収集・記述することに専念しなければなりません。

ポイント2:分析で終わらせず「戦略」につなげる

分析はあくまでスタート地点であり、具体的な戦略や施策に結びつかなければ価値はゼロです。この「分析」から「戦略」への橋渡しとして、SWOT分析との連携が極めて有効です。

3C分析で収集した「ファクト」を、SWOT分析で「評価・解釈」し直します。

  • C1(市場・顧客)+ C2(競合)→ O(機会)/ T(脅威)

  • C3(自社)→ S(強み)/ W(弱み)

さらに、これらを掛け合わせる「クロスSWOT分析」(例:「強み」×「機会」)を行うことで、KSFを核とした具体的な戦略オプションを策定します。

ポイント3:定期的に「アップデート」する

現代のビジネス環境の変化は非常に速く、顧客のニーズも競合の状況も刻一刻と変化しています。

分析に時間をかけすぎると、情報が「時代遅れ」になる危険性があります。分析はスピーディーに、かつ、一度分析して終わりにするのではなく、定期的に見直し、情報をアップデートし続けることが不可欠です。

質の高いアウトプットを生み出すための必須マインドセット

一歩進んだ3C分析

3C分析の基本を押さえた上で、さらに戦略の解像度を上げるための応用的な視点を2つ紹介します。

【事例紹介】分析から戦略はこう生まれる

3C分析からKSFを導出するプロセスは、多様な業界で応用されています。

  • SaaS業界の事例
    C1 特定の課題解決を重視。
    C2 類似ツールが多く価格競争が激化。
    C3 特定の専門機能に強みがある。
      →KSF 価格競争を避け、自社の「特定の強み」を必要とする「ニッチな顧客層」にターゲットを絞り、Web上で価値を明確に訴求する。

  • 製造業の事例
    C1 
    「高品質・小ロット」の特化型製品へのニーズ。
    C2 大手は大量生産市場が中心。
    C3 高い技術力と柔軟な小ロット生産体制。
       →KSF 競合が手薄な「特定のニッチ市場」に営業リソースを集中投下する。

BtoBビジネスは「6C分析」の視点を持つ

BtoBビジネスでは、分析すべき「顧客」自身も企業です。そのため、顧客企業のビジネス成功に貢献するという視点が求められます。

参考までに「6C分析」という考え方もあります。これは自社の3Cに加え、「顧客企業の3C」(顧客の顧客、顧客の競合、顧客企業自身)も分析する手法です。顧客のもう一歩先まで視野を広げる考え方として、頭の片隅に置いておくとよいでしょう。

3C分析を「実践」に移すために

3C分析は、実行する人の思考力や客観性がアウトプットの質を大きく左右します。

重要なのは、分析を「知っている」ことで満足せず、「実践」に移すことです。Customerは何を求めているのか? Competitorは何を提供できていないのか? Companyは何を提供できるか?

この3つの問いを、客観的な「ファクト」に基づいて常に自問し続けること。それこそが、自社の進むべき道KSFを照らし出し、持続的な成長を実現するための、最も確実な一歩となります。

3C分析に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 3C分析を行う最大の目的は何ですか?

A. 単なる情報の整理ではなく、市場・競合・自社の分析を通じてKSF、すなわち自社の「勝ち筋」を特定することです。顧客が求めているにもかかわらず競合が提供できていない領域を見つけ出し、そこに経営資源を集中させるための指針を作ることが究極のゴールです。

Q2. 3C分析には「正しい順番」があるのですか?

A. はい、あります。「Customer → Competitor → Company」の順で行うのが鉄則です。最初に自社から分析を始めると、「売りたいものを売る」という企業都合の思考に陥りやすいため、必ずCustomerから分析を始める必要があります。

Q3. 記事に出てくる「KBF」と「KSF」の違いは何ですか?

A. KBFは顧客視点の概念で、顧客が商品を選ぶ際の「決め手(例:安さ)」を指します。一方、KSFは企業視点の概念で、そのKBFを満たして市場で勝つために企業が取り組むべき「勝ち筋」(例、コスト削減体制)を指します。

Q4. BtoBビジネスでも3C分析は使えますか?

A. はい、基本的にはそのまま使えます。ただし、BtoBでは顧客も「企業」であるため、単純な3Cに加えて「顧客の顧客」「顧客の競合」「顧客企業自身」の視点を加えた「6C分析」という考え方を取り入れると、より相手のビジネスに貢献する本質的な分析が可能になります。

参考記事:マーケティングの方法を基礎から解説!フレームワークや分析手法、戦略設計の流れを知ろう

執筆者
デジマ担当
主に自社のWebサイト運用が業務。SEO対策、コンテンツマーケティング、SNSやWeb広告配信、メール配信、アクセス解析ツールを用いた効果測定と改善提案、リード獲得から育成までの施策設計など、デジタルチャネルを活用したインハウスマーケティング業務全般を行う担当者。