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BtoBマーケティングとは? 流れや戦略の立て方など基本知識まとめ

西村 由香(インハウスマーケター)
2023-08-16
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BtoBマーケティングでは企業相手の商談を行うため、顧客である企業やその担当者の特徴を深く理解して戦略立案を行うことが重要です。そこで本記事では、BtoBマーケティングを行う上で知っておきたい基礎知識からBtoCとの違い、BtoBマーケティングの流れや施策、必要なツールなどを網羅的に解説します。

後半ではBtoBマーケティングを行うマーケターが必ず理解しておくべき成果を出すポイント3点も具体的に解説しますので、ぜひ最後までご一読ください。

BtoBマーケティングとは?基礎知識とBtoCとの違い

BtoBは企業間取引を指し、Business to Businessの略称です。
BtoBマーケティングとは、企業が法人顧客に対して自社製品やサービスを提供するための販売活動や仕組みづくりのことを指します。

BtoBマーケティングの定義と目的

BtoBマーケティングの最大の目的は、営業活動の効率化と売上の最大化です。

個人の感情や衝動買いが起こりやすいBtoC(Business to Consumer)とは異なり、BtoBでは企業の課題解決が購入の動機となります。そのため、マーケティング部門の役割は、単に製品の認知度を上げることだけではありません。

顧客が抱える課題を先回りして特定し、適切なタイミングで解決策を提示することで、営業担当者が商談する前に、すでに信頼関係ができている状態を作ることが求められます。

BtoBマーケティングとBtoCマーケティングの違い

BtoBマーケティングを成功させるには、BtoCとの構造的な違いを理解し、戦略に落とし込む必要があります。主な違いは以下の通りです。

項目

BtoB(対法人)

BtoC(対個人)

ターゲット

企業の担当者・決裁者

個人の消費者

検討期間

長い(数ヶ月〜年単位)

短い(即決〜数週間)

意思決定者

複数人(担当者、上長、経営層など)

本人(または家族)

判断基準

合理性・費用対効果・信頼性

感情・好み・価格

単価

高額になることが多い

低単価〜高単価まで幅広い

特に重要なのが検討期間の長さと合理的な判断です。即決されないからこそ、長期間にわたって顧客と接点を持ち続けるリードナーチャリング(育成)のプロセスや、合理的な判断を後押しする有益なコンテンツ(UX)の設計が不可欠となります。

購買行動プロセスの変化

なぜ今、BtoB企業がデジタル活用を急ぐのか。その背景には、顧客の購買行動における決定的な変化があります。

かつては営業担当者を呼んで話を聞くのが当たり前でしたが、現在は、営業担当者を介さない購買スタイルが主流になりつつあります。 Gartnerの最新調査(2025年発表)によると、BtoBバイヤーの61%が営業担当者と会わない購買体験を好むと回答しており、McKinseyのデータ(2024年)でも、1億円を超えるような高額商材であっても、20%の企業が対面なしで発注することに抵抗がないとしています。

また、意思決定に関与する人数も平均10名前後まで増加しており、社内の合意形成はより複雑化しています。 そのため、営業担当者が足繁く通うよりも、顧客が社内会議でそのまま使える、質の高い検討資料(Webコンテンツ)を用意しておくことの方が、商談を前に進める決定打になります。

引用・参考文献

営業担当者は不要という志向の加速Gartner Sales Survey Finds 61% of B2B Buyers Prefer a Rep-Free Buying ExperienceGartner Press Release (2025/06/25)
高額商材のデジタル完結 McKinsey’s ninth global B2B Pulse Survey McKinsey & Company (2024/09/13)

BtoBマーケティング戦略の立て方4つのステップ

BtoBマーケティングで最も多い失敗は、戦略を立てずにいきなりMAツールの導入やWebサイトのリニューアルといった手段から入ってしまうことです。成果を出すためには、以下の4つのステップで骨子を固める必要があります。

Step1:ターゲット選定とペルソナ設定

まずは誰に届けるか」を明確にします。BtoBの場合、ターゲット企業(業種・規模・エリア)の定義はもちろんですが、それ以上に重要なのが、その企業の中にいる「担当者(ペルソナ)の解像度を上げることです。

その担当者は、どのようなミッションを背負い、日々の業務で何に悩み、どのようなキーワードで検索し、社内でどのように評価されているのか。企業属性だけでなく、一人の人間としての悩みや行動特性まで具体化することで、初めて心に響くメッセージを作ることができます。

参考記事:BtoBマーケの成果に直結するペルソナ設定。作成手順とBtoCとの違いを解説

Step2:カスタマージャーニーマップの作成

ターゲットが決まったら、その人が課題を認識してから契約に至るまでの行動と心理の変化を時系列で可視化する、カスタマージャーニーマップを作成します。作成には、カスタマージャーニーマップのテンプレートをご利用ください。

ここで重要なのは、Webサイトやメールといった個別の接点だけでなく、一連の顧客体験(UX)を設計することです。例えば、検索で記事を読んで関心を持つ→事例集をダウンロードして信頼する→セミナーで比較検討するといったように、点と点をつなぐシナリオを描きます。

この設計図がないままツールを導入しても、誰にいつ何を届ければよいかが分からず、機能を持て余すことになります。

あわせて読みたい:効果的な施策立案に役立つ、カスタマージャーニーマップの作り方と活用法

Step3:KGI・KPIの設計と目標設定

ナーチャリング後にホットリードを選別するステップです。商談化見込みのある顧客をもれなくセールス部門へ引き継ぐことで、効率的な営業アプローチを実現します。ホットリードはスコアリングで測定し、メール開封1点、資料請求3点、問い合わせ5点などの加点方式で、一定点数を超えた顧客をリスト化するのが一般的です。

KPIの設定には、効率的なマーケティングを実現するKPI実践ガイドをご利用ください。

Step4:施策選定とリソース配分

最後に、設計したジャーニーマップを実現するための具体的な施策(SEO、広告、展示会など)を選定します。

BtoBマーケティングの施策は多岐にわたりますが、予算も人員も限られています。あれもこれもと手を広げるのではなく、ターゲットが最も情報を集めているチャネルにリソースを集中させることも検討しましょう。

成果を最大化するマーケティングDXの視点

BtoBマーケティングには、Webサイトや広告といったオンライン施策と、展示会やセミナーなどのオフライン施策が存在します。

ただ、多くの企業で、Web担当はPV数、イベント担当は名刺獲得数といったように、各施策がバラバラに管理され、分断(サイロ化)されています。

現代のBtoBマーケティングで成果を出す鍵は、これらを対立させるのではなく、顧客一人ひとりのデータで繋ぎ、一貫した顧客体験(UX)として設計するマーケティングDXの視点を持つことにあります。

参考記事:マーケティングDXとは?成功に導くデータをフル活用するコツ

オンライン施策:顧客接点のデジタル化とデータ蓄積

SEO、Web広告、コンテンツマーケティングといったオンライン施策は、単なる集客手段ではありません。「顧客が今、何に興味を持っているか」というデータを蓄積する装置として機能させることが重要です。

顧客に見つけてもらうインバウンドマーケティングを通じて得られた行動データは、その顧客の課題や検討フェーズを推測する貴重な材料となります。このデータがあるからこそ、後のプロセスでその人が欲しい情報を的確に届けることが可能になります

オフライン施策:デジタルとの相互連携で商談化を加速

展示会や対面セミナーなどのオフライン施策も、単体で完結させるのではなく、デジタル施策と連携させることで真価を発揮します。

例えば、展示会は名刺を集める場ではなく、デジタルでの継続的なコミュニケーション(ナーチャリング)への入り口と再定義できます。 また、デジタル上で関心が高まった顧客に対し、インサイドセールスが電話でアプローチしたり、対面セミナーへ招待したりするといった動きも有効です。

オンラインとオフライン、それぞれの接点で得た情報を統合し、最適なタイミングで最適なアプローチを行う。この一連のプロセス設計こそが、商談化率を飛躍的に高めるポイントです。

成果を加速させるデータ活用とテクノロジー

戦略を実行に移す際、担当者の勘や経験だけに頼るのは危険です。複雑化した顧客行動を正確に把握し、適切なタイミングでアプローチするためには、客観的なデータの裏付けと、それを処理するテクノロジーが不可欠です。

データマーケティングの必要性

データマーケティングとは、顧客の属性やWebサイトでの行動履歴、過去の商談データなどを収集・分析し、マーケティングの意思決定や施策に反映させる手法です。

例えば、すべての顧客に同じ内容のメールを一斉送信するのではなく、特定のページを閲覧した顧客にだけ関連事例を送るといったOne to Oneコミュニケーションが可能になります。感覚ではなく事実(データ)に基づいて施策を打つことで、確実性の高い成果を生み出せます。

関連コンテンツ:データマーケティングとは?手法・メリット・DX事例を徹底解説

MA(マーケティングオートメーション)とSFA/CRMの活用

数千、数万件に及ぶ見込み顧客のデータを、Excelや手作業で管理し続けることは不可能です。そこで必要になるのが、マーケティング活動を自動化・可視化するMAツールや、営業支援システムであるSFAです。

MAを活用すれば、顧客のWebアクセス状況をリアルタイムで検知し、関心が高まった瞬間に営業へ通知を送るといった動きが自動化できます。ツールは導入して終わりではなく、自社の戦略に合わせてシナリオを設計し、運用し続けることで初めて効果を発揮します。

関連コンテンツ:HubSpotを活用したインバウンドマーケティング:料金表やプランを解説

クッキー規制とファーストパーティデータの重要性

データ活用において避けて通れないのが、プライバシー保護の潮流です。近年、Webブラウザにおけるサードパーティクッキー(第三者が発行する追跡用データ)の利用制限が進んでおり、これまで通りのリターゲティング広告などが難しくなっています。

今後は、プラットフォームに依存せず、自社サイトのフォームやアンケートなどを通じて直接取得したデータ(ファーストパーティデータ)の価値が飛躍的に高まります。顧客から信頼され、自ら進んで情報を提供してもらえるような関係性を築けるかどうかが、これからのデータ戦略の核心となります。

関連コンテンツ:ファーストパーティデータとは。3つのデータ分類とデータマーケティング推進のポイント

BtoBマーケティングを成功させる組織と連携

どれほど優れた戦略とツールがあっても、それを動かすのは人であり組織です。特にBtoBマーケティングにおいて最大のボトルネックとなりやすいのが、マーケティング部門と営業部門の分断です。

マーケティングと営業の壁を壊す

多くの企業でマーケティングが送ってくるリードは質が悪い、せっかく獲得したリードを営業がフォローしてくれない、という対立構造が見られます。

この壁を壊すために必要なのは、感情論ではなく、共通の定義とルールを持つことです。 具体的には、どのような状態の顧客をホットリードと呼ぶのか(MQLの定義)や、リードを受け取ってから何時間以内に架電するのか(SLA:サービスレベルアグリーメントといった取り決めを事前に行い、互いの役割を明確にすることが連携成功の第一歩です。

関連コンテンツ:マーケティングと営業の連携を成功させる3つのポイント!うまくいかない原因と解決策とは

組織設計と役割分担

近年では、マーケティングとフィールドセールス(外勤営業)の間に、電話やメールで商談創出を専門に行うインサイドセールスを設置する企業が増えています。

分業体制を敷くことで、マーケティングはリード獲得に、インサイドセールスは育成と選別に、フィールドセールスはクロージングに集中できるため、組織全体の生産性が向上します。ただし、これは単に人を分ければよいわけではなく、自社のリソースや顧客特性に合わせた最適な組織図を描く必要があります。

関連コンテンツ:BtoBマーケティングの組織設計と立ち上げ事例

まとめ:BtoBマーケティングはUXで差別化する

BtoBマーケティングの手法やツールは、コモディティ化(一般化)が進んでいます。競合他社も同じようなWebサイトを作り、同じようなMAツールを導入している中で、どこで差をつければよいのでしょうか。

答えは、顧客体験(UX)の質にあります。

顧客が抱える真の課題を理解し、適切なタイミングで、心に響くコンテンツを届けられるか。分断されがちなデジタルとリアルの接点を、滑らかな一つの体験として設計できるか。 これからのBtoBマーケティングの勝敗は、ツール自体の機能差ではなく、ツールを使ってどのような体験を提供できるかという設計力で決まります。

博報堂アイ・スタジオは、長年にわたるWeb構築とクリエイティブの知見、そしてデータマーケティングの実績を活かし、戦略立案からUX設計、システム実装までを一気通貫で支援します。何から手をつければよいか分からないという段階からでも、ぜひお気軽にご相談ください。

執筆者
西村 由香(インハウスマーケター)
デジタルマーケターとして事業会社にマーケティングオートメーションの運用設計/ノウハウを提供、人材サービス企業の4事業部を統括するデジタルマーケティング責任者として従事。2023年より博報堂アイ・スタジオにて自社のデジタルマーケティングの仕組を構築・運用する傍ら、クライアント業務も実施。