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CMS導入での効率化とデザイン性を両立させる、機能と運用を見据えたWebデザイン設計

木村 円香(デザイナー)
2026-01-14
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CMSサイトをデザインする場合は、単に綺麗なデザインをつくるだけではなく、フレキシブルな運用を見越し、可変要素を加味して作成する必要があります。そして、デザイン崩れを防ぐために重要なのは、実はデザイン作業そのものよりも「作業に入る前の上流工程」です。

この記事では、これまで数多くのCMSサイト構築でデザインを担当してきたデザイナーの視点から 、CMS導入でデザインの破綻を防ぎ、長期的な運用効率を高めるために不可欠な仕様の把握、デザインの合意形成、ルール策定、そして、具体的なデザインTIPSまでを、順を追って分かりやすく解説します。

【仕様の把握】デザインの自由度はどのCMSを選ぶかで決まる

CMSサイトをデザインする上で、まず理解すべき最も重要なポイントは、「どのCMSを選ぶかによって、デザインの自由度が変わる」ということです 。CMSにはさまざまなサービスがあり、規模や予算、機能によって選定されます。
ここでは、デザインの自由度という観点で、CMSを大きく3つのタイプに分類して解説します。

CMS タイプ別3分類

ノーコード・ローコード型CMS

従来型(組み込み型)CMS

ヘッドレスCMS

特徴

テンプレートを使ったレイアウトが基本

既存テーマを使うかオリジナルテーマを作るかで、自由度に差が出る

CMS機能とデザインが完全に分離されている

デザイン自由度

⚪︎

デザインへの影響

用意されたテンプレートや機能を組み合わせてデザインするため、オリジナルのデザインを作ることには向いていない

オリジナルテーマなら自由度は高いが、CMS独自のルールに従う必要があり、エンジニアのスキルにも依存する

デザイン上の制約はないため、自由に作り込める。またWebサイトの一部のみにCMSを組み込むことが可能

開発難易度


プログラミング不要


テーマ利用なら容易


フロントエンド開発必須

イニシャルコスト

◎ 安い

◯ 普通

△ 高い

ランニングコスト

◎ 安い(定額)

◎ 安い(保守次第)

◯ 普通

代表的なCMS

WIX
STUDIO
Webflow

WordPress
Movable Type

Kuroco
microCMS
Contentful

デザイン性を優先し、初期開発の工数とコストをかけるのか。それとも、テンプレートを活用し、工数とコストを圧縮することを優先するのか。プロジェクトの目的と予算、そして運用体制に応じて最適なCMSを選定することが非常に重要です。

Webサイト立ち上げやリニューアルの成功は、立ち上げ時で終わるものではありません。重要なのは、公開後の運用をいかに効率的に、低コストで継続できるかです。初期コストだけでなく、長期的な運用工数まで見据えた選定こそが、プロジェクト成功の鍵となります。

参考記事:
  プロが本音で解説するCMS比較。目的別のおすすめ10選と選び方のコツ
  今話題のHeadless CMSとは?テクニカルディレクターが語る、メリット・デメリット

【デザインの合意形成】エッジケースの提示で認識合わせ

CMSの仕様を把握したら、次はデザインの承認です。

CMSサイトのデザインで失敗する典型的なパターンは、静的なデザインカンプ(1枚の画像)だけで承認プロセスを進めてしまうことです。発注者と制作者がその「完璧な1枚」だけを見て合意しても、運用開始後に「こんなはずじゃなかった」というズレが生じやすくなります。

なぜなら、CMSサイトは運用担当者が日々更新するため、中身が常に変動する「動的なもの」だからです。

承認時に見落とされる「動的なズレ」の具体例

テキストの変動:
  タイトルや本文が、デザインカンプで想定していた文字数よりも極端に長くなった(または短くなった) 。

コンテンツ量の変動:
  公開当初、コンテンツが0件や1件しかなく、レイアウトがスカスカになってしまった 。
  逆に、コンテンツが想定より大量に増え、一覧ページが崩れてしまった 。

任意項目の変動:
  記事のサムネイル画像が設定されなかった場合に、どう表示されるかを決めていなかった 。
  任意のタグやカテゴリが、設定されなかったり、逆に10個も設定されたりした。


解決策1:エッジケースの提示

重要なポイントは、デザインカンプを作成する際、理想的な状態の1パターンだけを提示しないことです。
デザイナーは理想形と同時に、エッジケース(極端な事例)もセットで提示し、承認を得るべきです。

例:
  ・テキストが最小の場合と最大の場合
  ・コンテンツが0件の場合と大量の場合
  ・画像が設定されていない場合

完璧な1パターンではなく、変動する複数パターンをプロジェクトの早期に共有し、関係者間の期待値を調整すること。それこそが、運用開始後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐ最大の鍵となります。

解決策2:デザインガイドラインの作成

単に見た目の定義だけでなく、なぜそのデザインなのかという意図を含めたガイドラインを作成します。

例:
  ・マージンルール : 要素間の余白を厳密に定義し、レイアウトの均整を保ちます 。
  ・タイポグラフィ : 見出しや本文のフォントサイズ、太さ、行間を定義します。
  ・カラーパレット : 使用する色を限定し、「強調したいとき」「注意を促すとき」など、用途も明記します。

解決策3:CMS入稿マニュアルの整備

Webサイト全体の印象を左右する画像については、厳格な入稿ルールが不可欠です。

特にサムネイル画像 は、Webサイトのクオリティ に直結します。推奨するアスペクト比(画像の縦横比)、ファイルサイズ、そしてサムネイルが未設定だった場合に表示する代替画像のルールをCMSの入稿マニュアルに具体的に定義しておくことで、誰でも一定の品質で入稿できるようになります。

参考記事:デザインシステムとは?基礎から学ぶ重要性と導入のポイント

CMS運用を前提とした具体的なデザイン手法5つのポイント

これまで解説してきた仕様把握 → 承認進行 → ルール策定という上流工程を踏まえた上で、ここでは実際のデザイン作業で役立つ、より具体的なポイントを5つご紹介します。

特にデザイン崩れが起きやすいのは、実績やニュース、記事ページなど、運用者が日々更新する箇所です 。

01. 機能に応じたデザイン設計を行い情報の優先順位を整理する

Webサイトを作る上での基礎となりますが、情報の種類(カテゴリ、日付、タグ、サムネイル、タイトルなど)を整理し、機能に応じた最適な順番・バランス・視認性を意識したデザイン設計が重要です 。運用担当者が意図せずとも、情報が正しく伝わるレイアウトを目指します。

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02. テキストの可変性を考慮する

コンテンツのパネルごとに文字量にばらつきがあると、ページ全体のレイアウトが崩れて見えることがあります 。あらかじめ、タイトルの最小・最大文字数や本文の目安文字数を設定しておくことで、統一感を保ち、崩れを防ぐことができます 。 また、固定の改行位置にこだわらず、可変テキストに対応できる柔軟なタイポグラフィ設計を行います 。

03. コンテンツ量の最小〜最大で崩れないか検証する

CMSサイトではコンテンツ量が変動するのが当たり前です。そのため要素が少ない場合にスカスカになったり、逆に多すぎて崩れてしまうという失敗はよくあります。

前もって検証し考慮した設計にすることで、公開後の崩れや違和感を防ぎ、どんな状況でも美しいデザインを保てます。

◼︎検証事項
  1.コンテンツが0件の場合
  2.コンテンツが1件だけの場合
  3.コンテンツが大量にある場合
  4.テキストが短い/長い場合

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04. サムネイルのルールを定義する

サムネイルを画面いっぱいなど極端に大きくしてしまうと、画像のクオリティーによってWebサイト全体の印象が左右されてしまいます。

フォトグラファーやグラフィックデザイナーのポートフォリオのように、画像そのもので魅せる場合は大きくして良いですが、それ以外の記事一覧やニュース、テキスト中心のコンテンツでは、サムネイルは情報を把握できる十分なサイズに留め、過度に大きくしないことがポイントです。また、サムネイル未設定時の代替サムネイル も必ずデザインルールとして設定しておきます。

05. 更新エリアと固定エリアを明確に分ける

これは運用面で非常に重要です。デザインやレイアウト上で、運用担当者が更新するエリアとシステム側で固定表示するエリアを明確に分離します。これにより、運用担当者がどこを触って良いのかを直感的に理解でき、誤操作によるレイアウト崩れのリスクを最小限に抑えます。

記事詳細ページをデザインする時の2つのポイント

01. 運用しやすいパーツを作っておく

文章、画像、見出し、引用、表など、よく使うコンテンツパーツをあらかじめデザインしておくと、CMS上での更新や差し替えがスムーズになり、運用負荷を減らせます。

  • 見出し(H1〜H3)

  • 本文テキスト(太字・テキストリンク)

  • 箇条書き(中黒・数字)

  • 注釈

  • 画像サイズ

  • データ表

  • テキストボタン(ファイル・別タブアイコンあり)

  • マージンルール

02. コンテンツ幅を揃える

見出し、本文、画像などのコンテンツ幅を統一することで、ページ全体が整い、読みやすく美しい印象になります。

最近されたご相談・よくある質問

Q1. デザインのクオリティーに妥協はしたくありませんが、自由度の高いCMSを選ぶと、導入コストや開発期間は大幅に増加しますか?

A1. 一般的にはその傾向があります。
ヘッドレスCMSのようにデザインの自由度が最も高いタイプは、デザイン部分(フロントエンド)とCMSの管理機能(バックエンド)を個別に開発・構築する必要があります。そのため、テンプレート型に比べると、初期の導入コストや開発期間は増加する可能性が高いです。

しかし、その分、操作性や拡張性に優れたWebサイトが構築でき、長期的な運用効率やブランド価値の向上につながるケースも多いです。予算や機能、自社の運用体制とのバランスを見て選定することが大切です。

Q2. 専門知識のない社内担当者が更新作業を行うと、レイアウト崩れやデザインの統一感が失われてしまいませんか?

A2. そのリスクは、CMSサイト運用において多くの方が不安に思う点です。だからこそ、導入時の運用を見据えたデザイン設計が重要になります。
あらかじめテキストが最大何文字入るか、画像が設定されなかった場合はどう表示するかなどを想定してデザインし、見出しや表、箇条書きなどの運用しやすいパーツを定義しておくことで、誰が更新してもデザインの破綻を防ぎやすくなります。

Q3. デザインルールやコンポーネントが厳格だと、更新の自由度が下がりませんか?

A3. CMSサイトにおけるルールは、Webサイト全体の品質とブランドイメージを維持には必要です。 一見制約に思えるかもしれませんが、この制約があるからこそ、誰が更新してもデザインが破綻せず 、運用も明確になり、迷わずスピーディーに更新できます。あらかじめ定義されたパーツを組み合わせて使う方式 は、長期的な運用において非常に有効です。

最後に

いかがでしたか?
CMSサイトのデザインは「仕様把握」「デザインの合意形成」「ルール策定」といった上流工程がいかに重要か、ご理解いただけたかと思います。

CMSサイトをデザインする場合は、単に綺麗なデザインをつくれるだけではなく、フレキシブルな運用を見越して、可変要素を加味して作成する必要があります 。 CMSの導入は目的ではなく、あくまでWebサイトを成長させるための手段です。そして、デザインは、その運用を支えるための重要なベースです。

博報堂アイ・スタジオは、高度なUI/UX設計能力に加え、多様なCMSツールの特性を深く理解し、お客さまの運用体制に最適化されたデザイン基盤を構築いたします 。Webサイトに関する悩みやご相談がございましたら、気軽にお問い合わせください 。

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執筆者
木村 円香(デザイナー)
2019年博報堂アイ・スタジオ入社。デザイナー、ADとしてWeb、ブランディング、メタバースと多岐に渡る領域を牽引。現在は博報堂アイ・スタジオのCMSソリューション「nu」のマーケター兼ADとして活動。2023年 ACC YOUNG Finalist、w3 Awards Gold受賞。