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プロジェクトの炎上を防ぐ!PMOが実践するリスクマネジメント【3ステップで実践】

M.M(Project Management Office)
2025-10-30
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プロジェクトのリスク、こんなことで悩んでいませんか?
・何がリスクなのか、そもそも分からない
・漠然とした不安はあるが、どう対処すればいいか分からない
・問題が起きてから対応する、後手後手の状況を改善したい

もしひとつでも当てはまるなら、この記事がお役に立てるかもしれません。
一般的に「リスク」は「危険」(将来のいずれかの時点において何か悪い事象が起こる可能性)を表す言葉と定義されています。ここでは、PMO(Project Management Office)視点で、プロジェクト(案件)を進めるうえでの「リスク」に対する意識や管理についてお届けしたいと思います。

参考コラム:Webサイト制作を成功に導くPMOとは?役割やPMとの違い、必要なスキルまで網羅的に解説

プロジェクトにおける“リスク”とは...

プロジェクトマネジメントにおける「リスク」とは、良い意味でも悪い意味でも、最初に想定・合意した計画、すなわちQCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期/期限)が大きくズレる不確実性を指します。

QCDが大きくズレるのは困りますよね。ですのでプロジェクトでは、リスクの有無や状況にアンテナを張っておく必要があります。リスクの種類や項目 (要因) は図のようなイメージで、ポジティブな影響を及ぼすものもありますが、実際には、よほど大規模なプロジェクトでない限り、「ネガティブ・リスク(マイナスに働く脅威のリスク)」を注視・管理対象とすることがほとんどです。

プロジェクトでよくあるリスクの具体例

プロジェクトのリスクは千差万別ですが、起こりやすいリスクにはいくつかのパターンがあります。ここでは代表的な4つのカテゴリについて、具体的なリスクの発生シナリオと対策のヒントを解説します。

1.人的リソースに関するリスク

プロジェクトは「人」で動いています。そのため、人に関するリスクは最も発生しやすく、影響も大きいもののひとつです。

リスク例1:キーマンへの過度な依存(属人化)

  • どのようなリスクか? 特定の個人のスキルや経験、顧客との関係性に頼りきりになり、その人がいないとプロジェクトが全く進まない状態。

  • 考えられる影響 その担当者が急な病気や退職で離脱した場合、プロジェクトが即座に停滞、または崩壊する可能性があります。また、業務がブラックボックス化し、品質の低下や不正の温床になることもあります。

  • 対策のヒント
    ・ドキュメント化の徹底: 作業手順やノウハウを誰もが見られる形で残す。
    ・ペアプログラミング/ペアワーク: 複数の担当者で同じ作業を行い、知識とスキルを共有する。
    ・定期的な勉強会の開催: キーマンが講師となり、チーム全体のスキルアップを図る。

リスク例2:コミュニケーション不足による認識齟齬

  • どのようなリスクか? チーム内や顧客、関連部署との情報共有が不足し、「言った・言わない」「そんなつもりではなかった」といった認識のズレが生じる状態。特にリモートワーク環境では発生しやすくなります。

  • 考えられる影響 完成間近での大規模な手戻りが発生し、スケジュール遅延やコスト増加に直結します。また、人間関係の悪化やチームのモチベーション低下も引き起こします。

  • 対策のヒント
    コミュニケーションルールの設定: 定例会議の実施、議事録の作成と共有、チャットツールの活用ルールなどを決める。
    認識合わせの可視化: 複雑な要件は図や表を用いて説明し、合意形成の証跡を残す。

2.技術・品質に関するリスク

新しい技術の導入や、複雑なシステム開発には技術的なリスクがつきものです。

リスク例1:仕様変更の多発

  • どのようなリスクか? プロジェクト進行中に、顧客や社内都合で頻繁に仕様変更の要求が発生する状態。

  • 考えられる影響 対応工数が増加し、スケジュール遅延やコスト超過を引き起こします。度重なる変更は、コードの品質低下やメンバーの疲弊にもつながります。

  • 対策のヒント
    変更管理プロセスの確立: 「変更要求は必ず文書で提出」「変更による影響(QCD)を評価し、承認を得てから着手する」といったルールを事前に顧客と合意する。
    プロトタイピング: 早期に動く試作品(プロトタイプ)を作成し、完成イメージの認識を合わせることで、後工程での大きな仕様変更を防ぐ。

3.コスト・スケジュールに関するリスク

プロジェクトマネジメントの根幹であるコストとスケジュールの管理は、常にリスクに晒されています。

リスク例1:見積もりの甘さによる計画破綻

  • どのようなリスクか? プロジェクト開始時の工数や費用の見積もりが不正確で、途中で予算や期間が大幅に不足することが判明する状態。

  • 考えられる影響 予算が底をつき、プロジェクトが中断に追い込まれる可能性があります。無理に続けようとすると、リソース不足から品質が著しく低下したり、メンバーが過重労働に陥ったりします。

  • 対策のヒント
    ・三点見積もり: 最も楽観的な場合(ベストケース)、最も可能性が高い場合(最頻値)、最も悲観的な場合(ワーストケース)の3つのシナリオで見積もり、リスクを考慮した計画を立てる。
    ・バッファの確保: 予期せぬ事態に備え、スケジュールや予算に意図的に「予備(バッファ)」を設ける。

4. 外部要因に関するリスク

プロジェクトは、自分たちのチームだけではコントロールできない外部の要因からも影響を受けます。

リスク例1:関連部署・協力会社の非協力的な姿勢

  • どのようなリスクか? プロジェクトの成功に必要な他部署や協力会社から、期待した協力(情報提供、レビュー、リソース提供など)が得られない状態。

  • 考えられる影響 特定のタスクが全く進まなくなり、プロジェクト全体のボトルネックとなります。関係性の悪化は、将来のプロジェクトにも悪影響を及ぼす可能性があります。

  • 対策のヒント
    ・早期のステークホルダー巻き込み: プロジェクト計画の早い段階から関係者を巻き込み、目的やメリットを共有して「自分たちのプロジェクト」であるという当事者意識を持ってもらう。
    ・役割と責任の明確化: 誰が・いつまでに・何をすべきかを明確にし、文書で合意する。
    これらのリスクは互いに影響し合って発生することも多いため、プロジェクトの初期段階で多角的な視点から洗い出しておくことが、成功の鍵となります。

リスクへの嗅覚

【実践】プロジェクトに潜むリスクの見つけ方・気づき方

リスクを考えるにあたり、よく「あらかじめリスクパターンが一覧化されたものは無いのか?」 と耳にすることがあります。結論から言うと “定型的・包括的にすべてを網羅したリスクの一覧” は ありません。プロジェクトの規模、内容、体制、技術・環境などによって リスクの有無(パターン・度合) は 千差万別 で、進行状況によっても変化するからです。

では、リスクだと察知するセンスはどう高めればいいのか。正直なところ、実経験から鍛えるしかありませんが、まずは下記を意識することが大切です。

  • 自身の立場や目線から“漠然とした不安は全てリスク”と捉えてみる

  • 計画(QCD)に 影響がありそうか という観点で意識する

  • プロジェクト関係者間でお互いの気づきを出し合う

また、過去に類似案件(経験したリスク情報) があれば参考にすることはできます。ただし、事例以外にも今回ならではのリスクは意識する必要があります。弊社でも、プロジェクトの規模に応じて、初動 (RFP、プロジェクト計画、お客様とのやりとりなど) で気になった点や、有識者・関係者へのヒアリングにより出された点(過去案件での知見含む)を「リスク管理表」にまとめるようにしています。

“リスクの見つけかた” の一般例として図のような方法がありますが、見てのとおり誰かひとりで検出することは難しいです。経験や専門的な視点が必要となるため、実際のプロジェクトの中で、関係者・有識者の見解 や過去事例をもとに考え、拾い集めるのが得策です。

すべての不安がリスクではない?管理すべきリスクの見極め方

俯瞰的な視点で考える
“影響範囲が大きい” “負の連鎖が予測される” にも関わらず 懸念の共有や対策をせずに顕在化してしまった場合は、お客様や関係者からの信用も失い、お互いダメージを受けてしまいます。

神経質になり過ぎない
“起こる可能性が低い(稀な)”ことまでリスクとして掲げる必要はありません。過剰な不安を煽り、それを払拭する対応で本来の進行が滞るという事態にもなりかねません。

リスク管理の3ステップ

プロジェクトの中で嗅ぎつけたリスクはどのように管理するのか。大きく3つのステップになります。

1.リスクの洗出し

リスク候補を一箇所に洗い出す。その時点で発覚しているもの、予測されているものなど。

2.リスクの評価分析(対応する優先順位決め)

洗い出したリスクに対して「発生頻度」や「影響度」を確認(イメージ)する。 対応の優先順位を検討・決定する。 リスク対応は「発生頻度」や「影響度」が高いものを優先しつつ、予算や対応コストも踏まえ対応すべき対象を決裁者と協議。

3.リスクへの対応

優先順位が高いものから対策を検討し、対応や状況管理をする。

リスク管理の3ステップ

実践ツール:シンプルな「リスク管理表」のススメ

洗い出したリスクは、Excelやスプレッドシートなどを活用した「リスク管理表」で一元管理するのがおすすめです。関係者全員がいつでも最新の状況を確認できるようにしましょう。

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ポイント

  • 最初にリスクを洗い出すタイミングは プロジェクト開始やプロジェクト計画時

  • 上記のような「リスク管理表」を用いて管理し、常に最新の状況を共有しましょう。

  • プロジェクト進行中は1~3を繰り返してリスク状況を把握

リスクを事前に把握・関係者間で共有し、対策を講じることで、影響範囲を最小限にとどめ、早期解決を図ることができます。

最近されたご相談・よくある質問

Q:リスクを洗い出したら大量に出てきました。すべて管理対象ですか?
A:いいえ、すべてを管理する必要はありません。「発生確率」と「影響度」の2軸で評価し、両方が高いものから優先順位をつけましょう。対応すべきリスクを取捨選択することが重要です。

Q:「課題(Issue)」と「リスク(Risk)」は何が違うのですか?
A:「課題」は既に発生している問題で、すぐに対処が必要です。一方「リスク」は将来起こるかもしれない不確実な事象です。リスク管理は、リスクが課題になるのを未然に防ぐための活動です。

Q:リスク管理表の運用が形骸化しそうです。コツはありますか?
A:週次の定例会議などで「リスク管理表」を確認する議題を設けましょう。状況の変化をチーム全員で共有し、更新する習慣をつけることが、形骸化を防ぎ実用的なツールにするコツです。

最後に

いかがでしたか?プロジェクト(案件)での リスク管理(リスクへの意識)について少しでもイメージしていただけたでしょうか。それぞれの立場や目線だからこそ気づけることもあると思いますので、“リスク管理” という言葉をあまり難しく考えすぎず、プロジェクトに関わった際は、そのときの状況で「QCDに影響する可能性がないか」をぜひ意識してみてください。まずはチームで「私たちのプロジェクトの不安要素って何だろう?」と話し合ってみることから始めるのも、素晴らしい第一歩です。

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執筆者
M.M(Project Management Office)
神奈川県出身。SIerでのSE、PMOを経て、現在はデジタルクリエイティブ業界でのPMOとしてプロジェクトの初動や品質向上の支援に携わる。