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メールマーケティングとは?手法や設計手順・評価指標などポイントを徹底解説!

西村 由香(インハウスマーケター)
2025-10-29
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デジタルマーケティングの手法が多様化する現代において、「メールはもう古い」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし専門家の間では、SNSや検索エンジンにおけるユーザーとのつながりがAIモデルに阻まれる可能性が高まる中で、メールはAIの影響を受けにくい数少ないチャネルのひとつであり、顧客との深い関係構築において中核的な役割を担い続けると予測されています。

メールマーケティングは、「古い手法」どころか、MAやAIといったテクノロジーの進化とともに、今なお進化を続ける「現役最強のマーケティング手法」なのです。

メールマーケティングとは?

メールマーケティングの核心は、「個々の顧客に最適化された(One to One)コミュニケーション」にあります。

従来型の一斉配信メール(いわゆるメルマガなど)が「One to All(1人から多人数へ)」の画一的な情報発信であるのに対し、戦略的なメールマーケティングは、まず顧客の属性、行動履歴、関心度合いに基づき、リストを細分化(セグメンテーション)し、「誰に」「何を」「どのタイミングで」送るかを戦略的に設計します。
そして、顧客リストを管理し、顧客の属性や行動履歴、関心度合いに応じて、最適なタイミングで最適なコンテンツを届けることで、顧客との信頼関係(エンゲージメント)を構築・強化していく戦略的な活動なのです。

この「One to One」のアプローチこそが、顧客に「自分ごと」として情報を捉えてもらい、信頼関係を構築し、BtoBにおける長期的な成果(リード育成、商談化)につながる最大の理由です。

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参考記事:顧客一人ひとりの体験を最適化するOne to Oneコミュニケーションの実現方法

BtoBマーケティングにおける重要性

BtoBビジネスの購買プロセスは、BtoCに比べて検討期間が長く、関係者も複数にわたるため複雑です。Webサイトへの一度の訪問や資料ダウンロードだけで、すぐに商談や受注に至るケースは稀です。だからこそ、獲得したリードに対して、継続的に有益な情報を提供し、自社製品・サービスへの理解を深めてもらい、信頼関係を築きながら購買意欲を醸成していく「リードナーチャリング」が極めて重要になります。

メールマーケティングは、このリードナーチャリングを実行するための最も中心的かつ効果的なチャネルです。

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参考記事顧客の信頼を育むナーチャリング戦略|成果を生み出す具体的な方法とは?

メールマーケティングが「最強の武器」と言われる5つの理由

SNSやチャットツールが普及した現代でも、メールマーケティングが最強の武器と言われ続けるのには明確な理由があります。

理由1:圧倒的に高いROI(費用対効果)

メールマーケティングは、他のデジタルマーケティング手法(Web広告、SNS広告、コンテンツマーケティングなど)と比較して、極めて高いROI(投資収益率)を誇ります。一度配信リスト(自社の資産)を構築してしまえば、比較的低コストで運用を開始でき、MA(マーケティングオートメーション)ツールなどを活用すれば、少ないリソースで大きな成果を生み出すことが可能です。

参考記事:メールマーケティングの費用対効果とは?コスパを高めるツールと4つの手法を徹底解説

理由2:顧客との直接的かつ継続的な関係構築(CRMの基盤)

SNSのタイムラインはアルゴリズムによって表示が左右されますが、メールは顧客の「受信トレイ」というプライベートな空間に直接メッセージを届けることができます。これは、企業が顧客と1対1で、プッシュ型かつ継続的な関係性を築く上で非常に強力なチャネルです。顧客情報を管理するCRM(顧客関係管理)の基盤としても機能します。

理由3:SNS時代でも色褪せない「プッシュ型」コミュニケーションの強み

Webサイトやオウンドメディアは、顧客が自ら訪問してくれるのを待つ「プル型」の施策です。一方、メールは企業側から最適なタイミングで情報を届けられる「プッシュ型」の施策です。顧客の検討状況や行動に合わせて「こちらから働きかける」ことができるため、リード育成や休眠顧客の掘り起こしに絶大な効果を発揮します。

理由4:詳細なデータ取得と効果測定の容易さ(PDCAの回しやすさ)

メールマーケティングは、「誰が」「いつ」メールを開封し、「どのリンクを」クリックしたか、そして「コンバージョン(CV)に至ったか」といった詳細なデータを高い精度で取得できます。これにより、施策の効果測定が容易になり、データに基づいたPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を高速で回すことが可能です。

理由5:顧客体験(CX)向上のための高度なパーソナライズが可能

「理由4」で得られたデータ(属性、行動履歴、関心)に基づき、顧客一人ひとりに合わせたコンテンツを配信する「パーソナライズ」が可能です。例えば、「Aというサービスページを閲覧した人には、Aの導入事例を送る」といった施策です。自分に関連のある情報が届くことは、顧客体験(CX)を向上させ、企業への信頼感とエンゲージメントを高めます。

目的別のメールの主要手法5選

メールマーケティングには、目的やターゲットに応じてさまざまな手法が存在します。ここでは代表的な5つの手法を解説します。

手法

目的

配信対象

配信タイミング

主な用途

メルマガ

関係維持、
ブランディング

全員
(または広範囲)

定期的(週1回など)

ニュース、コラム告知

ターゲティング

CV促進、
ナーチャリング

特定セグメント

任意(不定期)

業種別事例紹介、eBook案内

ステップメール

ナーチャリング、自動化

特定行動者
(例:DL者)

行動起点で段階的

資料DL後のフォロー

リターゲティング

CV促進、
離脱防止

特定行動者
(例:離脱者)

行動起点で即時

カート放棄、ページ離脱

休眠発掘メール

リード再活性化

長期間無反応者

任意(不定期)

特別オファー、近況確認

これらの手法を使い分けることで、顧客フェーズに合わせた最適なアプローチが可能です。

参考記事:メールマーケティングの費用対効果とは?コスパを高めるツールと5つの手法を徹底解説

メールマーケティングの測定指標

メールマーケティングで成果をあげるためには、KPIに合った指標を設定し、継続的に効果測定を行うことが重要です。
代表的な指標として、以下の7つを理解しておきましょう。

指標

意味

有効配信率

配信したメールが生活者のもとに届いた割合

開封率

到達メールが開封された割合、平均値は20%前後と言われている

クリック率(CTR)

メール本文中のリンク・URLがクリックされた割合

読了率

リンク・URL先のコンテンツがどこまで読まれたかを示す割合

コンバージョン率(CVR)

問い合わせや自社製品購入など、施策の目的が達成された割合

エラーメール率(バウンス率)

配信メールが生活者に到達しなかった割合
エラー率が高いと、スパム認定や迷惑メールに振り分けられている可能性があります

解約率(オプトアウト率)

配信先の生活者が自らメール配信登録を解除した割合
顧客満足度が高いコンテンツは解約率が低い傾向にあります

メールマーケティングのメリットとデメリット

強力な手法であるメールマーケティングにも、メリットとデメリットがあります。正しく理解し、対策を講じることが成功の鍵です。

【メリット】

  • 低コストで始められ、高いROIが期待できる
    先述の通り、他の広告手法に比べて配信コストが低く、一度構築したリストは継続的に活用できるため、費用対効果が非常に高いです。

  • ターゲットに合わせた柔軟なアプローチ(One to One)が可能
    データに基づき、顧客の状況や関心に合わせたパーソナライズされた情報提供が可能です。これにより、顧客の満足度と反応率を高めることができます。

  • 効果測定(開封・クリック・CV)が容易で、PDCAを回しやすい
    配信結果が数値データとして明確に出るため、何が良くて何が悪かったのかを分析しやすく、次の施策改善(件名の変更、コンテンツの見直しなど)にスピーディーにつなげられます。

  • MAツールとの連携で高度な自動化・効率化が実現
    MAツールと組み合わせることで、ステップメールやターゲティングメールといった複雑な施策を自動化でき、マーケティング担当者の工数を大幅に削減できます。

【デメリットと対策】

  • 成果が出るまで中長期的な運用が必要
    メールマーケティングは、顧客との信頼関係を時間をかけて構築する活動です。1〜2回の配信で劇的な成果(商談化など)が出ることは稀で、中長期的な視点での運用が求められます。

    対策:短期的な成果(開封率、クリック率)と中長期的な成果(商談化率、LTV)を分けてKPIを設定し、焦らず継続的にPDCAを回す体制を整えましょう。

  • コンテンツ制作の工数がかかる
    読者の関心を引き、価値を提供し続けるためには、定期的なコンテンツ(コラム、事例、eBookなど)の企画・制作が必要です。これが運用上の大きな負担になることがあります。

    対策:既存のコンテンツ(過去のブログ記事、製品資料、セミナー動画など)をメール用に再編集(リサイクル)する、コンテンツ制作の一部をテンプレート化する、MAツールのコンテンツ作成支援機能を活用するなど、効率化を図りましょう。

  • 配信リスト(メールアドレス)の収集が必要
    メールを送るためには、当然ながら配信先となるメールアドレスリストが必要です。質の高いリストを短期間に集めるのは非常に困難です。

    対策:Webサイト上に、読者にとって価値のある「リードマグネット」(例:お役立ち資料、eBook、ホワイトペーパー、無料診断)を設置し、フォーム入力と引き換えにメールアドレス(と配信許諾)を獲得する仕組み(インバウンドマーケティング)を構築・強化しましょう。

  • 迷惑メール扱いや購読解除のリスク:
    配信頻度が多すぎたり、内容が読者の関心と異なったりすると、「迷惑メール」として報告されたり、「購読解除」されたりするリスクがあります。

    対策:必ずオプトイン(配信許諾)を取得し、配信停止リンクを明記します(詳細は後述の法律遵守で解説)。読者のニーズに基づいたセグメント配信を徹底し、「送りたい情報」ではなく「読者が求める情報」を提供する姿勢が重要です。

メールの成果を高める6つの重要ポイント

さらに成果を高めるために意識すべき6つのポイントを紹介します。

ポイント1:ターゲット(ペルソナ)を深く理解し、顧客視点を徹底する

誰に送っているのかが曖昧なメールは響きません。「自社のターゲット顧客は、普段どんな業務に追われ、どんなキーワードに反応し、何を解決したいのか」という具体的なペルソナを深く理解し、そのペルソナに語りかけるようにコンテンツを作成します。

参考記事:BtoBマーケの成果に直結するペルソナ設定。作成手順とBtoCとの違いを解説

ポイント2:パーソナライズで「自分ごと化」を促す

例えば、「マーケティングご担当者様」というメールと、「〇〇株式会社 △△様」というメールでは、後者の方が圧倒的に「自分ごと」として捉えられます。件名や本文に名前の差し込みは基本です。さらに「△△様が以前ご覧になったサービスAの最新事例」といった行動履歴に基づくパーソナライズは、エンゲージメントを劇的に向上させます。

ポイント3:HTMLメールを活用し、視覚的に訴求する

テキストだけのメールは、伝えられる情報量に限界があります。HTMLメールを活用し、製品画像、グラフ、図解、動画のサムネイルなどを効果的に配置することで、読者の理解を視覚的に助け、ブランドイメージの向上にも寄与します。ただし、UI/UXコラムで述べた通り、スマホ最適化とデザインのバランスが重要です。

ポイント4:ランディングページ(LP)の最適化を忘れない

メールマーケティングの失敗でよくあるのが、「メールのクリック率は高いのに、CVRが低い」ケースです。これは、メールのリンク先であるLPに原因があります。メールの件名や本文で訴求した内容と、LPの内容に一貫性がない(例:メールでは「簡単」と訴求したのに、LPでは専門用語ばかり)と、読者は混乱し離脱します。メールとLPの顧客体験を一貫させることが重要です。

ポイント5:シナリオ設計を徹底的に行う

特にリードナーチャリングにおいては、「いつ、誰に、何を、どの順番で」送るかという「シナリオ設計」が成果を左右します。顧客の購買プロセス(認知→興味・関心→比較・検討→導入)を想定し、各フェーズの顧客が求める情報を適切なタイミングで提供するステップメールのシナリオを設計しましょう。

ポイント6:法律(特定電子メール法)とマナーを遵守し、信頼を損なわない

Step 2でも触れましたが、法律遵守は絶対です。オプトイン・オプトアウトの徹底は、単なる義務ではなく、顧客との信頼関係を築くための最低限のマナーです。無理な配信やしつこい配信は、企業のブランドイメージを大きく毀損します。

また、弊社がご支援させていただいた中で、上記ポイントを実施し、メールマーケティングを活用した企業の成功事例を簡単に紹介します。

メールマーケティングの効率化・高度化にはツールが不可欠

メールマーケティングの成果を最大化するためには、目的に応じたツールの活用が必須となります。
本記事で解説したステップやポイントを参考に、目的や体制、予算を改めて設定し、自社に合ったツールを導入・見直しをお勧めします。

・メール配信ツール
大量配信を低コストで行いたい場合に適しています。まずはメルマガから始めたい企業向けです。

・MAツール: リードナーチャリング(育成)、セグメンテーション、ステップメール、スコアリングなど、本記事で解説した戦略的メールマーケティングを行う上で不可欠なツールです。

・CRM / SFA(顧客管理 / 営業支援)ツール
MAで育成した有望リードを営業部門に連携し、商談プロセスを管理するために使用します。MAとCRM/SFAを連携させることで、マーケティング活動がどれだけ売上に貢献したかを可視化できます。

参考記事:MAツールにできること5選!MA導入に悩む企業にむけてわかりやすく解説
参考記事:メールマーケティングツールおすすめ6選!選び方のポイントと成果を出すコツを解説
参考記事:MA(マーケティングオートメーション)の導入コストと効果について


メールマーケティングの第一歩を踏み出すために、本記事で解説したメールマーケティングの基本戦略から具体的な実践ステップまでを詳細にまとめた無料eBook『メールマーケティングの始め方完全ガイド』をご用意しました。「何から手をつければいいか分からない」「自社のメール施策を見直したい」とお考えのご担当者様は、ぜひこの資料をダウンロードし、貴社のリード獲得・育成活動にお役立てください。

メールマーケティングに関するよくあるご質問

Q. メールマーケティングとは何ですか?メルマガとの違いは?

A. メールマーケティングとは、Eメールを活用して顧客と継続的な関係性を構築し、商談創出やファン化といった最終的なゴールへと導くための一連の「戦略的な活動」全体を指します。一方、メルマガ(メールマガジン)は、主に情報の一斉告知を目的とした「手法のひとつ」です。戦略的なメールマーケティングでは、メルマガのような一斉配信だけでなく、顧客の属性や行動履歴に基づいて内容を最適化する「One to One」のアプローチ(セグメント配信やステップメールなど)が重要となります。

Q. メールマーケティングの主なメリット(目的)は何ですか?

A. メールマーケティングの主なメリットは、獲得したリード(見込み客)との中長期的な関係性を構築し、購買意欲を高めていく「リードナーチャリング(育成)」が可能な点です。また、他のデジタル広告手法と比較してROI(費用対効果)が極めて高いこと 、顧客と直接的・継続的な接点を持てること、詳細なデータ(開封、クリックなど)を取得しやすく効果測定が容易なこと などが挙げられます。

Q. メールマーケティングを行う上での注意点や法律はありますか?

A. 最も重要な注意点は、「特定電子メール法」という法律を遵守することです。この法律では、原則として配信に同意した人(オプトイン)にのみメールを送ること、メール本文内に配信者の情報(会社名、住所など)や配信停止(オプトアウト)の方法を明記すること が義務付けられています。これらに違反すると罰則の対象となるため、必ず遵守する必要があります。

執筆者
西村 由香(インハウスマーケター)
デジタルマーケターとして事業会社にマーケティングオートメーションの運用設計/ノウハウを提供、人材サービス企業の4事業部を統括するデジタルマーケティング責任者として従事。2023年より博報堂アイ・スタジオにて自社のデジタルマーケティングの仕組を構築・運用する傍ら、クライアント業務も実施。