1. はじめに:なぜPMOが今、注目されるのか?
現代のビジネスにおいて、企業のWebサイトは顧客との重要な接点であり、ビジネス戦略の中核を担っています。そのため、Webサイトの構築やリニューアルは、単なるWeb制作ではなく、事業の成長を左右する一大プロジェクトとして位置づけられます。
しかし、これらのプロジェクトは、関係者の多さ、技術的な複雑さ、多様な要望の調整など、多くの課題を抱えています。こうした課題の中で、プロジェクトが円滑に本来の形で進むよう支援する役割として、近年注目されているのが「PMO(Project Management Office)」です。
PMOはプロジェクトマネジメントの専門知識と経験を活かし、プロジェクトの進行を滞りなく進めるために現場を下支えします。特にWebサイト構築やリニューアル案件では、さまざまな専門家が関わるため、PMOが関与することでプロジェクトの運営が安定し、多くの課題が適切に整理・解決されやすくなります。
2. PMOとは?その基本的な役割とは?
PMO(Project Management Office)とは、組織内のプロジェクトマネジメントを標準化・最適化し、プロジェクトの成功率を高めるための部署や機能、あるいはその活動全体を指します。博報堂アイ・スタジオ(以下、アイスタ)のPMOは、「“当たり前”のプロジェクト運営が自然に実践できること」を目指し、プロジェクトごとに最適な形で柔軟に寄り添うサポート役です。
PMOの主な役割
プロジェクト支援:計画策定、進捗管理、課題・リスク管理、コミュニケーション支援など、各プロジェクトの実務的なサポート
標準化:プロジェクトマネジメントのプロセス、ツール、テンプレートの標準化による全体の品質向上
業務効率化・自動化:定型業務や繰り返し作業の自動化・効率化推進で現場負担を軽減し、成果へ集中できる環境を作る
ナレッジの蓄積・展開:プロジェクトごとで得られた知見やノウハウを組織全体で共有し、現場とマネジメント力の底上げにつなげる
PMOは、単なる「作業請負」や「お手伝い」ではありません。プロジェクトマネジメントの知見と経験を活かして課題の本質に迫り、積極的に支援する存在です。その責任範囲は、プロジェクト状況や特性をヒアリング・分析し、問題・課題・リスクの抽出・整理から、必要な対策・改善案の提案と実践支援にまで及びます。
3. サイト構築・リニューアル案件におけるPMOの支援内容
PMOは、プロジェクトの各工程で現場の実情や課題に合わせて柔軟に支援を提供します。主なサポートは次のとおりです。
【プロジェクト開始前・計画フェーズ】
提案支援・RFP作成
クライアントの要求整理やRFP(提案依頼書)作成をサポートし、要件や仕様を具体化します。必要に応じて提案書の一部作成や計画アドバイスも行います。計画立案・管理体制構築
プロジェクト計画書や要件定義書、WBS等のドキュメント作成の支援、管理ツール・テンプレートの提供、「管理ルール」策定についても助言します。
【プロジェクト進行中】
進捗・課題・リスク管理
進捗状況や発生した課題・リスクを整理し、適切な対応策を現場と協力して推進します。進捗報告書や議事録作成、定例会議の運営補佐も担当します。関係者調整・合意形成支援
プロジェクトに関わる複数部門、クライアント、外部パートナーなどとの連絡調整や論点整理、説明資料の用意など、合意形成まで一貫してサポートします。品質管理・ドキュメント整備
標準的なプロセスやドキュメントの整備、現場事情に合わせたカスタマイズ提案などで、品質の維持・向上を図ります。
【効率化・知見の横展開】
業務効率化・自動化
繰り返し作業や定型業務の自動化、効率化の提案と実装を推進。AIやITツールの活用を通じ、現場の負担軽減に努めます。ナレッジ共有・人材育成
プロジェクトで得られた知見やナレッジを蓄積・展開し、他案件や社内教育にも活用。必要に応じてPM人材の調達支援にも関わります。
PMOは、現場の「当たり前」の水準を維持・底上げし、プロジェクトが円滑に進むよう常に伴走する存在です。案件ごとに異なる課題やニーズを踏まえ、状況に応じた的確なサポートを提供します。
4. アイスタにおけるPMOの一例
アイスタでは、各フェーズで、20年以上培ってきたノウハウを活かした雛形が多数存在します。以下に、一例をご紹介します。
例えば、とても基本的なことですが、
【プロジェクト開始前・計画フェーズ】
提案支援:Webサイトリニューアル時

Webサイトリニューアル時に最低限必要なRFPの内容を把握しているので、得意先から提供されたRFPにこれらが未記載であれば、その旨相談し、気づきを与えることができます。RFPの作成を支援する際は、ヒアリングを通し「実現したいことは本当にそのアウトプットでよいのか?」を提示します。
計画立案・管理体制構築

アイスタ共通のプロジェクト計画書には、プロジェクト概要やスコープはもちろん、品質、要員・資源、コミュニケーション、リスク、情報セキュリティー、構成管理・文書管理・記録管理、調達、ステークホルダーなど、細かな点もヌケモレがないよう、かつ、誰が見ても分かるようドキュメント化しています。
要件定義書も同様に、要件概要、機能要件、インフラ・サーバー要件、性能要件、アクセシビリティ要件、セキュリティー要件、SEO要件、品質要件、移行要件、運用・保守要件など、必須要件が誰でも分かり、すぐに取り組めるようになっています。
これらは一例であり、個人のスキルやノウハウに依存しないような、プロジェクトに最適な100を超える雛形やテンプレートがあります。それをベースに、個別案件に適した人選と体制で、常にクオリティを担保しています。
博報堂アイ・スタジオ ユーティリティ リスト(一部)

プロジェクトの全体を把握し、軌道にのせる中心となるのがPMOの役割です。
5. 単なる「作業請負」ではないPMOの価値
アイスタのPMOは、管理表やルール作成の“お手伝い”にとどまりません。
クライアントや他部門との調整、リスクコミュニケーション、さらには体制や進め方の見直しなど、本質的な領域まで踏み込んでサポートします。一時的な問題解決にとどまらず、現場の力そのものを底上げし、「当たり前」の品質が自然と守られていく現場づくりを目指します。支援の中で得た知見やノウハウは組織に蓄積し、他のプロジェクトへも横展開。会社全体のマネジメント力向上・現場力強化にも貢献します。
現場が十分に自走でき、「当たり前」がしっかり定着したと感じた時点で、PMOは徐々に役目を終えます。
6. まとめ:PMOが実現する「当たり前」と現場力強化
Webサイト構築やリニューアルのプロジェクトでは、関係者や要件の多様化に伴い、現場の課題も複雑になりがちです。PMOは経験と知見を生かして最適なサポートを行い、「当たり前」の品質やプロセスが自然と守られる現場づくりを後押しします。
作業支援の枠を超えて、組織にノウハウを横展開し、現場自身の継続的成長や自立を促すのがPMOの本質的な役割です。現場が課題を自ら解決できる風土を共につくり、全体の成長を目指していきましょう。
※こんなお悩みはありませんか?
今のプロジェクトの進め方に自信が持てない
要件定義や計画策定でつまずいている
外部の視点で課題やリスク整理をしたい
関係者調整や合意形成がうまく進まない
理由はわからないが現場がギクシャクしている
どんな小さなことでも構いません。アイスタのPMOは、現場の「当たり前」を支えるパートナーとして、皆さんと一緒により良いゴールを目指します。
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