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コーポレートサイトは本当に投資すべき対象なのか?成果につながるWebサイトに必要な“最初の問い”

久保 詩音(ビジネスプロデューサー)
2026-07-08
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「デザインが古くなったから」「前回のリニューアルから数年経ったから」——。こうした理由をきっかけにプロジェクトが立ち上がることは少なくありません。しかし、コーポレートサイトを企業成長を牽引する強力な武器にするためには、見た目や機能を刷新する前に、まず向き合うべき問いがあります。

それは、「誰に、何をしてもらいたいWebサイトなのか」です。

本コラムでは、多様なステークホルダーの期待に応え、ビジネス成果やブランディング、インナーモチベーション向上へと繋げる具体的なアプローチを解説します。

多様なステークホルダーと、変化するコーポレートサイトの役割

リニューアルを成功させる第一歩は、「誰のために、何を変えるのか」を整理することです。これは、コーポレートサイトを取り巻く多様なステークホルダーが寄せる期待や、Webサイトが果たすべき役割が一様ではないためです。

次のように対象によって求めるゴールは大きく変わります。

【エンドユーザーや販売パートナーに対して】
選ばれる理由を伝え、見込み顧客との接点を生み出す「営業・マーケティングの装置」

【株主や投資家に対して】
企業の透明性や将来的な成長性を実証する「信頼構築の基盤」

【求職者に対して】
自社のカルチャーや提供価値を正しく伝える「エンゲージメントの場」

このように、目的は1つではなく、誰の、どのような行動を促したいかという目的の数だけ役割が存在します。自社にとってどのステークホルダーとの関係を強化すべきなのか、その力点を明確にすることが不可欠です。

ステークホルダーごとの期待値と役割の整理

リニューアルの設計図を描くために、コーポレートサイトを取り巻く多様なステークホルダーが持つ「期待値」と、それに対して「Webサイトが果たすべき具体的な役割」を構造的に整理し、それぞれの関係性をまとめました。

① 導入検討企業/顧客(生活者・取引先など)

【期待値】
業務効率化、コスト削減、環境配慮など、自社が直面している具体的な課題に対する解決策を求めている。また、取り扱い商材のスペックだけでなく、提案・導入から運用支援に至るまでのサポート体制を確認し、信頼できる取引先であるかを判断したい。

【Webサイトの役割】
顧客の課題に寄り添った具体的なソリューションや、自社ならではの事業内容・強みを明確に提示すること。安心感を与えて理解を促進し、問い合わせや成約へと迷わず導く「ビジネス機会創出の獲得インフラ」としての役割を担う。

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② メーカー・ベンダー/販売パートナー

【期待値】
販路拡大や市場浸透に向けた強力な支援体制、および販売支援基盤の強化を求めている。数ある企業のなかから「自社と組む意義」を見極めるため、全国展開力やパートナー網、具体的な展開支援の仕組みなどを知りたいと考えている。

【Webサイトの役割】
市場開拓や案件創出を後押しし、パートナーの提案力を強化するための有益な情報を提供すること。企業の理念やビジョン、独自の強みを伝えることで、一過性ではない「強固なパートナーシップの構築に寄与する基盤」となる。


③ 株主・投資家/アライアンス企業

【期待値】
中長期的な投資や提携の判断材料として、企業価値の深い理解を求めている。具体的には、今後の成長戦略、市場における立ち位置と競争優位性、新領域への展開、および不透明な時代を勝ち抜くための経営方針を確かめたい。

【Webサイトの役割】
機関投資家やスポンサー、提携検討企業に対して、企業の将来性や格付け、透明性の高い財務情報を正しく示すこと。適切な投資判断を支援し、「市場や社会からの確かな信頼を獲得する場」として機能する。

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④ 求職者(新卒・中途・エージェントなど)

【期待値】
採用競争力に関わるリアルな実態を知りたいと考えている。募集要項のような表面的な情報だけでなく、会社の特徴、働く魅力、入社後の成長機会、リアルな社風、事業の将来性、そして日々の働く環境などを求めている。

【Webサイトの役割】
Webサイトの役割: 企業のありのままの魅力を正しく、かつ魅力的に発信することで、求職者の応募意向を最大化すること。ミスマッチのないエンゲージメントを生み出し、「採用基盤を長期的に強化するブランディングの場」となる。

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⑤ 社会(地域住民・メディア・自治体など)

【期待値】
企業の全体概要や健全性を把握すると同時に、地域社会への貢献度や、サステナビリティ・CSR(企業の社会的責任)に対する具体的な取り組み姿勢、倫理的な行動基準を知りたいと考えている。

【Webサイトの役割】
社会的責任をしっかりと果たしている企業としての安心感・信頼感を醸成すること。社会全体に対してオープンで適切な情報発信・PRを継続し、「企業の社会的評価を高めるステートメントの窓口」となる。

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⑥ 社員(アルバイトや家族含むインナー)

【期待値】
日々の業務効率化や、Webサイト運用における負荷の軽減を求めている。具体的には、Webサイト上でのFAQや情報集約による顧客からの問い合わせ対応の効率化、情報の更新しやすさ、顧客への説明負荷の軽減などを期待している。

【Webサイトの役割】
誰もが扱いやすく、情報が整理された基盤を整備することで、業務効率の向上や運用負荷の軽減(UXの改善)を実現すること。同時に、社員やその家族に企業の理念や目指す姿を届けることで、「誇りとエンゲージメントを高めるインナーインフラ」としての役割も果たす。

Webサイトの役割を整理するためのフレームワーク

Webサイトの役割や目的を整理するためのシンプルなフレームワークとして、「Who」「What」「How」「Goal」の4項目を定義するアプローチがあります。

以下の4点を明確にすることで、Webサイトの果たすべき役割の解像度を高め、事業貢献につながる整理を行うことができます。

1. Who:誰を対象とするか?

まずはターゲットとなる相手を広げ、そこから優先順位を絞り込んでいきます。

ステークホルダーの洗い出し

コーポレートサイトを訪れるあらゆるステークホルダー(導入検討企業、パートナー、求職者、投資家、社員、地域社会など)を幅広く抽出します。

ターゲットの重み付け(優先順位付け):洗い出したステークホルダーを、「toB向け / toC向け」や「Webサイトにおける重要度(高 / 低)」といったマトリクスを用いて整理し、優先順位をつけます。

ペルソナの設定: 優先度の高いターゲットに対しては、具体的な人物像(ペルソナ)を設定し、彼らが何を考え、どんな課題を抱えているかを深く解像度を上げて理解します。


2. What(何を伝えるか?)

 設定したターゲットに対して、企業として提供すべき価値やメッセージを言語化します。

提供価値の抽出と言語化: 企業としてどのような価値を届けられるのか、キーワードを抽出してグループ化し、提供価値を言語化します。

ステークホルダーごとの価値定義:各ターゲットが求めている情報と、企業が伝えたい強みを照らし合わせます。例えば、顧客には「課題に対する具体的な解決手段」、求職者には「働く魅力や成長機会」など、各ターゲットに対する提供価値を明確に定義します。


3. How(どのようにするか?)

定義した「What」を、具体的なWebサイト体験(UX)やコンテンツへと落とし込みます。

カスタマージャーニーの作成:設定したペルソナが、どのような行動や思考プロセスを経て目標を達成するか(ユーザージャーニー)を可視化します。

UXコンセプトと機能の定義:理想とするWebサイト体験(UXコンセプト)を定め、それを実現するためにはどのようなコンテンツや機能が必要かを具体化します。

導線の設計:ターゲットごとの異なるニーズに合わせて、目的別に入り口(導線)を分け、ユーザーが迷わずに必要な情報へとたどり着ける構造を設計します。


4. Goal(何を目指すか?)

Webサイトを通じて「誰が、何をしたら成功か?」という最終的な状態を定めます。

行動・心理変容の定義:ターゲットに情報を伝えた結果、各ターゲットに「何をしてほしいのか」「どう感じてほしいのか」を明確にします。

具体的な成果の設定:単なるサービスや企業概要の理解にとどまらず、「自社の課題を解決できそうだと期待を持ち、相談をしたくなる(相談機会の創出)」「企業の将来性を感じて応募意向が向上する(採用基盤強化)」など、事業貢献につながる具体的な成果をゴールとして設定します。

このように、「誰に」「何を」「どうやって」伝え、「最終的にどうなってほしいのか」を順序立てて具体化していくことで、戦略的で効果的なコーポレートサイトの基盤を作ることができます。

複数のステークホルダーは当たり前。問われる優先順位の明確化

コーポレートサイトには多様なステークホルダーが存在し、それぞれ異なる期待を寄せています。プロジェクトを進める際、よく陥りがちなのが、すべての関係者のニーズを100%均等に満たそうとすることです。

「営業のリードも増やしたいし、採用の応募も増やしたい。株主向けのIRも目立たせたいし、社内の運用負荷も下げたい……」

すべての要望を並列のまま詰め込もうとすると、主役が誰だかわからない、網羅されているだけで特徴のないWebサイトになってしまいます。これでは、せっかくの投資も無駄になってしまいます。

目的の主従を決める重要性

現実のコーポレートサイトの運用において、目的が1つだけというケースはほとんどありません。複数の目的が共存することになります。だからこそリニューアルにおいて大切なのは、「最も解決したい最優先課題(主目的)はなにか」、そして「次に重要な目的(従目的)はどれか」という、優先順位を明確にし、プロジェクトメンバーの総意にすることです。

以下のように自社の経営フェーズやビジネスモデルによって、力点を置くべき主目的は変わります。

■例1:「2030年までに市場シェアを2倍にする」という事業成長フェーズにある企業

最優先すべきは「導入検討企業/顧客」や「販売パートナー」の開示を強化し、新規案件を生み出す「ビジネス機会の創出(マーケティング・インフラ)」へ予算とリソースを集中させるべきです。

■例2:激しい人材獲得競争のなかにあり、組織の若返りや専門人材の確保が急務である企業

今回のリニューアルの主目的を「採用ブランディング」に振り切り、求職者に響くカルチャー発信や働く環境の可視化を最上階層に据えるのが正解かもしれません。

何を優先するかのプライオリティ付けがブレない指針になる

要件定義の段階で、経営陣や各部門のステークホルダーと「今回の優先順位」について徹底的に議論し、合意形成をしておくこと。これこそが、その後のデザインや情報構造の設計において意見が割れたときのブレない指針になります。

この意思決定があって初めて、多様なターゲットを迷わせない具体的な導線設計のフェーズへと進むことができます。

PMO視点でのコントロール

多様なステークホルダー間の要望を整理し、合意形成へと導く上で、大規模サイトになればなるほど、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)による客観的なプロジェクト管理とファシリテーションが極めて重要な役割を果たします。

各部門から「あれも載せたい」「これも重要だ」と挙がる声は、どれも現場の切実なニーズであり、単に声を大にする関係者の意見だけを優先してはWebサイト全体の一貫性が失われてしまいます。

PMOは、俯瞰的な視点から各部門の要望を定量・定性的に評価し、経営戦略に紐づく「リニューアルの本質的なゴール」に照らし合わせる役割を担います。主従の整理やプライオリティ付けのプロセスにおいて、社内の利害関係から独立した中立的なクッション役(伴走者)として機能することで、感情論を排除したロジカルな意思決定と、ブレない合意形成を強力に後押しするのです。

参考記事:PMOとは?役割や導入のメリット、PMとの違いをプロがわかりやすく解説

目的の明確化で、コーポレートサイトを企業の強力な武器に

デザインの素敵さや、システムの目新しさは、課題を解決するための手段に過ぎません。

リニューアルを本当の成功に導くために不可欠なステップは、自社を取り巻く多様なステークホルダーの期待値を網羅的に整理し、経営戦略と照らし合わせながら「最も優先すべき目的はなにか」という優先順位の意思決定を行うことです。

「何のために変えるのか」という目的が定まったとき、コーポレートサイトは単なるデジタルの会社案内ではなく、企業の成長を力強く牽引する「強力な武器」へと生まれ変わります。

社内や経営陣を説得し、本当に価値のあるリニューアルを進めるために、まずは「誰に、何を果たすべきか」の整理から始めてみませんか?私たち博報堂アイ・スタジオは、その目的を共に考え、定義し、理想のユーザー体験を要求仕様へと落とし込んでいく「要件定義」の段階から伴走いたします。

参考コラム:Webサイト制作の要件定義とは?進め方や必要なスキル、成果物を解説

よくあるご質問

Q1. 社長や他部署から「あれもこれも載せたい」と要望され、Webサイトがごちゃごちゃになりそうです。どう整理すればよいでしょうか?

A1. 「ステークホルダーごとの期待値」を一度すべて並べ、経営戦略に照らし合わせて「主」と「従」の優先順位を明確に合意形成しましょう。

すべての要望を均等にすると、誰のためにもならないWebサイトになってしまいます。まずはステークホルダー(顧客、パートナー、投資家、求職者、社員、社会)の整理シートを用いて社内ワークショップなどを行い、今回のリニューアルで最も獲得・強化したいターゲット(主目的)を絞り込みます。優先順位の合意さえ取れれば、デザインや配置の議論で意見が割れたときも「今回は〇〇(主目的)を最優先するルールだから」と、建設的に判断できるようになります。

Q2. デザインのトレンドに合わせることは、リニューアルの目的として不十分ですか?

A2. 不十分ではありませんが、「デザインを変えた結果、誰にどう動いてほしいか」という行動変容の目的までセットで定義する必要があります。

「デザインが古い」というのは離脱の一因(企業の信頼感の低下)にはなりますが、見た目を綺麗にするだけではビジネスの成果は生まれません。例えば「デザインを刷新することで、求職者に先進的な社風であることを伝え、応募数を1.5倍にする」「図解を増やしてB2B顧客の理解を促し、問い合わせのハードルを下げる」といったように、デザインの変更を「どのステークホルダーの、どんな課題を解決するための手段にするか」に紐付けることが大切です。

Q3. RFP(提案依頼書)は、やはり自社で作らなければいけないでしょうか?

A3. 決してそんなことはありません!むしろ、RFPを作る前のモヤモヤした状態からご相談ください。

自社だけで課題を洗い出し、RFPにまとめるのは非常に時間と労力がかかります。博報堂アイ・スタジオでは、ヒアリングやワークショップを通じて、ご一緒に課題を言語化していくプロセスから伴走いたします。


多様なステークホルダーの期待値と役割を網羅し、コーポレートサイトのあるべき姿をまとめた「成果を生み出すコーポレートサイト戦略eBook」を無料で配布しています。コーポレートサイトリニューアル検討時の参考としてご活用ください。

執筆者
久保 詩音(ビジネスプロデューサー)
フリーランスでデザイナー、エンジニア、映像エディターとして活動し、起業を経て2016年入社。現在は戦略プランニング部門を管掌し、ビジネスプロデューサーとして事業課題の抽出から戦略策定、実行フェーズの伴走支援まで担う。
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