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技術の力でビジネスを形にする。私が考える「テクニカルディレクター」という在り方

北原 成貴(テクニカルディレクター)
2026-02-23
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突然ですが、みなさんは「エンジニア」という職種に対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

・ パソコンに向かって、黙々とコードを書いている人
・ 仕様書通りに、きっちりと機能を形にしてくれる職人
・ 技術へのこだわりが強くて、専門的な話が多いかも…

このように「ものづくりの職人」といった印象を持たれることが多いかもしれません。もちろん、技術を極め、品質の高いプロダクトを作ることはエンジニアとして最も大切な素養であり、大きな魅力です。

しかし、私は博報堂アイ・スタジオ(アイスタ)で「テクニカルディレクター(TD)」としてプロジェクトに関わる際、従来のエンジニアリングとは少し異なる領域にも踏み込むことを意識しています。日々クライアントの課題に向き合う中で、私の仕事はコードを書くことだけには留まりません。

「作りたいビジョンはあるが、技術的な実現方法がわからない」
「制作会社に意図が伝わらず、プロジェクトが停滞している」

もしこの記事を読んでいるあなたが、そんな悩みを抱えているなら、TDという職種がその課題解決の一助になれるはずです。 

今回は、技術とビジネスの両軸をつなぎ、プロジェクトを成功へ導くために私が大切にしている「テクニカルディレクター」としての役割と提供価値について、具体的にお伝えします。

私が考えるテクニカルディレクターの役割

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私自身の役割を「技術とビジネスの両軸をつなぐ通訳者」であり「伴走者」であると定義しています。

エンジニアリングにおいて「決まったものをどう作るか」という実装領域は非常に重要です。
私はそこに加え、「なぜ作るのか」「誰のために作るのか」というビジネスの背景を深く理解することを重視しています。
その上で、技術を用いてビジネス価値を最大化することをミッションとしています。

もちろん、単に調整や会話が得意なだけではTDは務まりません。プロジェクトを技術的に成功させる知見があることは大前提。
その上で、クライアントやチームメンバー、関わる全ての人たちと視点を合わせ、ビジネスを成功へ導くための「視座」を持つこと。これが、私がTDとして働く上で最も大切にしているスタンスです。

参考記事:多様な経験を積み上げた先で得たTDとしてのバランス感覚とディレクション力

なぜ、テクニカルディレクターが必要なのか?

具体的に、私がTDとしてプロジェクトに参画する際、どのような貢献ができると考えているか。日々の業務で意識している3つのポイントをご紹介します。

1. 最適な技術を選び抜き、その価値を誰もがわかる言葉で「翻訳」する

課題に対し、「この技術をこのように使えば解決できます」と提案できる実装力・技術選定力がベースです。
しかし、それだけではありません。私はその複雑な技術選定の根拠を、エンジニアではない方にも「なるほど!」と腹落ちしていただけるよう、噛み砕いて伝えることを意識しています。

専門用語の壁を取り払い、図解やデモを使って仕組みを可視化することで、技術的な確信をクライアントの安心感へと変える。
この翻訳能力があってこそ、プロジェクトを正しい方向へリードすることができると考えています。

2. 複雑なステークホルダーの交通整理役になる


大規模なプロジェクトや、複数のベンダーが関わるプロジェクトでは、「誰に何を相談すればいいかわからない」「指示系統が複雑化して調整が進まない」という事態がよく起こります。 

「技術的な可否の判断がつかず、各社の言い分に板挟みになってしまう」
そんなときこそ、TDが間に入ることで状況を整理できると考えています。

技術的な知見を持った上で、各社の状況や技術的な制約を整理し、「A社にはこの部分を、B社にはこの部分をお願いしましょう」と線引きをすることで、プロジェクト全体を円滑に進めるハブとしての役割を果たします。

3. 「何を作るか」の段階から伴走し、実現可能性を最大化する

仕様が決まってから呼ばれるのではなく、「何を作ればいいかまだふわっとしている」段階からでも、TDはプロジェクトに参画すべきだと考えています。

クライアントが抱えている本当の課題は何か。それを解決するための技術的な最適解は何か。
プロジェクトの企画段階から参画し、最適な技術選定、システムアーキテクチャ設計、技術リソースの確保など、技術的な「戦略」を立てるのも私の仕事と考えています。

もちろん、具体的に何を作るかが決まった後の要件定義や基本設計など、実装に向けた制作フローも経験と知識があるので、プロジェクトの最後まで伴走することが可能です。

エンジニアリングスキルをどう「拡張」させるか

一般的にシステム開発の現場では、仕様通りに高品質なものを作り上げる能力が求められます。
私もエンジニアとしてのバックグラウンドを持っているため、当然その重要性は理解していますし、詳細設計や実装の勘所も持っています。

その上で、私がテクニカルディレクターとして提供したい価値は、そのエンジニアリングスキルを「作る前」や「ビジネスの核心」にまで広げることにあります。

実装者としての視点: どう作るか、品質をどう担保するか。
TDとしての視点: それを作ることでビジネス課題は解決するか、技術的に最も効率的な手段は何か。

エンジニアとしての「作れる」知見をベースに持ちながら、技術の裏付けがあるからこそできる現実的なプランニングや要件定義を行う。
いわばエンジニアリングの領域をディレクション側にまで拡張し、プロジェクトを成功へ導くための「技術の羅針盤」となることが、私の目指す在り方です。

私が大切にしている「テクニカルディレクター」としての立ち振る舞い

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TDのあり方に正解はありません。実際の現場は千差万別です 。だからこそ、私自身の経験と判断でプロジェクトに向き合っています。 ここで、私が実際に担当したプロジェクトでの経験を2つご紹介します。

1. プロジェクトの安定とガバナンスを守る

1つ目は、某独立系専門商社における事例です。
複数のWebサイトを安全かつ高品質に運用するためのプラットフォーム構築・運用に携わっています。

大規模なプロジェクトや複数のベンダーが関わる環境では、技術的な判断基準が曖昧になりやすく、放置すればセキュリティーリスクや進行の遅延につながりかねません。

まず、セキュリティーガバナンス向上に向けた施策提案においては、単に教科書通りの一般論を提示するのではなく、プロジェクトメンバーと議論を重ねました。現場の実装レベルでどのようなリスクが想定されるのか、それを最小化するために最も現実的かつ効果的な手法は何か。納得感のあるプランを練り上げることで、クライアントに対しても「なぜこの対策が必要なのか」という技術的根拠を明確に示し、プロジェクトの質を一段引き上げることができました。

また、利用しているクラウドサービスのアップデート対応においても、TDとしての介在価値を発揮しました。システムを維持する上でアップデートは不可欠ですが、クライアントにとっては業務への影響や必要性が見えにくいものです。そこで、アップデートの技術的な背景を丁寧に紐解き、実施することの重要性を噛み砕いてご説明することで、深い理解と合意を得ることができました。

さらに、複数のベンダーが関わる体制の中では、認識の相違を防ぐためのハブとして機能しました。アップデートに伴う作業手順書を自ら作成し、全ベンダーへ共有・徹底することで、共通の品質基準で作業を進められる体制を整えました。社内メンバーとも密に連携し、緻密なスケジュール管理を徹底した結果、事故なく安全にアップデートを完遂することができました。

この経験から、TDは単に「作る」だけでなく、「ビジネスを止めないための仕組みを整え、関係者全員が同じ方向を向くようリードする」存在であるべきだと強く実感しています。

2. 翻訳でプロジェクトの停滞を打破する

先ほどの事例がガバナンスや体制に重きを置いたものだとすれば、もう1つは具体的な要件を整理し、合意形成を加速させる立ち振る舞いです。

過去に担当したある大規模なシステム改修プロジェクトでのこと。
そのプロジェクトでは、各ユーザーフローが未整備のままで、クライアントを含めチーム全体が「具体的にどのような画面仕様に落とし込めばいいのか決められない」という状態に陥っていました。

そこで私は、状況を打開するために、まずは手元にある大量の仕様書や要件をすべて読み解き、それらを「誰が見てもわかるフロー図」に書き起こすことから始めました。

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専門的な技術用語で書かれたテキストの羅列を、視覚的に理解できる「図(仕組みの流れ)」へと翻訳し、ユーザーフローの提案を行いました。

その結果、クライアントとの合意形成を非常にスムーズ、かつ、スピーディーに行うことができました 。技術的な難易度が高いプロジェクトほど、そのしわ寄せは後半の開発工程に行きがちです。しかし、プロジェクトの入り口でTDが要件を噛み砕き、エンジニア以外の人でも理解できる共通言語に変えておくことで、手戻りを防ぎ、プロジェクト全体を前進させることができます。それこそがTDとしての価値を発揮する瞬間だと感じました。

最後に

このように、私は単なる「開発者」の枠を超えて、みなさんのビジネスを加速させるパートナーでありたいと考えています。
技術的な専門性はもちろんですが、それ以上に「どうすればこのプロジェクトが成功するか」を、みなさんと同じ熱量で考え抜く姿勢を大切にしています。

・ こんなことを実現したいけれど、技術的に可能かどうかわからない
・ 今の開発体制に不安がある
・ もっとビジネス視点で話ができるエンジニアと仕事がしたい

そんなときは、ぜひお気軽にご相談いただければ幸いです。

執筆者
北原 成貴(テクニカルディレクター)
2020年博報堂アイ・スタジオ入社。千葉県出身。
主にECサイトのシステム運用やヘッドレスCMSを用いた中〜大規模のサイト構築を担当。近年は要件定義やシステムアーキテクチャの設計など、上流工程にも注力。趣味はライブ、競馬、お酒。ライフワークは演劇。