Webサイトにまた新しい前提変化が起きている
こんにちは。博報堂アイ・スタジオで執行役員を務める生田です。
これまで長く企業のWebサイトやオウンドメディアに携わっていると、数年ごとに「前提が変わる」瞬間に立ち会うことがあります。
インターネットが一般化したころ、企業はまずPC向けのWebサイトを持つことが重要でした。その後、スマートフォンが生活者の主要な接点になり、Webサイトはモバイルファーストで設計されることが当たり前になりました。
さらに、ブログやソーシャルメディアが普及したことで、企業は単に公式情報を掲載するだけでなく、継続的に発信し、生活者と関係性を育てていく必要に迫られました。オウンドメディアという考え方が重要になったのは、この流れのなかにあります。
そして今、生成AIやAIエージェントの登場によって、もう一度大きな変化が起きています。

生活者は検索エンジンにキーワードを入力し、検索結果のリンクを1つずつ開いて情報探索するのはとても面倒に感じるようになってきました。AIに自然文で相談し、AIが複数の情報を要約し、比較し、次に取るべき行動を教えてくれる。いや、それすらなくなって、日々の行動データから先回りして知りたいこと・やりたいことはもう代行しておいてくれる。そんな情報探索のあり方が、少しずつ日常に入り込んでいます。
この変化は、企業のオウンドメディアにとって非常に大きな意味を持ちます。これからのWebサイトは「訪問された後に読まれる場所」であると同時に、「訪問される前にAIが参照する情報源」になっていくからです。
SEO/AIO・GEO...はゴールではなく、スタートライン
AI時代のWebサイト対応というと、SEO/AIO、GEO、LLMO、構造化データといったテクニカルな話題に目が向きがちです。もちろん、これらは重要です。
検索エンジンやAIがWebサイトを正しくクロールできること。ページの意味を理解しやすいHTML構造になっていること。タイトル、メタ情報、内部リンク、構造化データが整っていること。公式情報としての信頼性や更新性が担保されていること。
これらは今後、特別な施策というよりも、企業サイトやオウンドメディアが満たすべき基本品質になっていくと考えています。
ただし、テクニカルな最適化だけで十分かというと、そうではありません。AIに引用されることだけを目的にしたコンテンツは、人間にとって魅力のない情報の羅列になってしまう可能性があり、ブランド体験の均一化を招きます。一方で、情緒的なコピーやビジュアル表現だけに偏ると、AIが商品やサービスの特徴、比較軸、利用条件を正しく理解できない可能性があります。
また、AIやLLMは、Webサイトだけでなく、さまざまなメディアの情報を統合して、生活者の意図に合う回答を生成しているので、オウンドメディアの対策だけで明らかな効果を得ることは難しいのが現状です。

こちらの記事でも紹介しているように、大切なのは、人にとって価値ある体験と、AIにとって理解しやすい構造を両立することです。
これは、私たちが長年取り組んできたUXデザインや情報設計の延長にあります。生活者の目線でジャーニーを描き、共感し、次の行動に進めること。そして、AIが正確に読み取り、根拠として使い、誤解なく説明できること。この両方を満たす設計が、これからのオウンドメディアには必要になります。
ページ単位から、意味のあるコンテンツ単位へ
従来のWebサイトやCMSは、多くの場合「ページ」を中心に設計されてきました。1つのテーマに対して1つの記事ページを作る。商品ごとに詳細ページを作る。ニュースや事例をページとして追加していく。こうした設計は、いまも人間にとって重要な体験単位です。
一方で、AIが情報を利用する場面では、ページ全体よりも、意味のある情報のかたまりが重要になります。
たとえば、サービスの定義文、料金や仕様の表、導入までの手順、よくある質問、比較表、事例の成果、利用条件、ブランドの表記ルール。こうした情報は、ページのなかに埋もれているだけではなく、AIが取り出しやすく、組み合わせやすく、更新しやすい単位として管理される必要があります。

言い換えると、これからのCMSは「HTMLページを作るための管理画面」から、「人とAIの双方にコンテンツを届ける情報基盤」へ進化していく必要があります。
人間には、デザインされたページとして情報を届ける。AIには、意味づけされたコンテンツやメタデータとして情報を届ける。さらに、Webサイト内AI検索、AIチャットボット、RAGによるコンテンツ作成支援、将来的なAIエージェント接続にも展開できるようにする。
このような発想に立つと、オウンドメディアは単なる記事の置き場ではなく、企業やブランドの公式情報を蓄積し、更新し、外部接点へ供給するための「一次情報の保管庫」になっていきます。
私たちは、この進化を「AIフレンドリーなオウンドメディア」と捉えています。さらに言えば、それはブランド体験を支えるプラットフォームへの進化でもあります。生活者がブラウザーで読むためだけでなく、検索AIやAIチャットボット、将来的なAIエージェントにも使われる情報基盤として、オウンドメディアとCMS、それを含むコミュニケーションのシステムアーキテクチャを設計し直す必要があるのです。
AI経由で情報が届くほど、ブランドの重要性は高まる
AIが生活者の代わりに情報を要約し、比較し、提案するようになると、企業にとっては新しいリスクも生まれます。
自社の公式Webサイトではなく、古い外部記事や第三者の情報が引用される。競合との比較で、自社の強みが一般的な説明に丸められる。ブランドのトーンや表記が意図と違う形で再生成される。生活者がWebサイトを訪れる前に、AI回答のなかで判断を終えてしまう。
このとき問われるのは、単に「AIに出るかどうか」ではありません。AIが何を根拠に、どのようにブランドを説明し、どの競合と比較し、どの行動へ生活者を導いているのかです。
だからこそ、AI時代にはブランドマネジメントの重要性がさらに高まると考えています。
ブランドの人格、トーン&マナー、表記ルール、禁止表現、ロゴやビジュアル素材、商品・サービスの公式説明。これらが社内に分散していたり、古い資料のまま残っていたりすると、AIが参照する情報にもばらつきが生まれます。

CMSがコンテンツを管理する基盤であるなら、ブランドの情報や素材を管理する基盤も同じように重要になります。Webサイト、SNS、動画、営業資料、チャットボット、社内AIツールなど、あらゆる接点で一貫したブランド情報を届けるための仕組みが必要です。当社では、ブランドマネジメントプラットフォームであるBRAND DECKを開発しており、AIに一貫したブランド情報を適切に供給・共有する基盤としてご提供しています。AIが情報を仲介する時代だからこそ、ブランドは曖昧なイメージではなく、構造化され、運用され、更新されるべき資産になっていきます。
最後に:博報堂アイ・スタジオが支援できること
博報堂アイ・スタジオは、これまで多くの企業のコーポレートサイト、ブランドサイト、商品サイト、オウンドメディア、ソーシャルメディア運用に携わってきました。
私たちの強みは、Webサイトを作る技術だけではありません。生活者やユーザーにとってわかりやすく、ブランドにとって意味があり、事業成果につながる体験を設計すること。そして、それをCMS、データ、運用、改善の仕組みとして継続可能な形にしていくことです。
AI時代のオウンドメディア対応には、SEOやAIOの知見、UXデザイン、情報設計、CMS構築、ブランドマネジメント、データ連携、運用改善の視点が必要になります。どれか一つだけでは、十分な対応にはなりません。
博報堂アイ・スタジオでは、AI検索・AI回答での見え方を把握する診断から、コンテンツ改善、構造化データ、CMSやブランドアセット管理、RAGやチャットボットへの展開、公開後の継続的な改善運用まで、段階的にご支援することができます。
また博報堂グループのケイパビリティを活かして、必要な機能や知識をコンポーザブルに対応しており、そのなかでも当社は博報堂DY ONEともにAIO Webエクスペリエンスコンソーシアム(Web Experience Consortium)の活動も行っております。

AIに選ばれるためだけではなく、人に信頼され、ブランドとして選ばれ続けるために。
これからのオウンドメディアは、企業の情報発信の場であると同時に、ブランド体験を支えるプラットフォームになっていくはずです。私たちは、その変化に向き合う企業のパートナーでありたいと考えています。
Web担当者フォーラム:
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