あえて「アバウト」を掲げるプロデューサー
自分自身を分析すると、一言でいえば「アバウトなプロデューサー」だと思っています。
性格的には意外と石橋を叩いて渡る慎重なタイプでもあるのですが、この会社のスピード感の中でそれをやっていると、ぶっちゃけ仕事が全く進まなくなってしまいます。アイスタは凄まじい物量とスピードで動いています。そこでプロデューサーが判断を迷えば、すべての進行が止まってしまう。だからこそ、僕は本質を見極め、意思決定をスピーディーに行うことを自身の最大のミッションとしています。これが「アバウト」という表現をした理由です。
物事の核心を迅速に捉え、即座にネクストアクションを導き出す。たとえ不確定な要素が残っていても、常にリカバリー策をセットで検討しておくことで、プロジェクトを停滞させないのが僕のスタイルです。この決断の速さこそが、多くの案件を並行して完遂させる鍵であり、チーム全体にも徹底しているスタンスです。
僕は、2019年に入社して今年で8年目を迎えます。
キャリアのスタートはWebディレクターから始まり、最初の3年間はディレクターとして現場の制作管理を叩き込まれました。4年目から徐々にプロデューサーとしての動きを始め、現在は完全にプロデューサーとして、複数の案件においてプロジェクト全体の責任を担っています。
入社経緯としては、もともと広告業界とエンターテインメント業界を志望していました。就職活動の軸は「多くの人の心を動かし、ワクワクさせる仕事がしたい」でした。昔から性格はずっと変わらずで、ひょうきん者、クラスのうるさい奴で、文化祭などで楽しい企画を考えたりするのが好きでした。
博報堂アイ・スタジオ(以降、アイスタ)を知ったきっかけは、グループ会社にいた大学のときの先輩から、話を聞いたことでした。その方に教えていただいて参加した、過去のインターンイベントで体験したVR技術が特に印象に残っています。当時は今ほどVRが一般的ではなく、デジタルでこんなに面白い体験が作れるのかと衝撃を受けました。僕はゴリゴリ文系人間なので、デジタルなんて無縁だと思っていましたが、逆に「デジタルで面白いことが何でもできる場所じゃん」と惹かれたのが入社の決め手でした。

ブランドコミュニケーションで培った視座
入社後、希望が叶って某自動車メーカーを担当するチームに配属されました。インターンに参加しているころから一番楽しいと感じていたチームでしたが、いざ入ってみると規模感、情報量に圧倒されました。
入社1年目から折衝の最前線を経験し、当初は何が正解かも手探りのまま、凄まじいボリュームの業務をこなしていました。実のところ、当時は先輩の指示を正確に完遂することに精一杯だった気がします。
僕が最初に担当したのは、実店舗とは別でブランドを伝えるブランドストアのラインでした。そこでは、イベント情報を知らせるメルマガ作成、ニュースページの更新といった、いわば「点」の仕事でした。最初は目の前の作業を完遂させることだけで精一杯で、「これは本当にブランドのためになっているんだろうか」と考える時期もありました。
ですが、プロジェクトメンバーとのやり取りを通じて、徐々にブランドの全体像が見えてきました。僕が作っていた1通のメルマガは、実は広告コミュニケーションからCRM(※Customer Relationship Management:顧客情報や行動履歴、顧客との関係性を管理・促進するための戦略やツール・システムの総称)、さらには実際の購買やアフターサービスにまでつながる、壮大なブランドコミュニケーションの一部でした。
某自動車メーカーのような高価格帯のブランドでは、車を1台買っていただいて終わりではありません。3〜5年の買い替え周期の中で、いかに引き続きそのブランドのファンでいてもらうか。そのために、どのタイミングでどんな情報を届け、Webサイトでの見積もりシミュレーションから実店舗へとどう送客するか。こうした「顧客体験の入り口から出口までを俯瞰する」という統合的な視座は、新卒1年目からクライアントのすぐそばでデジタル領域を丸ごと任されるアイスタの環境だったからこそ養われたものだと思います。
僕が最初に入ったプロジェクトは、Webサイトの制作だけではなく、デジタル領域全般におけるコミュニケーション戦略の根本からご相談いただける環境でした。
上流の戦略立案から実行までが地続きになっている現場に身を置いていたからこそ、「お客さんが本当に求めていることは何か」を引き出す能力、表面的な要望の裏にある本音の課題を見抜く力が今土台としてあるんだと思います。
三者のWin-Win-Winを編む
プロデューサーの役割は、単に進行を管理することではありません。クライアント、協力会社、そしてアイスタの三者がWin-Win-Winになれる最良の体制と着地点をプロデュースすることです。この三方良しの関係を築くために、僕が大切にしているのが「なぜ?」という問いを繰り返す思考法です。
アイスタではディレクターからプロデューサーにステップアップすることが多いため、自分で全てを把握して進めるというプレイヤー視点に陥りがちです。しかし、誰かが無理をしたり、短期的な利益だけを追う関係は決して長続きしません。チームとしての最大値を出すためには、目先の制作依頼の裏側にある課題に目を向ける必要があります。
例えば最初はごく限定的な、いわばスポットの制作依頼をいただいたとします。僕は「なぜ、今これを作るのか?」「そもそもサービスの魅力が生活者に正しく伝わっていないのではないか?」と、思考を深めていきます。依頼の枠を超え、「まずはサービスコンセプトと生活者体験の設計から見直しませんか」と逆提案をする。この問いかけがクライアントの抱えていたボトルネックと合致し、結果として大規模な年間プロモーションを丸ごと任せていただけるまでの信頼関係につながった経験もあります。
お金の規模感もそうですが、何より嬉しかったのは、当初の小さな依頼が最終的にはプロジェクトの予算規模、そして何より「アイスタさん無しでは進められない」という信頼が何十倍にも膨れ上がったことです。
クライアントから「Aという答え」を求められたら、まずはプロとして完璧なAを準備します。でも、それが最善でないと思えば、必ず本質を突いた「プランB」をセットで提案する。この「なぜ?」を繰り返して三者が納得する本質に辿り着く思考法こそがWin-Win-Winなプロジェクトを編み上げるプロデューサーとしての提案を生むのだと思います。

得意先も一人のサラリーマンであること
ここまではプロデューサー脳の話をしてきましたが、ここからは僕という人間がどう相手と向き合うのか、僕が得意先の方と関わる上で大切にしていることなど比較的パーソナルな話になります。
すごく平たく言うと、クライアントも僕らと同じサラリーマンなんです。
僕らと同じように日々悩み、組織の中で戦っています。パフォーマンスがいい日もあれば、プライベートの事情で落ち込む日もある。この案件を成功させて評価を上げたいという野心だって、きっと持っているはずです。だから僕は、相手が組織の中で何を背負っているのか、その本音の部分に徹底的に向き合いたいと思っています。
例えば、大きな予算を動かすために社内の上申で苦労されているなら「一緒に上申資料を作りましょうか」と提案。プロジェクトが終われば、その方が責任者としてどれだけ成果を出したかを証明しやすいよう報告資料を丁寧にまとめ直す。
こうして相手の痒い所に手が届く動きを積み重ねることで、「この人と組めば仕事がしやすい」「手放したくない」と思ってもらえる。それが単なる発注先を超えた「パートナー」としての信頼につながっていくのだと思います。
実はこうした考え方は、学生時代のアルバイト経験が原点になっています。
当時、大勢のお客さまを相手にする中で大切にしていたのは、表面上の言葉ではなく「ぶっちゃけ、ここが助かりますよね」と、本音で言われるようにしていたことです。綺麗事だけではない、相手の本当のニーズに応える喜びをそのときに知りました。
だからこそビジネスの現場でも、礼節を重んじつつも人として今後も関わりたいと思ってもらえるような伴走をする。相手の立場を自分事として捉えることが僕の考えるパートナーシップの核になります。

私が提供したいのは、パートナーという価値
「制作会社(プロダクション)」と「共創者(パートナー)」の決定的な違いは何でしょうか。
僕は、頼まれたものを期待どおりに納品して終わるのが制作会社、一緒に仕事をしたことで本質的な悩みが一歩先に進み、未来が少し明るくなったと思わせられるのがパートナーだと思っています。
僕たちの仕事の本質は、Webサイトを作ることそのものではありません。
クライアントが抱えている「売上が伸びない」「ブランドの価値が伝わっていない」といった課題を、デジタルの力でどう解決するか。そのためには、クライアントと同じ目線で悩み、ときにはクライアント以上にそのブランドの将来を本気で考えます。「なぜこの相談を受けているのか」という本質を常に問い続け、目の前の作業の先にいる担当者さんの顔を思い浮かべる。
これからも僕は、クライアントの共創者として、共に悩み、共に伴走し続けていきたいと思っています。








