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HubSpotを活用したインバウンドマーケティング:料金表やプランを解説

西村 由香(インハウスマーケター)
2024-11-03
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現代のデジタルマーケティングの中で注目され続けている「インバウンドマーケティング」。その中でも特に効果的なプラットフォームとして挙げられるのが HubSpot です。本記事では、インバウンドマーケティングの基本から、HubSpotを活用した具体的な戦略や成功事例までを網羅的に解説します。インバウンドマーケティングの導入を検討している方や、すでに始めているものの改善方法を模索している方に最適な内容です。

インバウンドマーケティングとは?基本概念とその重要性

インバウンドマーケティングとは、ブログやSNS、動画コンテンツなど、ユーザーにとって価値のある情報を提供することで自社を見つけてもらい、見込み客として惹きつけ、最終的に顧客になってもらうまでの一連のマーケティング活動のことです。

従来の広告やテレマーケティングのように、企業側から一方的にアプローチする手法を「アウトバウンドマーケティング」と呼ぶのに対し、インバウンドマーケティングはユーザー側から自社を見つけてもらう「プル型」のアプローチである点が大きな特徴です。

インバウンドマーケティング

アウトバウンドマーケティング

アプローチ

ユーザー側から見つけてもらう(プル型)

企業側からアプローチする(プッシュ型)

コニュニケーション

双方的

一方的

主な手法

ブログ、SEO、SNS、動画、ホワイトペーパー

テレビCM、新聞広告、テレマーケティング

インバウンドマーケティングが求められる背景


なぜ今、インバウンドマーケティングが重要視されているのでしょうか。その最大の理由は、インターネットとスマートフォンの普及による「ユーザーの購買行動の変化」にあります。

かつて、ユーザーが商品やサービスに関する情報を得る手段は、テレビCMや雑誌広告など、企業が発信する情報に限られていました。
しかし現在では、多くのユーザーが購入を検討する際、まず検索エンジンやSNSで情報収集や比較検討を行うのが当たり前になっています。つまり、購買プロセスの主導権は企業からユーザーへと移ったのです。

この変化により、企業からの一方的な売り込みは敬遠されやすくなりました。代わりに、ユーザーが情報を探しているまさにそのタイミングで、有益な情報を提供してくれる企業が選ばれる時代になったのです。

ファネルから「フライホイール」へ

インバウンドマーケティングのプロセスを理解する上で、従来は「Attract(惹きつける)」「Convert(転換する)」「Close(顧客化する)」「Delight(満足させる)」という4段階の「ファネル」モデルが広く使われていました。

しかし、このモデルでは顧客化がゴールとなり、その後の顧客との関係性が表現しきれないという課題がありました。

そこで、MA(マーケティングオートメーション)ツールで世界的なシェアを誇るHubSpot社が新たに提唱したのが「フライホイールモデル」です。これは、顧客をプロセスの中心に据え、「Attract(惹きつける)」「Engage(関わる)」「Delight(満足させる)」という3つのフェーズが互いに影響し合い、回転することでビジネスを成長させるという考え方です。

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Attract(惹きつける)

潜在顧客に対して、ブログ記事やSEO、SNSなどを通じて有益なコンテンツを提供し、自社の存在に気づいてもらう段階。
特にHubSpotのSEO機能は、コンテンツを自動的に最適化し、検索結果での上位表示をサポートし、見込み客を自社Webサイトに引きつけます。

Engage(関わる)

メルマガやチャットボットなど、パーソナライズされた情報提供を通じて見込み客との関係性を深め、課題解決を支援する中で信頼を構築し、購買へと繋げる段階。
HubSpotでは、CRMとリード管理機能を活用し、個々の見込み客に対してパーソナライズされたアプローチが可能です。メールキャンペーンやリードナーチャリングの自動化によって、見込み客との継続的なコミュニケーションを実現します。

パーソナライズされた​アプローチに​ついて​深く​理解するには​こちら!
参考記事:顧客一人ひとりの体験を最適化するOne to Oneコミュニケーションの実現方法

Delight(満足させる)

顧客になった後も、手厚いサポートや役立つ情報提供を続けることで満足度を高める段階。満足した顧客は、製品の継続利用や追加購入だけでなく、口コミや紹介を通じて新たな見込み客を惹きつける「推進力」となってくれます。
ここでは、サポートチームの業務を推進するService Hubの機能が活躍します。カスタマーサービスの効率を高め、リピート購入やブランドのファン化を促進します。

このフライホイールモデルの最大のポイントは、「顧客の成功が、新たな顧客を呼ぶ」という循環を生み出す点にあります。新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の満足度(LTV:顧客生涯価値)を最大化することが、持続的な事業成長の鍵となるのです。

HubSpotのインバウンドマーケティング戦略

HubSpot社が採用しているこの「フライホイールモデル」により、Attract(惹きつけ)、Engage(関係構築)、Delight(顧客満足)の各ステージを回転させ、顧客のリピート購入や紹介により成長を加速させるサイクルを作り出します。摩擦を減らし推力を強化することで、持続的な成長を促進し、顧客を中心にしたビジネスの成長を目指します。

それでは、HubSpotについて詳しく見ていきましょう。HubSpotは、インバウンドマーケティングを効果的に実践するためのツールであり、企業が見込み客を引きつけ、関係を構築し、長期的な顧客満足を達成するための一元管理プラットフォームです。

この​プラットフォームの​中心と​なる​MAツールが​どのような​役割を​果たすのか、​その全体​像に​ついては​「MAツールに​できる​こと5選!​MA導入に​悩む企業に​むけて​わかりやすく​解説」 で​ご確認ください。​​MAツールに​できる​ことを​より​深く​理解する​ことで、​HubSpotの​役割も​より明確に​なります。​

また、マーケティングツール全般のに​ついて​知りたい​場合は、​こちらの​記事も​役立ちます。
参考記事:マーケティングツール10選!選び方のポイントも徹底解説

HubSpotの主な4つの機能

HubSpotは主に以下の4つの主要なソフトウェアを提供しています。

  • Marketing Hub:コンテンツ作成やリード管理など、マーケティング活動全般を支援。

  • Sales Hub:セールスの自動化やパイプライン管理を効率化。

  • Service Hub:カスタマーサポートの向上と顧客維持を強化。

  • ContentHub: Webサイトやブログの作成・管理を効率化し、SEO最適化を支援。

これらのツールを組み合わせて使用することで、顧客とのすべての接点を一元管理でき、マーケティング、セールス、カスタマーサポートの連携がスムーズに進むため、企業はより効果的にインバウンドマーケティングを展開できるのです。

HubSpot導入のメリットと注意点

HubSpotを導入するメリットには、まず簡単なインターフェースが挙げられます。初心者でも直感的に操作できるため、学習コストが少なくて済みます。さらに、無料プランから始めることができる点も魅力です。

しかし、導入時にはいくつかの注意点もあります。特に、導入前に目的や要件を明確にしておくことが重要です。導入目的が曖昧だと、実際に使い始めてから効果が薄れる可能性があります。また、設定にはある程度の時間がかかるため、事前に十分な準備をしておくことが求められます。

MAツールの​導入に​必要な​具体的な​体制や​プロジェクトの​流れに​ついては、​「MAツールの​導入に​必要な​体制と​プロジェクトの​流れ」 で​詳細を​ご確認ください。​

HubSpotのプランと料金

HubSpotは、5つの主要Hub(Marketing HubSales HubService HubContentHub、CRM Hub)を提供しており、それぞれのHubで異なる機能と料金プランが設定されています。特に、ContentHubは、企業が一貫したコンテンツ戦略を展開するために不可欠なツールです。また、CRM機能は無料で利用でき、HubSpotサービスの基盤として、すべてのチームで顧客情報を統一管理し、マーケティング、営業、サポートの連携を支援します。

各Hubの概要

  • Marketing Hub: コンテンツ作成、リード管理、メールマーケティング、自動化機能を提供。企業のマーケティング活動を効率化します。

    Marketing Hubに​ついてさらに​深く​知りたい​人は​こちら!
    参考記事:HubSpot Marketing Hubの特徴とは?機能・料金・メリットデメリットを紹介

    MAツールには、​他にも​様々な​機能が​あります!​
    参考記事:MAツールの8つの機能とは?BtoBで必要とされる理由を徹底解説

    メールマーケティングルールに​ついてさらに​知りたい方は​こちら!​
    参考記事:メールマーケティングツールおすすめ6選!選び方のポイントと成果を出すコツを解説

  • Sales Hub: 商談管理や営業自動化に特化し、セールスプロセスを効率化。見込み客の追跡や営業活動を自動化します。

    Sales Hubに​ついてさらに​深く​知りたい​人は​こちら!​
    参考記事:HubSpot Sales Hubとは?営業支援(SFA)におすすめの特徴や料金をわかりやすく解説

  • Service Hub: 顧客サポートを強化し、カスタマーサポートチームが効率的に顧客の問題を解決するための機能を提供します。

  • ContentHub: コンテンツ管理、Webサイト、ブログ、ランディングページの作成やSEO最適化など、コンテンツ戦略を一元管理できるプラットフォームです。企業が提供するコンテンツを効率的に作成、管理し、SEO対策を通じて、より多くの見込み客にリーチすることが可能です。

  • CRM Hub: 無料で提供されるHubSpotのCRM機能は、すべてのチームで顧客情報を統一管理し、マーケティング・営業・サポートの活動を支援します。CRM機能は、HubSpotの他のすべてのHubを支える基盤となる機能で、顧客とのすべての接点を一元管理できる優れたツールです。

料金表

Hub

無料プラン

Starter

Professional

Enterprise

Marketing Hub

基本的なメールマーケティング機能

¥1,800/月

¥106,800/月

¥432,000/月

Sales Hub

見込み客管理、メール追跡機能

¥5,400/月

¥53,000/月

¥144,000/月

Service Hub

チケット管理、サポート機能

¥5,400/月

¥53,000/月

¥144,000/月

ContentHub

基本的なコンテンツ管理機能

¥10,800/月

¥120,000/月

¥450,000/月

CRM Hub

顧客情報管理ツール(無料)

無料

無料

無料

参考:HubSpot料金表

各プランは企業のニーズや成長ステージに応じて選択でき、柔軟な運用が可能です。

自社に​最適な​MAツールを​比較検討する​際の​ポイントを​解説した​記事も​ご参照ください。​
参考記事:【2024年最新】MAツール徹底比較10選|主要ツールの特徴と選び方ガイド

HubSpotの​料金だけでなく、​MAツール導入の​コストと​その​費用対効果効果を​包括的に​理解したい​場合は、​こちらの​記事も​役立ちます。​
参考記事:MA(マーケティングオートメーション)の導入コストと効果について


今おすすめの「Marketing+」プラン

Marketing+とは

「Marketing+」は、HubSpotのContentHubMarketingHubを組み合わせたプランで、企業のコンテンツ管理とマーケティング活動を一元化します。これにより、コンテンツの作成・管理からSEO、リードジェネレーション、キャンペーンの自動化までを包括的にサポートします。

特に、マーケティングチームが効率的にリードを集め、育成し、顧客満足度を高めるために最適なプランです。ContentHubとMarketingHubが連携することで、スムーズなコンテンツ戦略の実施が可能になります。

フリープラン

備考

1. CMS機能

・豊富なWebサイトテーマとテンプレート、カスタマイズ可能なデザインマネージャー
・総合的なセキュリティー(SSL証明書の提供、内蔵CDN、24/7のマルウェアスキャン、セキュリティ監視、WAF、サーバーレス機能など)

2. コンテンツ制作管理機能

・サイトツリー、コンテンツ埋め込み、動画のホスティングおよび管理
・多言語コンテンツ
・AI画像生成ツール、AI翻訳、AIブログ
・LP・フォーム作成機能

3. SNS連携機能

・CRMデータを基にしたSNS広告の最適化、ROI管理
・HubSpot内の記事やコンテンツの投稿やスケジュール設定

4. マーケティング機能

・メール配信/プロパティ変更の自動化、スコアリング機能、セグメンテーション機能
※特に​スコアリング機能は​リード育成の​鍵と​なります。​その​詳細な​機能や​活用法は​「HubSpotの​リードスコアリング完全ガイド」で​解説していますので、​ぜひご確認ください。​
・パーソナライズ機能(WEBやメールでのパーソナライズトークンの利用など)
・コミュニケーション機能(チャットボット、ポップアップ、動的コンテンツなど)

5. 自動化機能

・特定のアクションやプロセスを自動化する機能
・見込み客育成フローやカスタマージャーニーの自動送信
・購買行動に基づくリードスコアリング
・セグメント別にパーソナライズされたメール配信

6. ダッシュボードおよびレポート機能

・Webサイトのトラフィック分析、SEOアナリティクス、キャンペーンレポート
・レポートダッシュボード、カスタムレポート

7. CRM機能

・CRMのインポート/エクスポート、標準CRMインターフェース設定
・リスト機能

8. その他連携機能

Google、Slack、SNSなど

料金表

MarketingHubはProfessionalからになります。

Hub

Professional

Enterprise

Marketing+

¥106,800/月

¥432,000/月

参考:

Marketing+料金表

HubSpot活用によるインバウンドマーケティング成功の鍵

HubSpotを活用してインバウンドマーケティングを成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。まず、HubSpotアカデミーや提供されるリソースを活用し、必要なスキルを身につけることが不可欠です。また、導入・運用支援サービスも活用することで、スムーズにツールを定着させ、成果を出しやすくなります。

さらに、スキルだけではなく、成功には組織全体の体制構築も非常に重要です。マーケティングチームだけでなく、営業、カスタマーサポート、さらには経営層と連携し、インバウンドマーケティングの目標を共有し、各部署が一体となって取り組む体制を整えることが成功のカギとなります。例えば、リードの引き継ぎや顧客サポートの流れを明確にすることで、ツールの活用効果を最大化できます。

具体的な​導入プロジェクトの​ステップや​必要な​体制に​ついて​深掘りしたい方は​こちら!​
参考記事:MAツールの導入に必要な体制とプロジェクトの流れ

インバウンドマーケティングはスキルだけではなく、組織全体のサポートと一貫した体制が整っていることで、初めて長期的な成果を生むことができます。

HubSpotでインバウンドマーケティングを始めよう

最後に、HubSpotを使ってインバウンドマーケティングを始めるためのステップを確認しましょう。まずは無料プランで導入し、基本的な機能を活用してみることをお勧めします。その後、運用が軌道に乗れば、さらなる機能拡充や自動化を進め、マーケティング活動を加速させましょう。インバウンドマーケティングの強力なツールとしてHubSpotを活用することで、ビジネスの成長につなげることができます。

執筆者
西村 由香(インハウスマーケター)
デジタルマーケターとして事業会社にマーケティングオートメーションの運用設計/ノウハウを提供、人材サービス企業の4事業部を統括するデジタルマーケティング責任者として従事。2023年より博報堂アイ・スタジオにて自社のデジタルマーケティングの仕組を構築・運用する傍ら、クライアント業務も実施。