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HubSpotでマーケティングROIを測定・改善する方法

西村 由香(インハウスマーケター)
2025-11-19
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マーケティング施策のROI(投資利益率)について、「スプレッドシートでの管理に限界を感じている」「MAを導入したが、コンバージョン数までしか追えず、最終的な『受注金額』と紐付いていない」といった課題はありませんか?BtoBマーケティングにおいて正確なROIを測定するには、施策(投資)からリード獲得、商談化、そして「受注(売上)」までをデータで一気通貫につなげる仕組みが不可欠です。この記事では、MAとCRM(SFA)がシームレスに連携するHubSpotを活用した測定方法を解説します。

HubSpotでマーケティングROIを正確に測定・最大化する方法

スプレッドシートや従来の広告管理画面だけでは、マーケティング施策が生み出した「売上」や「利益」までを正確に追跡することは困難です。 クリック数やコンバージョン(資料ダウンロード)数はわかっても、そのリードがいくらの「商談」になり、最終的に「受注」に至ったのかが分断されてしまうためです。

ここでは、HubSpotを活用し、マーケティング投資が「いくらの売上・利益につながったのか」を正確に測定し、さらに最大化するための方法を解説します。

※ROIの基本的な定義、計算方法、ROASとの違いについては、まずこちらの記事をご覧ください。
参考記事:ROIとは?計算方法とROASとの違いを解説

HubSpot(Marketing Hub)でのROI計算の設定方法

HubSpotの「キャンペーン」機能は、まさにROIを算出するために設計されています。

まず、Web広告、ウェビナー、コンテンツ施策など、ROIを測定したい活動を「キャンペーン」として登録します。その際、そのキャンペーンに投じた「投資額(予算)」をコストとして入力します。

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次に、そのキャンペーンに関連するアセット(LP、ドキュメント、広告、トラッキングURLなど)を紐付けます。

見込み客がこれらのアセットを経由してコンタクトになり、そのコンタクトが営業活動によって「取引」データと関連付けられると、HubSpotは自動でキャンペーンと取引を紐付けます。

最終的に、その取引が「受注」ステータスになると、取引の金額がキャンペーンの「収益」として計上されます。これにより、キャンペーンのダッシュボード上で、「投じたコスト」と「生み出した収益(受注額)」が自動集計され、ROIがリアルタイムで可視化されます。

広告ROIを分析する

多くの企業が「広告費(投資)」は把握しているものの、その広告が「いくらの売上(利益)につながったか」を追えていません。

HubSpotの広告効果測定ツールは、単に広告のクリック数やコンバージョン数(リード獲得数)を測定するだけではなく、連携した広告をクリックして流入したユーザーが、HubSpotのコンタクトとして登録され、その後の営業プロセスで「取引」や「受注」に至った場合、その「売上金額」までを広告に紐付けてレポートします。

出典: HubSpot:https://www.hubspot.jp/products/marketing/ads

これにより、「どの広告キャンペーンが、最も受注につながる(=ROIが高い)リードを生み出しているか」が明確になり、広告予算の最適な配分が可能になります。

尚、HubSpotの広告効果測定ツールは、Google広告、Facebook広告、LinkedIn広告などと連携できます。

アトリビューションレポートを活用し、ROIに貢献した施策を特定する

BtoBの顧客は、受注に至るまでに平均で7〜12回のタッチポイント(接点)を持つと言われています。この複雑なプロセスにおいて、「どの施策がROIに貢献したか」を特定するのがアトリビューションレポートです。

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様々なアトリビューションモデル

HubSpotは、コンタクト(リード)が作成されるきっかけとなった「ファーストタッチ」、取引が作成される直前の「リード創出タッチ」、受注直前の「ラストタッチ」など、複数のモデルで貢献度を分析できます。

アトリビューション名

概要

主な用途

線形(リニア)

すべてのタッチポイントに均等配分

長期育成や複数チャネルの全体把握、偏りなく評価したいとき

最初のインタラクション

初回接点に100%を配分

認知経路の特定、起点施策の評価

最後のインタラクション

コンバージョン直前の接点に100%を配分

受注直前の後押し施策の把握、短期の成果検証

U字型

最初40%・リード化接点40%・中間20%

認知とリード獲得を重視しつつ全体も評価したいとき

時間減衰

直近の接点ほど重みを高く配分(時系列で減衰)

商談前後の直近施策重視、期間施策の評価

J形

最初20%・コンバージョン60%・その他20%

最終局面の貢献を強く評価しつつ起点も加味

逆J形

最初60%・コンバージョン20%・その他20%

初回接点をより重視、起点施策の影響を強く見たいとき

例えば、「投資額は小さいが、多くの高額受注の"きっかけ"(ファーストタッチ)になっているコラム記事」や、「直接的なCVにはつながらないが、多くの商談化(リード創出タッチ)に貢献しているウェビナー」などを特定できます。

これらのレポートは、短期的なROI(ラストタッチ)だけでなく、中長期的なROI(ファーストタッチ)に貢献している「縁の下の力持ち」的な施策を見つけ出し、マーケティング活動全体の投資対効果を正しく評価するために不可欠です。

リード育成(ナーチャリング)によるROI改善の実践

ROIを改善する(最大化する)には、「投資(コスト)を減らす」か「収益(リターン)を増やす」かの2択です。リード育成(ナーチャリング)は、「収益を増やす」ための最も強力な手段です。

どれだけROIの高い広告でリードを獲得しても、そのリードを育成できなければ商談や受注にはつながりません。

HubSpotのワークフロー(自動化)機能やリードスコアリングを活用することで、獲得したリードの興味・関心度合いや行動(eBookダウンロード、Webサイト訪問)に応じて、最適なタイミングで最適な情報(事例、導入メリット、関連コラム)を自動で提供できます。

これにより、リードの関心度を徐々に高め、営業がアプローチすべき「MQL(ホットリード)」へと効率的に引き上げることができます。 同じ「投資額(リード獲得コスト)」から、より多くの「収益(商談・受注)」を生み出すこと、これこそがHubSpotを活用したROI改善の実践です。

参考記事:HubSpotのMA機能でできることとは?基本機能と活用法を徹底解説

HubSpotでROI測定・改善を実践する2つのポイント

この記事で解説したHubSpotの各機能(キャンペーン、広告ROI分析、アトリビューション、リード育成)は、マーケティングROIのPDCAサイクルを回すためのツールです。

しかし、単にツールを導入するだけではROIは改善しません。BtoBマーケティングでROI(=施策が最終的な売上にどれだけ貢献したか)を正確に測定し、改善につなげるためには、以下の2つのポイントを押さえることが不可欠です。

1.「施策」と「受注」をつなぐMA/CRM一体型のデータ基盤

正確なROI測定を阻む最大の要因は、マーケティング部門(MA)と営業部門(CRM)の「データの分断」です。

本記事で紹介した「キャンペーン機能」や「広告ROI分析」が機能する大前提は、施策(投資)が、営業部門が管理する「取引(商談)」や「受注金額(売上)」とデータとして紐付いていることです。

HubSpotのようにMAとCRMがシームレスに連携し、施策から受注までをワンストップで追跡できるデータ基盤を構築すること。これこそが、正確なROI測定を行うための基盤となります。

参考記事:HubSpotを活用したインバウンドマーケティング:料金表やプランを解説

2.獲得リードの価値を最大化する「育成(ナーチャリング)」の仕組み

ROIを改善する(収益を増やす)には、獲得したリードを「受注」へと引き上げるプロセスが不可欠です。

どれだけ効率よくリードを獲得しても、育成(ナーチャリング)の仕組みがなければ、その多くは商談に至らず、投資(リード獲得コスト)は回収できません。

本記事で解説した「リード育成(ナーチャリング)」は、獲得したリードの価値を最大化し、同じ投資額からより多くの収益を生み出すための、実践的なROI改善アクションです。 「測定」して終わりではなく、MAを活用した「育成」の仕組みを実装することこそが、ROIを最大化する鍵となります。

参考記事:顧客の信頼を育むナーチャリング戦略|成果を生み出す具体的な方法とは?

正確なROI測定が、マーケティング成果を最大化する鍵

本記事で解説した「MA/CRM一体型のデータ基盤」と「リード育成」のPDCAを回すことが、成果最大化の鍵です。

しかし、データの分断やリソース不足でROIの可視化が進まないケースは少なくありません。正確なROIの可視化は、マーケティング部門が事業成長に貢献する第一歩です。

まずは自社の課題整理から始めてみてはいかがでしょうか。自社での仕組み構築が難しい場合は、外部パートナーの活用も有効です。ROI測定・改善やHubSpot活用に関する詳細は、以下の資料をご覧ください。

執筆者
西村 由香(インハウスマーケター)
デジタルマーケターとして事業会社にマーケティングオートメーションの運用設計/ノウハウを提供、人材サービス企業の4事業部を統括するデジタルマーケティング責任者として従事。2023年より博報堂アイ・スタジオにて自社のデジタルマーケティングの仕組を構築・運用する傍ら、クライアント業務も実施。