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プロジェクトをビジネス成果につなげるために大切にしていること。背景・目的・課題・手段を見直し、見極める視点

伊藤 麗奈(プロデューサー)
2026-04-15
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こんにちは!プロデューサーの伊藤 麗奈です。

デジタルマーケティングの現場でプロジェクトを進行していると、クライアントからのオーダーと最適解の「ズレ」に直面することが多々あります。

依頼された解決策が本質的ではないまま進めては、クライアントのご担当者さまや、その先の生活者にとってよい結果を生みません。何を作るかという手段を決める前に、徹底的に「なぜ」を問い直し、仮説を積み上げることが重要です。本稿では、目的・課題・手段を正しく見極め、プロジェクトの解像度を高めるための思考プロセスをご紹介します。

第1章:博報堂アイ・スタジオのプロデューサーとしての姿勢

私は新卒で入社して以来、Webサイト制作やSNS運用の現場を5年間経験し、現在はビジネス開発ユニット(BDU)に所属しています。

博報堂アイ・スタジオ(以降、アイスタ)は、2000年の設立以降、デジタル領域のクリエイティブを専門にしていることから、いまだに「デジタルプロダクション」「制作屋」の印象をもたれることも多いですが、コンサルティングやプロジェクト設計など、構想から実現までを担い、ビジネス課題にコミットし、寄り添いながらゴールに導いています。

BDUも、単なる制作を担うのではなく、新規のご相談に対して戦略フェーズから入り込み、ビジネスの形そのものをデザインする役割を担っています。

私がクライアントからご相談をいただく際、大切にしているのは、ご依頼を表面的な言葉のまま受け取らないということです。単に成果物を「作る」だけでなく、その背景にある課題や、実現したい未来を共にデザインするパートナーでありたいと考えています。

認知度向上のためにSNSを始めたいと相談された場合、「SNSならターゲットや検索の多角化を考えると〇〇がおすすめです!」とSNS前提で話を進めるのではなく、「認知をあげるためにSNS利用が本当に最善策なのか?」を検討します。

クライアントのご担当者さまの要望が「上司に言われたから…」といった組織的なものや、根拠がない場合、言われたまま作っても長期的な費用対効果は得られません。「一旦、俯瞰的に見直す」。このプロセスを挟むことで、無駄な手戻りを防ぎ、ビジネスに直結するプロジェクトになると考えています。

第2章:本質を見抜く思考のルールと共通言語

私が常に意識しているのは、背景・目的・課題・手段の順番です。

プロジェクトが迷走するとき、その多くは「何をやるか」が先に決まり、「何のためにやるのか」が十分に整理されないまま進んでしまっています。

例えば、事業のゴールとしては「販売促進したい」「お問い合わせや契約リードを増やしたい」と明確であっても、その手段としてWebサイト改善が、さらに課題としてUI/UX改善が前提になってしまっているケースがあります。ですが、ヒアリングを深めていくと、実際にテコ入れすべきなのはUI/UXではなく、認知不足や訴求内容、導線設計以前の別の要因だった、ということも少なくありません。

また、目的と課題は見えていても、選ばれた手段が本来の目的につながっていないケースもあります。

例えば、「認知を拡大したい」という目的のもとでイベントを企画したはずが、いつの間にかイベントを無事に実施すること自体が目的になってしまう。結果として、「開催できた」「盛り上がった」で終わってしまい、本来見るべき認知獲得やリード獲得、ROIといった成果が置き去りになることがあります。

このように、主観や慣習、思い込みから手段が先行すると、プロジェクトは本質的な課題解決から離れてしまいます。

だからこそ、いきなり施策を決めるのではなく、まずは「何のためにやるのか」「本当に解くべき課題は何か」を見極めることを大切にしています。

こうしたズレへの気づきは、以前は個人の経験や勘に依存する部分もありました。

しかし、アイスタでは、それを属人的なものにとどめず、過去の多様な案件で蓄積してきた知見を組織の資産として活用できるようにしています。そのひとつが、独自の『課題・仮説・解決データベース』です。

詳細は企業秘密のためここではお見せできませんが、これは単なるアイデア集や事例集ではありません。

クライアントから寄せられるさまざまなオーダーに対して、「その依頼の背景には、別の目的や課題が潜んでいるのではないか」「本当に着手すべき論点はどこか」「その場合、どのような打ち手が有効か」といった仮説を、過去の実績や現場知見をもとに構造化したデータベースです。

Webサイトリニューアル、SNS運用、ブランド施策、サービス改善など、一見異なる相談であっても、その裏側には共通する思考のズレや、見落とされやすい論点があります。

私たちはそれらを横断的に整理し、課題発見から打ち手設計までを再現性高く行える状態をつくっています。

情勢や業界トレンドに応じてアップデートを続けるこのデータベースは、ひとつひとつのプロジェクトを表面的な要望対応で終わらせず、クライアントのビジネス成果にコミットするための、重要な共通言語になっています。

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第3章:具体例から学ぶ「最適解」への軌道修正

3つの事例で見る、最適解の導き方

私が担当した事例を、5つのステップでご紹介します。

事例1:不動産業界(CRMサービス設計)

ステップ

内容

①オーダー

居住者専用サイトの利用者を増やすため、UIデザインを改善したい。

②違和感

UIが悪いから利用されていないのか?

そもそもWebサイトの存在を知らない?

居住者専用サイトの利用促進は、誰のためか。

③与件の見直し

(課題・仮説・解決データベース活用)

目的:居住者の満足度向上、および、管理の効率化

課題:望まれているサービス提供ができていないのでは?

④提案内容

社内で実施したヒアリングのレポートをもとに、実態調査の必要性を提示し、調査結果から施策の見極めを提案。

⑤結果

居住者専用はクライアントの管理効率化のため改修し、居住者にはLINE連携による満足度向上施策を実施。LINE登録者増加により、住人同士でのコミュニケーションが活性化されているとのこと。

事例2:不動産業界(地域ブランディング)

ステップ

内容

①オーダー

街のファンを増やすために、SNSを運用したい。

②違和感

そもそも「ファン」とは?

なんのためにファンを増やすのか?

③与件の見直し

(課題・仮説・解決データベース活用)

目的:複合開発による相乗効果の最大化

課題:ファンになり得るターゲットの不透明さ、および、ターゲットニーズの不明確さ

④提案内容

ファン、および、ファンになり得るターゲット定義とペルソナ開発。ターゲットニーズの明確化による施策の落とし込みを提案。

⑤結果

ワークショップの開催、および、デプスインタビューでの調査実施が決定。現在その結果を踏まえ施策を検討中。

事例3:B to Bメーカー(ブランド戦略)

ステップ

内容

①オーダー

5年間で商品の国内シェアを倍増させるために、Webサイトをリニューアルしたい。

②違和感

Webサイトのリニューアルだけで国内シェア倍増が達成できるのか?

③与件の見直し

(課題・仮説・解決データベース活用)

目的:商品の国内シェア倍増

課題:対企業だけでなく、エンドユーザーに商品導入メリットを伝える必要がある。

④提案内容

Webサイト単体ではなく、各ステークホルダーに商品の本質的な価値とメリットを噛み砕いて伝える必要性を提案。

⑤結果

Webサイトリニューアルに加え、ブランドムービーによるブランディングを実施。

上記はあくまで一例ですが、新規のご相談をいただいた際は、まずオーダーの背景にある真の目的を見極めるよう努めています。常に「目的達成のために何が課題か」「どの手段が最適か」を問い直し、クライアントの担当者さまに寄り添いながら、共に最適解を導き出します。

手書きで頭の中を整理

第4章:対話から本音と本質を引き出す技術

画面越しでは伝わらない"ぶっちゃけ"を大切に

ヒアリングを単なる情報の受け取りで終わらせないために、私が何より大切にしているのは、相手との温度感を合わせ、懐に飛び込むコミュニケーションです。

当たり前のように聞こえますが、例えば、対面での打ち合わせ。実は一番大事な話が始まるのは、会議室を出た後だったりします。正式なヒアリングの場だけでは見えない本音や制約が、会話の合間にふと現れることがあります。そうした背景を踏まえて課題を捉え直すことで、机上の空論ではない、現実的に筋が通る提案につなげています。この、オフラインならではの空気感から得られる情報こそが、プロジェクトの筋を通すための鍵になります。

もちろん、最近はオンライン会議も多いですが、画面越しではどうしてもぶっちゃけ話がしにくいものです。大人数の前では言いづらい予算のリアルな事情などは、会議の後にお電話を差し上げることで確認するようにしています。1対1の会話なら、相手も「実は予算の上限が厳しくて」と打ち明けていただきやすくなり、そこから一気に深い信頼関係へとつながっていくのを感じます。

相手の心を開くために私が意識しているのは、まず自分から弱みや本音を見せることです。これは友達付き合いとも似ているかもしれません。こちらから先に「実は今回、費用面で少し悩んでいて……」と正直にさらけ出すと、相手も「実はうちの社内でも……」と、抱えている事情を共有してくださるようになります。そうして発注者と受注者という壁を壊し、同じゴールを目指すワンチームになれたとき、プロジェクトは本当の意味で動き出すのだと信じています。

第5章:悩める担当者と伴走する存在でありたい

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プロジェクトの担当者という立場は、上司からの指示と現場のリアルな状況、さらには生活者のニーズとの板挟みになり、悩まれることも多いはずです。私は、そんな皆さまの隣で一緒に汗をかく伴走パートナーでありたいと思っています。

よく「まだオリエン用の資料がまとまっていない」「課題が言語化できていないから、相談するのはもう少し先に……」と、おひとりで抱え込んでしまうご担当者さまがいらっしゃいます。ですが、実はまとまっていない状態でお声がけいただくことこそ、大歓迎です。なぜなら、何が正解かわからないカオスな状況から一緒に糸口を見つけ、本質的なゴールを定義していくプロセスにこそ、私たちの存在価値があると考えているからです。

私たちが伴走することで提供できる価値は、単なる制作や運用にとどまりません。

例えば、「当事者だけでは見えにくい論点の客観的な整理」です。プロジェクトの渦中にいると、どうしても視界が狭くなりがちですが、外部の視点を入れることで、本来優先すべき課題がクリアになります。

また、「関係者の認識合わせ」です。社内政治や立場による意見の違いを汲み取りながら、プロジェクトの目的を再定義し、チーム全体のベクトルを揃えるサポートをいたします。

特にWebサイトやシステムの話になると、サーバーやCMS(コンテンツ管理システム)といった専門知識が必要になり、社内の上層部へ説明するだけでもかなりの労力がかかります。せっかくご担当者さまが熱意を持って動いても、説明の難しさゆえに承認が得られず、プロジェクトが止まってしまう。そんなもったいないケースを、私は何度も見てきました。

だからこそ、私たちは専門性の翻訳係として、上層部に伝わる言葉で論点を再構成します。時には、上司の方や経営層の方々へプレゼンを行うこともあります。専門的なロジックと、プロジェクトを成功させたいという熱意をセットにして、私たちが客観的な第三者として筋を通すことが可能です。

「担当者個人の意見」ではなく、「外部知見に基づいた客観的な提案」という形に変換することで、社内の納得度は高まります。そうした「社内調整の突破口」を作ることまで含めて、私たちの役割だと思っています。

どのような粒度のご相談でも構いません。まずは皆さまの抱えている違和感・モヤモヤを、お聞かせください。

よくあるご質問

Q1. 戦略や調査から入ると、予算が高くなりそうで不安です。

A1. 安く作って成果が出ないといったリスクを防ぐための投資だと考えています。最初に目的・課題・手段をすり合わせることで無駄な改修などを防ぎ、トータルの費用対効果を最大化させます。ご予算に合わせて戦略フェーズを圧縮するといった調整も可能ですので、まずは率直にご相談ください。

Q2. 上司から「提示した方針を確実に実行するように」という強い意図があり、別の提案を納得してもらう自信がありません。

A2. 私たちを、客観的な視点を持つ外部パートナーとして、ぜひ活用してください。

社内のしがらみや立場を気にせず、プロの分析に基づいた論理的な根拠を私たちが資料として整えます。必要であれば上司の方へのプレゼンに私も同行し、第三者の立場から「なぜこの道が最適なのか」を丁寧にお伝えするサポートをさせていただきます。

Q3. まだ課題がフワッとしていますが、相談してもいいですか?

A3. むしろ、手段が固まる前のフワッとした状態が一番の相談時です!

何かがうまくいかないなという違和感さえあれば、対話を通じて一緒に課題を紐解いていけます。まずはディスカッションベースで進めさせてください。


執筆者
伊藤 麗奈(プロデューサー)
2020年 博報堂アイ・スタジオ入社。制作ディレクターとしてさまざまなクライアント案件でのコーポレートサイト運用、SNS運用などを経て、プロデューサーへとキャリアチェンジ。現在は、新規提案業務やコンサル案件にも携わり、業務領域を広げている。
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