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Webサイト制作の枠を超え、感動を設計したい!インタラクティブエンジニアとして挑む「生活者」起点の体験づくり

榎本 藍(エンジニア)
2026-05-29
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アニメや映画の舞台を訪ねる『聖地巡礼』は、今や単なる観光の枠を超え、生活者の推し活における重要なピースとなっています。しかし、デジタル技術を活用した現在の聖地巡礼施策の多くは、どこか技術の押し売りに感じられるものも少なくありません。ARを表示するために重いアプリをダウンロードさせられたり、画面越しに風景を見る時間が長くなってしまったりと、かえって没入感を削いでしまっているケースが見受けられます。

生活者が求めているのは、スマホ画面を眺めることではなく、その場所の空気感や物語に浸ること。私は、インタラクティブエンジニアとして、解決策がないか考えました。

それは、博報堂アイ・スタジオ(以降、アイスタ)が大切にしてきた「マーケットイン発想」を形にした、私独自の『聖地巡礼』ソリューションの構想です。技術を主役にするのではなく、生活者の体験を100倍楽しくするための「黒子」としてどう機能させるか。私が実現したいことについてお話しさせていただきます。

なぜ聖地巡礼なのか?〜なにげない風景を特別な場所に変える力〜

そもそも、なぜ今、私が聖地巡礼というテーマに着目したのか、その背景からお話しします。

私は前職でWebエンジニアをしていましたが、
「もっと体験設計の深い部分から関わりたい」
「クライアントの課題解決のために、Webサイトの枠を超えて幅広いリソースを活用したい」
という思いを抱き、インタラクティブエンジニアとしてアイスタに入社しました。

日々の業務でさまざまな体験設計に触れるなかで、自分の中でひとつのキーワードとして浮かんできたのがめぐる体験をデザインすることでした。スタンプラリーや御朱印巡りのように、場所から場所へと足を運ぶ行動そのものを、デジタルの力でもっと楽しくできないかと考えたのです。

何もない場所を「特別な場所」に変える魔法

私自身、もともと熱心に聖地巡礼をするタイプではありませんでした。しかし、このテーマを深堀りするなかで気づいた聖地巡礼の面白さは、誰かにとっては日常の何げない風景が、ファンにとっては唯一無二の特別な場所に変わるという点です。

私にも、社会人になってから大学時代の思い出の場所を当時の仲間と巡った経験があります。ただの道や公園が、記憶と結びつくことで輝いて見える。あの感覚こそが聖地巡礼の本質であり、その「体験の質」を向上させることに大きな価値があると感じました。

プロダクトアウトからマーケットインへの転換

当初のアイデアのきっかけは、「NFCタグとWebサイトを掛け合わせたら面白い仕組みができるのではないか」という技術的な視点でした。しかし、アイスタが大切にしているのは「技術で何ができるか」というプロダクトアウトの発想ではありません。
大事なのは、「どんな体験が生活者を笑顔にするか」というマーケットインの発想です。

・作品の世界にどっぷりと入り込めること

・仕組みを操作している感覚を忘れ、物語の一部になれること

こうした生活者視点の理想の体験を起点にすることで、単なる技術の押し売りではない、本質的な解決が見えてくると思えるようになりました。

象徴的な例が、当社のソリューションである『Thermo Selfie』と『Yell Selfie』です。

課題から逆算するソリューション開発

通常、エンジニアの仕事は○○のようなソリューションやシステムを作って欲しいという依頼から始まります。しかし、Thermo Selfie とYell Selfie はそうではありませんでした。

コロナ禍で日常的に行われていた検温体験をもっと楽しくできないか?という現場の気づきから、半ば義務化されていた検温を思い出の撮影体験へと変えるアイデアが生まれ、『Thermo Selfie』が作られました。

その開発を経て、コロナ禍でマスクの着用が当たり前になり、声を出す習慣がなくなったことを踏まえ、「大声を出すことって楽しい!」を改めて味わってもらおうと『Yell Selfie』を開発しました。

今回の『聖地巡礼』も同じ考えから生まれたアイデアです。
「ファンは聖地で何を感じたいのか?」
「今のデジタルスタンプラリーに足りない没入感とは何か?」

生活者の視点から逆算して、最適な技術を組み合わせていく。この、誰に頼まれなくても、勝手に課題を見つけて解決策を練る姿勢こそが、アイスタのエンジニアに流れるDNAだと感じています。

仕組みではなく、感情を設計する

アイスタのソリューションと『聖地巡礼』の考え方が似ているもうひとつのポイントは、技術を売るのではなく、その場での感情を最大化させることをゴールにしている点です。

・Thermo Selfie:機械的な検温を、ワクワクする「体験」に変える

・聖地巡礼:単なる訪問を、物語の一部になれる「没入体験」に変える

どちらも、エンジニアがどう実装するかを考える前に、生活者がどんな気持ちでその場所に立っているかを徹底的に想像することから始まります。クライアントの要望に応えるだけでなく、その先にいるファンの喜びを第一に考える。この一歩引いた客観的な視点で、本当に求められるソリューションを開発したいと、常に思っています。

仕組みを意識させない設計が「没入感」を最大化する

聖地巡礼という特別な体験において、一番体験のノイズになってしまうものは何でしょうか。
私は、それは現実に引き戻される瞬間だと考えています。

例えば、作品の舞台に立って感動している最中に、
「専用アプリをダウンロードしてください」「ログインが必要です」「読み込みに時間がかかります」
といったデジタルの壁が現れたらどうでしょう。
せっかくの没入感が台無しになってしまいますよね。


アプリという「壁」を取り払う

今回のこだわりは、単なるデジタル化ではなく、技術の掛け合わせによって生まれる、新しい没入体験の創出です。

これまでの聖地巡礼は、特定の場所を訪れて満足する、いわば「点」の体験になりがちでした。しかし、スマートフォンをかざすだけで瞬時にコンテンツが立ち上がるNFCタグなどの「トリガー技術」を入り口にし、そこにリッチなARや空間演出などの「表現技術」を重ねることで、その場所にしかない物語を重層的に描き出すことができます。

わざわざアプリをダウンロードしなくていいという手軽さは、実は没入感を作るための大きな一歩なのです。


スマホの画面よりもその場の空気を見てほしい

また、デジタル施策でありながら、私は「引き算の設計」を意識しています。多くのデジタルスタンプラリーやAR施策は、どうしてもスマホの画面をじっと見つめる時間が長くなりがちです。しかし、聖地巡礼の主役はあくまでその場所の風景や空気感であるはず。

エンジニアとして高技術な機能を盛り込むことよりも
「いかに技術の存在を消し、物語の一部になってもらうか」
この仕組みを意識させないデザインこそが、聖地巡礼を100倍楽しくするためのポイントだと感じています。


企業とファンの関係を一過性で終わらせないために

ここまで「体験の質」についてお話ししてきましたが、このソリューションは、コンテンツを提供するクライアントにとっても大きなメリットがあります。

それは、ファンとの関係をその場限りで終わらせず、中長期的なエンゲージメントへと昇華させられる点にあります。

聖地巡礼にしかない熱量の高いエンゲージメント

一般的な広告やプロモーションと、『聖地巡礼』の決定的な違いは、ファンの熱量自発性です。

ファンは誰に強制されるわけでもなく、自らの意思で、時間とコストをかけてその場所に足を運びます。この自ら動くというプロセスがあるからこそ、その場所で得たポジティブな体験は、作品やブランドに対する深い信頼と愛着に直結します。

私たちが提供するのは、その熱量に寄り添い、「わざわざ来てよかった」という実感を一生モノの記憶に変えるお手伝いです。ただのスタンプラリーで終わるのではなく、物語の世界に深く没入できたという手応えこそが、ブランドへの強い絆を生むのです。

データの先にいるファンの姿を捉える

また、WebサイトとNFCを活用したデジタル施策だからこそ、これまで可視化しにくかったファンの行動をデータとして捉えることも可能です。

  • どのスポットが一番喜ばれたのか

  • どのような順番で街を巡り、楽しんでいるのか

こうしたデータを分析することで、一過性のイベントで終わらせることなく、次なる施策やコンテンツ制作へのヒントを得ることができます。

ただし、ここで大切なのは、データを単なる数字として見るのではなく、その先にいる「一人ひとりのファンの喜び」を想像することです。ファンの想いを深く理解し、それに応える。この循環を作ることこそが、聖地巡礼という特別な文化を支えるソリューションの役割だと考えています。

このような考えを大事にしながら、今後IP保有企業や地方自治体が抱える課題に対して、継続的な価値を提供していきたいです。

クリエイティブ×テクノロジー視点から考えた価値向上の未来

私が『聖地巡礼』で実現したいのは、単なるデジタルスタンプラリーの代替ではありません。それは、テクノロジーを体験の中に溶け込ませることで、企業と生活者の接点をより豊かにデザインしていく未来です。

Webサイト制作の枠を超え、あらゆる顧客接点を設計する

アイスタはプロダクション(Webサイト制作会社)と認識されている方も多いですが、創業以来、表現力と技術力を武器に、博報堂グループ由来の「生活者発想」を掛け合わせ、さまざまな課題を解決してきました。今後ますますWebサイトやアプリといった枠にとらわれず、最新テクノロジーを軸に生活者の行動設計から実装までを一貫して担うことが重要になります。

  • 未来の利益を生み出す:
    インタラクティブエンジニアとして、Webサイト領域に閉じない新しい顧客接点を創出します。

  • イベントやリアル体験への拡張:
    デジタル上の施策を、物理的なイベントや地域での実体験へとシームレスにつなげていきます。

これは、単に新しい技術を使うことではなく、生活者の笑顔企業の本質的な課題解決を両立させるための挑戦です。

0からアイデアを形にする伴走者として

アイスタのソリューション開発における面白さは、何もない状態から課題を見つけ出し、アイデアを形にしていく過程にあります。クライアントがいない段階から世の中の違和感を起点に開発された『Thermo Selfie』 や『Yell Selfie』がその好例です 。

私たちは、単なる受託形式の制作会社ではありません。クライアントの持つ価値をどう最大化し、その先の生活者にどんな+αの喜びを届けられるか。その問いに対して、エンジニアが企画の段階から伴走し、幅広いリソースを活用して答えを出していきます。

技術はあくまで手段です。その裏側にあるロジックと体験設計を磨き続けることで、私たちはこれからも社会に新しい価値を提供し続けていきたいと考えています。

これからのアイスタで実現したいこと

「聖地巡礼を100倍楽しくしたい」という私の挑戦は、まだ始まったばかりです。インタラクティブエンジニアとして、私はアイスタという場所で、もっと多くのワクワクする瞬間を形にしていきたいと考えています。

デジタルとリアルの境界線を物語で埋める

私がこれから実現したいのは、テクノロジーの存在を消し、生活者が知らず知らずのうちに物語の世界へ引き込まれるような体験づくりです。

最新技術が使われているから凄いのではなく、いつの間にか心が動かされていた。実はその裏側にアイスタの技術があったという状態が理想です。スマホをかざすと、その場所を歩いているように感じられる。そんな何気ない動作が、日常を非日常へと切り替える最高のきっかけになるような体験を、数多く生み出していきたいと考えています。

企画の0段階から伴走するパートナーへ

また、単に依頼されたものを作るだけのエンジニアで終わるつもりはありません。

  • 生活者は今、何を必要としているのか?

  • 企業の持つ魅力は、どうすればもっと深くファンに届くのか?

そんな問いをクライアントの皆さまと共有し、企画の0段階から伴走できるパートナーを目指します。前職のWebエンジニアとしての知見と、アイスタで培っている体験設計のロジック。その両方を武器に、Webサイトという枠を超えて、イベント会場や街中など、あらゆる場所を感動の舞台に変えていきたいです。

技術は日々進化しますが、人の心が動く本質は変わりません。これからも「マーケットイン」の視点を忘れず、一人ひとりの一生モノの記憶に残るような体験を、アイスタの仲間やクライアントの皆さまと共に創り上げていくことが、私のこれからの目標です。

執筆者
榎本 藍(エンジニア)
2025年博報堂アイ・スタジオ入社。Webサイト、AR、展示インスタレーションなど、幅広い領域のテクニカル実装を担当。現在は、企画立案や体験設計の上流工程からエンジニアリングまでを一貫して手がけ、技術と発想の両面から新しい体験価値の創出に挑戦している。
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