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AI-SEO時代の新常識!BERT・MUMからAI Overviewまで

藤井 裕子(コーポレートプラナー)
2025-07-16
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Googleの検索結果の最上部にAIによる要約が表示されるなど、検索は大きな変革の時代を迎えています。Webサイトの運営やSEOに携わる方にとって、このAIの進化が自社サイトの検索順位にどう影響するのかは、大きな関心事ではないでしょうか。

2024年5月に米国で正式リリースされた「AI Overview」は、日本でも順次導入が進んでおり、ユーザーが情報を得るための新たな入り口として定着しつつあります。

本記事では、その変化の裏側にあるGoogleのAI技術「BERT(バート)」や「MUM(マム)」の役割を解き明かし、比較的新しい機能である「AI Overview」がSEOに与える影響、そしてこれからのAI-SEO時代にWeb担当者が取るべき具体的な対策まで、分かりやすく徹底解説します。この記事を読めば、AI時代のSEOへの漠然とした不安が、明日からの明確なアクションに変わるはずです。

1. なぜ今、AI-SEOが重要なのか?Google検索の大きな変化

かつてSEOといえば、特定のキーワードをページ内に多く含めたり、被リンクを大量に集めたりといったテクニックが重視された時代もありました。しかし、そのような時代は徐々に収束に向かっています。

現在のGoogle検索の動向を見ていると「ユーザーが問いかける疑問や悩みを、最も的確かつスピーディに解決する」という目的へ、より強く向かっていると感じます。検索エンジンは、ユーザーがどのような意図でキーワードを打ち込んだのか、その背景までを深く分析し、最も満足度の高い答えを提示しようとデータを選別しています。

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この「ユーザーの検索意図を深く理解する」という目的を達成するために導入されたのが、BERTやMUMといった高度な自然言語処理AIです。これからのSEOAI-SEO)は、このAIの進化を理解することが成功の鍵を握ります。

2. 文脈を読むAI「BERT」とは?検索順位への影響

2019年にGoogleが導入したBERTは、検索の歴史における大きな転換点となりました。

BERTの最大の特徴は、単語単体ではなく、文章全体の「文脈」を理解できる点にあります。例えば、ユーザーが「Java」と検索した際に、それが「プログラミング言語」のことなのか、「コーヒー豆の産地であるジャワ島」のことなのかを、単独のキーワードだけでは判断できません。BERTの登場により、AIは「Javaプログラミング入門」や「Javaコーヒー 特徴」といった前後の単語やそれまでの検索履歴といった文脈から、ユーザーの意図を正確に判断できるようになったのです。

■ BERTがSEOにもたらした影響
この進化により、Googleはユーザーの検索クエリ(検索時に入力する言葉)に隠された、より細かなニュアンスを汲み取れるようになりました。
その結果、SEOにおいては、単にキーワードを並べるのではなく、「ユーザーが本当に知りたいことは何か?」という検索意図を深く理解し、それに対する包括的な答えをコンテンツとして提供することの重要性が飛躍的に高まりました。検索エンジンが選ぶWebサイトの順位は、ユーザーの検索意図にどれだけ応えられているかで決まるようになっているのです。

このようにBERTは、複数の単語を組み合わせたキーワード検索の精度を大きく向上させました。しかしAIの進化により、検索はさらに「対話的」で「複雑な問いに答える」ステージへと向かいます。
それを実現するのが、次にご紹介するMUMです。

3. 複雑な問いに応える超高性能AI「MUM」とは?

BERTの登場後、Googleはさらに強力なAIであるMUM(Multitask Unified Model)を2021年に発表しました。MUMは、BERTが持つ「文脈理解能力」をベースに、より人間のように複雑な情報を処理するための3つの強力な特徴を持っています。

進化①:マルチモーダル(テキストと画像の壁を超える)

「マルチモーダル」とは、テキスト(文字)だけでなく、画像、音声、動画といった異なる種類の情報を同時に理解できる能力です。
例えば、あなたが持っている登山靴の写真を撮り、Googleレンズで「この靴で富士山に登れる?」と検索したとします。MUMは、画像から靴の種類や状態を理解し、テキストから「富士山に登る」という目的を理解します。そして、これら2つの情報を統合し、「その靴は富士登山の特定のシーズンに適しています」といった、より深いレベルの回答を生成できるのです。

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テレビやSNSでインフルエンサーが使用しているアイテムや着用している服装など、ブランド名やテキストでの表現の仕方に困っても、今では画像や映像から数ステップで調べることができます。

進化②:多言語性(75の言語の壁を超える)

MUMは、75以上の言語で同時にトレーニングされており、言語の壁を越えて情報を理解し、知識を伝達できます。
これにより、ユーザーは自分が使う言語に限定されない、幅広い言語で書かれたサイトが発信する検索エンジンが”良質”と判断した情報にアクセスできるようになります。

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この機能は、ユーザーが「海外旅行者からの口コミ」「地元の住民によるレビュー」のように、より具体的なプロンプトで検索するようになることを意味します。
同時に、Webサイト運営者にとっては、情報源の信頼性、つまり「誰が書いた情報か」というE-E-A-Tの重要性がさらに高まります。AIが著者情報を精査しやすいため、信頼できると判断されたコンテンツが言語の壁を越えて引用されやすくなるのです。

進化③:マルチタスク(複雑な意図を一度に理解する)

MUMは、その名のとおり「マルチタスク(複数のタスクを同時にこなす)」に長けています。これにより、複数のステップに分かれていた複雑な検索を、一度で解決できる可能性があります。
特に日本語は、文脈に依存する曖昧な表現が多い言語です。MUMはこうした言語的な特徴を理解するだけでなく、過去の検索履歴や対話の流れも踏まえてユーザーの意図を推測します。これにより、単に一つの答えを提示するだけでなく、追加の質問を投げかけたり、解釈を確認したりすることで、ユーザーが本当に求めている答えへと導いていく、より対話的な検索体験が可能になります。

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以下の図は、MUMの3つの能力が統合され、AI Overviewの回答が生成される仕組みを示しています。

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4. SEOの未来「AI Overview」と、今すぐやるべき対策

「AI Overview」は、AIがWeb上の情報を統合して検索結果の最上部に要約を提示する機能であり、Web担当者にとっては大きな意味を持ちます。AIの要約だけでユーザーが満足しWebサイトへのトラフィックが減少するゼロクリックリサーチの「脅威」の一方で、参照元として表示されれば権威性の向上や新たなアクセス増につながる「機会」ともなり得ます。この機会を最大限に活かすためには、AI Overviewに引用されることが重要であり、その核となるのがE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の高いコンテンツ作りです。

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これらのE-E-A-Tを高めるためには、具体的なAI-SEO対策の実践が不可欠になります。まず、キーワードの裏にある「なぜ?」を想像してユーザーの検索意図を深く掘り下げ、関連する疑問にも応える網羅的なコンテンツを目指します。同時に、著者情報や監修者を明記して「誰が書いたか」を明確にし、客観的な信頼性を高めることも重要です。
さらに、構造化データでAIの理解を助けつつも、最も大切なのは、AIを意識しすぎず、あくまで「人」に語りかけるように分かりやすい文章を心がけること。ユーザーにとって真に価値あるコンテンツは、結果的にAIからも高く評価されます。
一方で、AIの性能向上にともない、非構造化データ(動画、画像、テキストデータ)の存在も重要視されてきています。コラム内の画像も十分に精査される対象となってきています。

最後に

本記事では、GoogleのAIであるBERTとMUMの役割から、AI Overview、そしてこれからのAI-SEO対策までを解説しました。

  • BERT:「文脈」の理解による、検索意図の重要性の向上

  • MUM:「複雑な問い」への対応と、AI Overviewの土台形成

  • AI Overview:脅威と機会の両側面、そして対策の鍵となる「E-E-A-T」

SEOについて、既存の知識も当然知った上で、日々新しい機能と仕様に準拠した実装を自分たちで行う活動を続けています。
より良い結果と新しい出会いのために、自分たちを知ってもらうために。

公開されている記事から知る、ここ数年のBERTの利用方法は今では当たり前の機能ながら、当時は最先端すぎて、いわゆる生活者には意図が届きにくいものが多かったと思います。
検索技術がどれだけ進化しても、SEOの本質は「ユーザーのための価値あるコンテンツ提供」にあります。各種テクニックも、ユーザーと誠実に向き合う土台の上でこそ効果を発揮します。変化の時代を勝ち抜く最も確実な近道です。

参考記事

執筆者
藤井 裕子(コーポレートプラナー)
2011年中途入社 iOS/Android アプリ開発から始めました。
スクリプトと仕組みで効率化を推進して、情シス、事務局と所属を巡回しています。
受賞歴:中国広告長城賞- インタラクティブ・クリエイティブアワード金賞 アプリ制作(2013年)、Spikes Asia Gold Spike (2016年)
保有資格:情報セキュリティマネジメント取得(2024年)

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