可能性を広げる、広いコミュニケーション設計を手がけて

普段、どのような仕事をしていますか?
「統合コミュニケーションのプランナーとして、TVCMなどのマス表現から、イベント・OOH、Web動画、デジタルなどのアクティベーション施策、メディア選びや、PRといった。幅広い領域を統合した、コミュニケーションの全体設計の企画をしています。コピーを書くこともあったり、UX/UIデザイン・データマーケティングといった、デジタル領域をやることもあり、手を動かす幅もさまざまです。」
大型プロモーションの案件を複数手がけていると伺いました。具体的にはどのような領域を?
「最近では、新しいコスメブランドの立ち上げコミュニケーションや売り方改革など、事業面にも踏み込み、ビジネス設計など…企画の幅は広い方だと思います。ちょうど昨日はミュージックビデオの撮影をしてきたところで。他に新しいコスメブランドのリブランディングやイベント企画、声優さんとのアニメ制作やソーシャルキャンペーンなどを担当しています。」
ご自身の強みは何だと思いますか?
「自分の中では、一発でわかりやすい提案を組むこと・資料にすることは基本事項にしています。周りからは、デジタルが強いとされていると思いますが…なんでしょうね。マスもデジタルの企画も両方できるスキルセットが今の時代の波には合っていて、重宝されているのかなとは思います。もちろん、まだまだなんですけどね。
あとは、個人的に企画提案の精度を大切にしています。コンセプトや発想はよさそうだけど...実際は?というレベルに留まらないように「思想が的を射てるか」「ちゃんとアクティベートするか」「CX(顧客体験)やUX(ユーザーエクスペリエンス)はどうなるか」まで気を遣って考えているつもりです。 だから、お仕事をいただくときにそういうところを評価して依頼くださると嬉しいです。」
入社してすぐに、戦略設計を担当していたのですか?
「入社してすぐの頃に、ストプラ兼UXデザイナーの先輩、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)や分析などのデジタルマーケティングに強い先輩、作るもの全部が綺麗すぎるクリエイティブディレクターの先輩に出会って。その先輩たちを見て影響を受けました。
新卒なりに…打合せやプレゼンの場で、こういう方たちが提案の中心を支えているんだ!と感じて。先輩のように、クリエイティブを引っ張る領域をやりたいと思いました。1年目の後半から徐々にプランニングをやり始めて…4年目までデジタルクリエイティブに浸かって、そこから広がっている感じです。」
徐々にクリエイティブに関わることになったんですね。
「はい。オリエンをいただいたら、提案の戦略を考える。企画のコアアイデアも考えて、どう展開するかのメディアプランニングも。その過程ではステートメントも書き、動画クリエイティブのコンテも書き、ニュースにするためのPR戦略も組む。みたいな。全部僕がやることもあれば、他のクリエイティブメンバーと手分けすることもあります。」
特に印象的だったことは?
「アーティストさんと一緒に音楽をつくって、それを世の中に広げていくっていう仕事がとても楽しかったですね。クリエイティブディレクターをやらせていただいて、後輩3人に助けてもらいながら、みんなで乗り切りました。」
「自分だったらやる?」を自問して、本来の価値を見出したい

アイデアを考える上で、気をつけていることはありますか?
「気を付けているというか…目指していることはいくつかあります。
ベースは「誰も傷つかない」ことで。例えばセンシティブなテーマの啓蒙施策もあるのですが【このメッセージを受けたら多くの人は嬉しいだろうけど、一部傷ついたり嫌な想いをする人はいないか?】とか。子育てについてのPRでは、【悩みはご家庭によってもそれぞれですし、見た人が元気になって欲しい】と取り組みました。誰かを否定したり・揶揄することがないように、気を付けたつもりです。
あとは“ワークするか”でしょうか。時々、提案書やプレゼンで見るとすごくよく見える戦略や企画が、実際はあまりハネない。ってことがあって。それはいろんな考慮が欠けていたり、そもそもインサイトを掴み損ねていたりしていて。プレゼンや企画出しの前には「自分だったらやる?」と問い直すようにしています。そうすると3割くらいは「うん...これは...やらないよな...」となって自分が苦しむことになるんですが…そういうことを自問自答することが大事かなと考えています。」
最近、ハッとしたことや、自分の中での発見はありましたか?
「先輩クリエイティブディレクターの方が、「これはただのマーケティングコミュニケーションの仕事じゃないよ。売り方や流通も、顧客との繋がり方も、ブランドの選ばれ方も変えるんだ。手先のコミュニケーションだけじゃクライアントの売上目標を達成できるわけがないよね。」と話してくれて。自分にとっては金言でした。
本当に意味のある仕事は、アウトプットするものだけに限らないというか。企業やブランドが、僕らの仕事によって良い方向に向くか、を大切にしないといけないことに気付かされて。僕らの価値は広告やクリエイティブをつくるだけじゃないってことが、今、僕の中で大事にしている考え方になっています。
他にも、クライアントから意見を引き出す考え方・話し方を見ても勉強になったり、CMプランナーの同期からも、社内打合せやクライアントから、色々とフィードバックがある中で「この企画の肝はくだらないことを真剣に会話するバカみたいなやり取りなんだ。絶対崩さない。」と、企画の肝を貫く姿勢とか。もう、数えきれないくらいたくさんありますね。」
今のデジタルマーケットや市場をどのように見ていますか?
「そうですね、安価で早くクリエイティブを作る会社やサービスもたくさん出てきているので…クライアント内部で色んなクリエイティブを内製することだってできますよね。広告やクリエイティブをつくるだけ。メディアを組むだけの仕事は減ってきていると思います。
企業やブランドの為に、コミュニケーションだけじゃなく、売り方も全体も。あらゆる面で変えていく必要がある。言葉で言うとすごい抽象的ですし難易度も高いですが、実感としてもそういう仕事が増えていると感じます。」
最近、うれしかった仕事はどんなことですか?
「やっぱり褒められることですかね。局や会社で褒められるというのもそうですし、生活者から良い反応がいただけるのが何よりです。SNS上で「面白すぎw」「笑ったw」「神企画!」という投稿をしてもらえる仕事があって。そういった反応を見て、うれしくて。先輩と喜んでました。」
これからのアイスタに期待することは?
「アイスタのデザイン力は、今も昔も高いものがあるなとずっと思っています。パターンを検証した上でこれがいい!とか、オリエンはこうだったけど、この方がいいと思う!とか。デザイン提案力も武器かなと。このことがもっと世間に広まるためにも、僕のようなアクティベーションプラナーが、これから頑張らないとと思います。」
音楽が好き、挑戦したい、勉強したい、が止まらない
今後、挑戦したいことがあれば教えてください。
「ブランドを守る、今までの世界観に沿った提案をする、という仕事よりも、ブランド自身の変革を行ったり、時代の意識に合わせ成長する、そんな仕事にどんどん挑戦していきたいですね。それを博報堂ではブランド・トランスフォーメーション(BX)と呼んでいて。そのような案件の実績をもっと積みたいです。
マーケティングのコミュニケーションだけじゃないって仕事ですね。ブランドのポジショニングがこう変わった!とか、新しい顧客層が増えた!とか。 そのためのクリエイティブや企画をつくりたいです。個人的な希望としては・・・音楽案件をもっと増やしていきたいです。」
小林さんにとって、楽しい瞬間はいつですか?
「うーん今は仕事...ですかね...真面目ぶってるわけでもなくて。ローンチした時は達成感ありますし、結果が付いてくるともっと嬉しいですし。もっと、生活者からもクライアントからも社内からも求められるようになりたい。いい仕事・クリエイティブを世に出したい。そのための勉強や作業も苦しくはなくて。まあ、でも一番楽しいのは仕事の打ち上げかな。苦楽を一緒にしたメンバーと飲むのが好きですね。」
今はハードに働くことにハマっているようですね。プライベートはどのように過ごしていますか?

「友だちや先輩後輩と飲みに行ったり、遊んだりする以外は、ほぼ仕事につながることしかしてないかも........勉強したりとか... 毎日まだまだだなと思わされるので。最近は音楽ライブによく行ってます。1ヶ月に2回くらい行ってるかも。自分で音楽を作ったりもするようになりました。いや、これも仕事関係か...趣味と仕事の差がなくなりつつあります。」

取材・執筆:田中 朝子
撮影:足守 新吾