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デジタルファッション、メタバース、XR領域。これからのデザインを牽引する5年目デザイナーのビジョン

蔵城 百香(デザイナー)
2023-04-12
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《 ピープル 》は 幅広い業務で活躍するメンバーに、仕事の向き合い方からプライベートまでじっくり話を聞くコーナーです。

これまでにない表現の開発に、果敢に立ち向かう

今、どのような仕事を担当していますか?

「案件によって、関わり方はさまざまです。最近だと、博報堂プロダクツ フォトクリエイティブ事業本部ビビビチーム”サイトではデザイン・アートディレクション、大手監査法人の採用サイトでは採用ブランディングムービーの撮影・編集ディレクション、コンセプトビジュアルのデザインを担当しました。」

博報堂XRチームと連携して、新規領域の表現を広く担当していると伺いました。

「はい、XR領域の案件を担当することも増えてきてます。3Dアバターを活用した試着サービス“じぶんランウェイ”に1年半ほど関わっていて、UX(ユーザーエクスペリエンス)/ UI(ユーザーインターフェイス)設計と演出周りをメインに担当しています。今年度からは手も動かしながらプランナーとしても参加していたりですね。

博報堂生活者インターフェース市場フォーラム”でも、バーチャル渋谷を舞台にした演出や3Dアバター体験のUX設計を担当させていただきました。渋谷のスクランブル交差点に来場者のアバターが登場し、自由に歩き回りながらアバター同士が自由にコミュニケーションをとる演出や、エンディングではアバター100人がダンスする映像を作成しました。他にも、現在進行形で新しいメタバース空間の開発を行っているところです。」

どうして前例のない案件や、XR関連のビジュアル演出を担当することに?

「入社当初から、ウェブサイト以外も担当したいと周囲に伝えていたのもあったからか、映像制作、AR、デジタルイベント施策など幅広く案件など関わらせていただくことが多かったのですが、元々はメタバースには知見がまったくありませんでした。ただ、新しい領域を知ることは好きなのでまずやってみよう!となり、いろいろ勉強していくうちにXR領域に詳しくなり、楽しくなってきた....という感じです。

自分の3Dアバターを生成し、バーチャル空間で試着ができる“じぶんランウェイ”って、とっても新しい体験なんです。試着してみたいファッションコーディネートを選択すると、ランウェイ形式で複数の自分のスタイルフィッティングを360度視点で客観的に見ることができる…参考になる前例もないし、どういうふうに作っていいか誰も分からない取り組みで。

だから、とにかくたくさんのデモやモックアップを作って検証しました。作ってから実際に手で触ってみると気づかなかった新しい発見があって、またそこから作り直して、触ってみて、確かめる。最初から正解が分からないものづくりに苦労しましたが、その分新しいものを生み出している楽しさはありました。そもそも関わる人全員にとって初めての体験だから、上も下もないプロジェクトメンバーで横並びに仕事ができたのもいい案件に繋がったんじゃないかと思っています。」

少しずつ変化した、仕事への取り組み方

どのようなことに気をつけて、仕事に取り組んでいますか?

「肩書きに縛られないところかな。デザインもやるし、企画もやる。映像もやるし、メタバースもつくるっていう。自分の人格を自分で決めすぎず、なんでもやってみること。

正論よりも、人の気持ちや共感を大事にしたいです。プロジェクトを進めていく中でスケジュールや予算など、制約が逼迫してくると、思いやりが減ってついつい視野が狭くなりがちです。そんな中でもクライアントや担当者がこうしたいという思いを汲み取って、できる限り実現できるように意識しています。

入社してすぐのころは自分の担当はここ!これ以上できません!バンッ!って。自分の仕事に線引きしたり、人と距離を取ったりしていましたが…2年くらい経った頃、先輩のアートディレクターに『そういう伝え方は良くないよ』と注意されまして。時間が経つにつれて、本当にそうだったと気付かされました。私にも後輩ができて、プロジェクトメンバーのエンジニアやデザイナーたちに、気持ちよく仕事をしてもらいたくて。そういう考えになりました。」

気持ちの変化があったんですね。昔からアートディレクター志望でしたか?

「はい。割と…子どものころから。小学生のころから意識していました。母がファッション系で、テキスタイル関係の仕事をしていて。最初はファッション分野のデザイナーになりたかったです。美大に進学して、いろんなことに触れる中でデジタル分野の魅力にも気付いていきました。」

今取り組んでいるデジタルファッションのプロジェクトは、ご家族から見ても面白い取り組みかもしれませんね。

「これまでは、ビジネスパートナーや関係者しか体験できなかったプロダクトなのですが、これからショッピングモールに一般の方が体験できるデモンステレーションの機会があるんです。今度母にも見てもらいたくて、招待しています。」

プライベートの感覚と仕事はつながっていますか?

「私はプライベートと仕事はできるだけつなげたい、公私混合したいタイプ。なるべく、部活みたいに、趣味みたいに仕事したいです。自分と仕事の接点が見つかった時、意外なところがつながってきたことが嬉しいです。」

具体的にどんなことがありましたか?

「最近、好きなイラストレーターさんと仕事ができたことがありました。あとは、趣味のダンスの知識が、3Dアバターのダンスミュージックビデオを作るお仕事で活きたり、オーケストラの撮影のときにも昔習っていた楽器の知識が活きたり。そういう機会が意外とあって、そんなセレンディピティが起こるたびに、よっしゃ!となります。」

どのような経緯で入社しましたか?

「美大生のころ、アイスタのクリエイティブディレクターの方が会社説明会で学校に来て、私の作品を見てもらったとき、褒めてもらえてすごく嬉しかったんです。“うちっぽいね”と言ってもらえて。当時は社会人に褒められたってことだけでも、嬉しいんですけどそれがきっかけになったのは確かです。

それまでは別の会社のことを調べてたんですけど、当時アイスタが作っていた大型の屋外広告が、新宿駅メトロプロムナードに掲出されていた時期で。静電気で紙が動くギミックを見て感動して、そのときは就活で結構辛い時期だったんですが、その広告を見て涙がでていました。アナログな質感なものにデジタルが加わることで生まれる、気持ち良い違和感にグッときて。そこからだんだん興味を持って受けて…それからあっという間に、5年経っちゃいました。」

今こそ思うチームの課題、そして将来への展望

これからのアイスタに期待することは?

「そうですね…私は案件次第でアートディレクターとして入ることも、プランナーとして入ることもありますが、本当は全員プランニング意識を持ってもいいんじゃないか、と思ったりしています。

今はいい意味でも悪い意味でも分業化が進んでいます。担当領域が分断されていることを改善できたらなと。デザインについて、誰でも感想やフィードバックをしてもいいし、話し合いたいというか。アイデアが良くなるために企画をエンジニアが引っ張ってもいい。デザイナーもエンジニアも皆さんホント、いい人が多くて。人に恵まれているなーと思うからこそ、取り組んでみたい。

あとは、クリエイターにとっては、コンプライアンスの問題で、なかなか自分の仕事について周りの人に伝えられない。アワードを受賞するとか、このような取材の機会があると伝えられるんですけど、何かいい伝え方がないかなぁと考え中で。なんとかしたいです。」

オフの日、リラックスできる時間は何をしていますか?

「銭湯が好きで癒されていますよ。おすすめ銭湯を探せるアプリのスタンプを集めたり。会社帰りに寄ることもあります。フードエッセイストの方のPodcastに出てきたお店に聖地巡礼したり。最近友達に“フードペアリング”の考え方を教えてもらって、ワインにもハマりつつあります。味わいや香りの相性のいい、食材同士の組み合わせの世界を知って…けっこう楽しんでいます。」

楽しいことをたくさん知っているんですね。今後挑戦したいことは?

「大きくは2つあります。XR表現に詳しくなったこともあり、これからも新規領域に詳しくなっていきたい。その領域に強いアートディレクターになりたいです。もう1つは、ウェブ専門ではなく、デジタル以外も含む全体をディレクションできるようになりたい。いろんな案件をやっている理由はここにある気がして。

ブランディングなのか、ゼロベースからサービスを立ち上げて、全体のデザインやUX/UIまで、トータルで構成するような。先輩の竜沢さんや足守さんは、既にそのような仕事をされていますけど、そのようなプロジェクトをトータルで手掛けられるようになりたいです。」


取材・執筆:田中 朝子
撮影:足守 新吾

出演者
蔵城 百香(デザイナー)
2018年新卒入社後、オウンドメディア構築・デジタル施策などのデザイン・アートディレクションを担当。近年はXR領域でのUXUI体験設計から業務に従事。受賞歴にAwwwards、w3 Awardsなど。おいしいごはんと銭湯、Podcastが好き。

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